表紙の小さな物語

2017.11.13

ウラニワシェルターとジナンボーくん。

2017年12月号(158号)表紙

上山の楢下宿から国道13号線に至るまでの羽州街道沿いは、古くから果樹農園が連なる並ぶ土地。名産品となっている柿の収穫や、蔵王吹き降ろしの寒風でつくる干し柿(つるし柿)が、そろそろはじまるころだった。

街道沿いの相生地区にある一軒、須田さんのお宅へ。裏庭には果樹が広がり、近隣との境界線がわからないほど長閑な風景だ。だいぶ肌寒さを感じる時季にもかかわらず、タンクトップ姿と半ズボンで、勢いよく庭を駆けまわるのは、須田家の次男坊「正義」くん。スチロール材を器用に削って手作りしたというボールとバットでバッティングをしたり、吊るされたハシゴで木登りしたり。その横で焚き火をしながらみつめている、オイルドジャケットを着込んだお父さんとのギャップ…。ワイルドだ。

 

驚いたのはお父さんを中心に家族で建てたという「ウラニワシェルター」と呼んでいる木小屋。「シェルター」のなかには、蒔ストーブが設置され、ランプ・テーブル・椅子、ワインやジュースやコーヒーまである。片隅に置かれた小さなCDプレーヤーから流れるギターソロのゆるやかな音が響き、まさに秘密基地というに相応しい独特の心地良さ。この手作り空間に親子が集って、お菓子を食べたり、読書をしたり音楽を聴きながら、気ままなに過ごす時間を大切にしているという。

また、近所の友だちが遊びにきては、垣根のない町内全部をフィールドにして鬼ごっこをしたり、時季にかかわらずバーベキューやキャンプを楽しんでいたりと、その奔放さが羨ましくもあった。

 

陽も暮れかかり、ご家族と一緒に「シェルター」のなかで、手挽き豆で淹れたコーヒーをいただいた。蒔のはぜる音をききながら飲んだ温かい珈琲の味が、忘れられない。「冬が降ってからも開店しますから、また来てくださいね、カフェ・ド・ウラニワ」。嬉しいな。あたりが冬景色にそまったら、また訪れてみたい。

 

スチロール材のバットでバッティング。すごいミート率。

 

焚き火をしながら見守るお父さんと「ジナンボー」くん。

 

おやつを口に頬張りながら、ひょいとハシゴを登る。

 

お父さんもここに座りなよ。

 

チョコレートを直火にくぐしたら美味しくなるかな、実験、実験。

 

飼い猫のトムは綺麗な毛なみ。そっと足元にすり寄ってきてくれた。

 

トムもこっち来なよ!トムは別の何かが気になる様子。

 

2017年12月号(158号)やまがたワイン考〈後編〉
表紙モデル:須田正義くん
山形県上山市相生

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