だれかの散文

2017.7.3

第15回:ただ「これ、美味しいっす!」と言えたなら


もうすっかり随分な大人になったというのに、私はまだまだ子供味大好き舌。カールが西日本でしか買えなくなり、しかもカレー味は永遠にさよならとのニュースを聞いた時は心から悲しくなったし(山形にもカールを作る工場があったと知り、これまでの感謝を心から)スパゲティならやっぱり一番はケチャップ味のナポリタン推しだし、その昔『元気が出るテレビ!』の収録終わりで連れて行ってもらったお寿司屋さんで、マグロの握りを食べようとお醤油を付けたら「醤油付けすぎだ!魚に謝れ!」と松方弘樹さんから叱られたし(トロの油が得意じゃないから醤油でごまかしたのがバレた。さすがな松方さんでした)。

 

旅番組ではその土地の名物を、スタジオでは「試食をどうぞー!」と一見「テレビの人はいいよねー、なかなか買えないアレを並ばずに食べれてさあ」と文句を言われることがありますが、いやいやいや。いや、イエス。

ありがたくて嬉しいことの方が多いです、やっぱり。有名シェフが珍しいスパイスを使って貴重な部位を熟成させ丁寧に焼き上げた一品なんて絶対自分じゃ辿り付かないゴールです。周りにかかっているソースなんて今後二度とお目にかかる機会はないだろうと思います。一度崩してしまったら再現不可、みんなにがっかりされないよう脇を締めて姿勢良くナイフを持ちながら、見た目の感想を丁寧に述べつつ、湯気とともに立ち上る香りを鼻の穴フル稼働で感じ、そうしてようやく口の中へ。

 

「おいし〜!!!!」だけで許されたなら。「めっちゃうまいじゃないっすかー、シェフ!」で伝わるなら。「おかわりください!100個食べたい!」でカメラ傍にいるディレクターからオッケイ!と威勢のいいカットがかかるなら。

絶対にない!ありえない!怒られる!「他のコメントなんかないっすか?」って蛭子能収さんは言われてた(氏はイカの天ぷら食べて「このエビうまい」と言ってしまう人なので確かに他のコメントは必要だし、「料理人に謝りなよ」と私も笑った)

いかにそのお料理の味を観てくれている方に分かりやすく伝えるか、限られた時間内でまとめるか、そんなの良く分かってます、そうしなきゃいけないのが仕事だって分かってます。

でもさ、でもさ、口に入れた瞬間に「このとろける柔らかさの中にトマト本来の旨さと酸味がバランスよく広がってそれはまるで宇宙を旅しているような味ですねー!」って本気?どんな舌を持っていたらそんな未来なコメントが生まれる?

 

先日、東海エリアで放送している生番組で「紀子さん、山形の大使だし」と、老舗デパートが開催している山形物産展の生中継に行くことになりました。

私にとって山形の物産展はどこかのテーマパーク以上に夢の国。佐藤錦にふうき豆に丹下こんにゃくに高畠ワインなど会いたかったラインナップがズラリ勢ぞろい。

その中でこの日は新杵屋さんの“牛肉ど真ん中”弁当をご紹介!

「駅弁でも常に人気のお弁当なんですよ!」とか「米沢駅前にお店があるんですよ!」とか知っている情報などを織り交ぜつつ、いざ実食。

パクリ。

 

「お肉が甘辛くて、ホントご飯に合う!」

 

自分で自分のコメントにびっくりしました。

もう食レポなんかしたくないと思いました。

待たれてるコメントはそんなじゃないはずなのに、何私一体!

普通のコメントって職務怠慢!

 

にしても米沢はやっぱりお美味しいお店が多くて

米沢駅前にある焼肉「みよし」さんにどうにかして寄れないかを探る私。

当然「米沢牛の持つ柔らかさと肉の甘さが相まってたまらなく美味しい!」お肉が心踊るほど並ぶ素敵店なんだけど、そのお肉を使って作られるカレーがそのまた上を行く美味しさで、ああ、食べたい。

 

「また絶対来ます!!」

このコメントだけで本当に美味しいお店だと気づいてくれる視聴者の方がいたら助かるのにな〜。

 

子供味を楽しむ舌でありながら、コメントは大人っぽく・・

頑張ります・・・。


加藤 紀子

プロフィール:

加藤紀子

92年に歌手デビュー。歌番組やバラエティー番組、ラジオなど幅広いメディアで大活躍するさなか、2000年より芸能界を休業し、パリへ語学留学。2002年に帰国し、芸能活動を再開。現在は、東海テレビ「スイッチ!」、NHK-FM「トーキング ウィズ 松尾堂」にレギュラー出演など幅広く活躍中。

加藤紀子ブログ「加藤によだれ」
http://ameblo.jp/katonoriko/

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