特集の傍流

2017.5.11

山形の経済をちょっと覗いてみる、ガッタ流山形のイマドキ経済白書。

2017年6月号(152号)やまがた経済、ちょっと見。
山形県内企業
山形県

山地で囲まれ、どこへ行くにも陸路では峠越えを余儀なくされる山形県。そのため、昔から人の出入りが少なく、独自の産業や文化が隔離された地域内で成熟・発展してきた。江戸時代までさかのぼれば、県土のおよそ75%を流域とする最上川の舟運が物資交流の要となっており、県内の産業発展に大きく貢献している。

 

地の利を生かした農業、そして構造転換へ。

 近代に発展してもなお山形県の産業の主体は稲作を主とする農業が主軸であり、地形や気候風土に恵まれた環境のもと、果実や野菜、畜産の農業産出額はつねに全国平均を上回ってきた。一方で、1970年代以降の高度経済成長期に大規模な工業団地が形成されると、電気機器工業を中心とした製造業が山形の経済をリードするようになる。総務省統計局が平成22年にまとめた国勢調査によれば、山形県の産業別就業人口は第1次産業5万5606人、第2次産業16万4010人、第3次産業36万562人、分類不能産業9804人と、かつて農業依存だった構造はすでに転換しているのが現状だ。

 

山形県で働く人たちは、どんな業種に多くいる?

 現在山形県内にある企業数は5万9333社(2016年現在)、そのうち民間事業所数は5万7515事業所(※平成26年経済センサス基礎調査による平成26年7月1日現在のデータによる)となっている。特徴をあげると、従業者総数のうち46%が女性であり、全国平均44.2%を上回っており、その割合は昭和61年以来増加している。従業者数(※平成26年産業大分類別従業者数(民営)より)は全産業で48万627人で、主な業種別にみると、第1次産業の農業・林業・漁業で5404人、第2次産業の建設業・製造業などで14万9951人、情報通信業・卸売業・小売業・金融業・医療福祉などの第3次産業で32万5272人となっている。割合でみると山形県の民間企業で働く人の68%は第3次、31%が第二次、残り1%が第1次産業従事者ということになる。

統計データからは単純に第三次産業の従事者が圧倒的に多く見えるが、全国と比較するとその割合は第1次産業従事者が全国0.6%に対し山形県0.9%、第2次産業の建設・製造業従事者が全国17.7%に対し山形は20.2%。第3次産業内では生活関連サービスに分類される美容・理容業が全国8.6%に対し、山形は10.6%という結果が示されている。

 

山形の農業、製造業ほか、それぞれの成長は?

 山形県庁統計企画課「県民経済計算(確報)報告書【平成26年度】」から県内の産業別GDPを読み解くと、製造業(第二次産業)が約19%、サービス業(第三次産業)が約18%、不動産業(第三次産業)が約15%と、トップ3を占めている。また、全国と比較するとやはり農業や製造業などの割合が高くなっており、特に電子部品・デバイス・電子回路製造業が盛んである。

しかしながら、消費税率引き上げによる駆け込み需要の反動などの影響を受け、平成26年度山形県の経済成長率(名目)は対前年度比でマイナス成長という推計結果になった。産業別では農業△7.7%が大きく、果実の産出額は増加したものの、米の産出額が減少した結果に。製造業では電気機械が△19.3%、精密機械△30.3%と落ち込んだが、化学は+35.7%と大きく成長した結果となった。第3次産業分野は+0.4%、なかでも電気・ガス・水道業の+4.2%が目立つ。

 

経済成長を握る鍵はどこにある?

 経済指標であるGDPにおいて日本は、アメリカ、中国に次いで世界3位。この指標だけみれば豊かな経済力を誇るといえるだろうし、山形県もその中堅を固く担ってきたといえるだろう。
しかし、じつは日本の一人当たりのGDPランキング(※IMF2016年統計より)は世界26位と、G7中においても最下位に甘んじている。主要国に比べて人口の少ない日本は、一人当たりの生産性を上げることが今後の重要な課題なのだ。残業や長時間労働の是否といった働き方改革が謳われているいま、その具体策にあげられるのが、ロボットやAI(人工知能)の台頭だ。山形県の所得を牽引している第2次産業分野においてもすでに導入されている工場は多々あり、操作は人、作業は機械が当たり前。一方これがより進化してしまうと、将来、AIに仕事を奪われてしまうのでは……というのは考えすぎだろうか。

 

山形県の経済の、今後の展望は?

 株式会社帝国データバンクによる「2017年度の賃金動向に関する東北6県企業の意識調査」では、2017年の景気見通しは「踊り場局面」(階段の踊り場のように平坦で大きな変化が少ない局面)と考える企業が過去最高となったうえ、「分からない」が前年の調査より増加するなど、先行きが一段と見通しにくくなっているという結果が出ている。山形県も例に漏れず、持ち直しの動きはあるがおおむね横ばいに推移している状況で(山形県庁統計企画課「山形県経済動向月例報告」(平成28年6月の経済指標を中心として)より)、変化が少ないことから生まれる先行き不安を感じる企業は決して少なくないだろう。

以下、活力のある県内企業のリアルな声を集めた本誌面から1企業を抜粋し紹介するほか、山形の経済の今後をどう考えればいいかのヒントについて見ていこう。

 

「県内初」を志に、進んで求められる店を目指して。

「株式会社ヤマザワ」は、ご存知の通り山形県内初のスーパーマーケットである。元々は1952年に東根市神町に山澤薬局を創業し、その10年後、山形駅前に、今で言えばコンビニのような形態でスーパーマーケットを開店した。当時からセルフレジを導入するなど、当時にしてみれば画期的な取り組みを行っていたと紹介してくれたのは、取締役人事教育部長の森谷亮一さん。当社も今や東証一部上場企業であり、2012年には連結売上高が1千億円を到達している。

消費者のニーズや環境、暮らしが変化する中、顧客にとっての便利さを追求し、物販はもちろん、憩いの場や子育て支援といった様々なサービスを展開、新店舗だけでなく既存店舗のリニューアルといった活性化など、今までとは違う投資にも力を入れているヤマザワ。森谷さんは、「生活必需品を取り扱うため、経済全体の大きな影響を受けることは少ない業界ではありますが、どれだけ生産性を高め、費用を抑えるかという命題は常にあります。人口が減少し、東北でも高齢化が進む中、当社がどのように支持され、体力を持ち続けていけるかが課題だと思います」と語ってくれた。

先にも述べたが、日本国内において今後重要になってくるのは、一人ひとりの生産性を上げること。企業それぞれがそれぞれの工夫を行う中、どの業界も等しく、同じ問題に立たされていることを改めて痛感する。

 

取材に応じていただいた森谷さん。

 

経営者のお悩み、解決する方法とは。

 創業の際や、経営をしている中での様々な悩みに対応し、経営支援をしている企業は県内にも多く存在するが、その一つに「山形銀行」がある。強みでもある、各分野の専門家と提携した多様なコンサルティング機能を活かし、「創業支援、事業承継支援、人材育成プログラムなど、様々な支援を行っています」と、営業支援部コンサルティンググループ、チーフ調査役の清水洋さん。「企業にとってやはり一番大事なのは人材です。これからの企業の成長ひいては地域の発展のためにも、企業の財産となる人材の育成支援をしていきたいです」と語る。

「経営者にはこうあってほしい」という点は?と訊いてみると、「前向きに一生懸命に、企業のことを考えること」、「人を大事にし、育てること」、「受け継いできた技術を、次世代にきちんと伝承すること」とが挙げられた。地域のために、山形の発展に責任を持つという長期的なビジョンを掲げている当行。どの支援もその時に最適な人材をそろえ、しっかりと〝人〟を見るという宣言に違わない返答をいただけた。

 

日本で最も「企業を知る企業」に訊く、
山形の企業のこれからに必要なこと。

 東北ならではの保守的な部分、伝統的なものを派生的に伸ばす傾向、堅実な気質、大きな災害の無さなど、山形の風土、歴史的背景や地理的条件からくる強みは、そのまま弱みでもあることが多いと、帝国データバンク山形支店調査課の佐藤剛喜さんは指摘する。しかし、山形には戦時中に疎開企業が技術の伝承をしたこともあり、それを受け継いだことで比較的大きなメーカーが点在し、各地域ごとに愛される企業も多く残っている。「これは企業数の多さよりも有利に働くと言っていいと思います」とのことだ。

しかし、どんな企業にも逆境はつきもの。それを克服する考え方に「SWOT(スウォット)分析」がある。SWOTとは、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunitie)、脅威(Threats)、それぞれの頭文字を並べたもの。
「強みや弱みだけでなく、チャンスと脅威も一緒に分析し、弱みをチャンスで克服するなどの戦略を練る必要があります」と佐藤さん。将来が不透明な中、成功企業を真似ることも、それを成功に結びつけることも難しい。それでも、今まで残ってきた企業に学ぶことはできるはずだ。
これから生き残る企業の条件を3つ挙げるならば、「自社や商品の強みと弱みをきちんと分析すること」、「人の失敗を適切に評価すること」、「失敗を皆で共有し、成功を学ぶこと」だという。そうした企業が長く残り、気づけばその業界のトップになっていた、という事例だってあるのだ。

また、「〝倒れないこと〟を考えるのも重要だと思います。同じ失敗をしないようにするのが成功の近道かと」と佐藤さんは話す。確かに、企業を「伸ばす」のもリスクがつきまとう。何事も淘汰が進む中、形を変えて存続する企業も多く存在する。業界の足元の変化に注意しつつ、広い目を持つ必要がありそうだ。

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