特集の傍流

2017.8.9

素材の本質を徹底探究した製品で、常識を打ち破る。

2017年9月号(155号)突破人に学ぶ、仕事術。
アルス株式会社 専務取締役 高橋風人さん
山形県米沢市

 9月号特集「突破人に学ぶ、仕事術」。2回目は、全国でも数少ない、県内では唯一の木製サッシ・窓の専門メーカー、アルス株式会社(米沢市)。今年7月に移転完了した新工場にて、自分たちの「提供したい」という想いを大切に、真に時代に求められる製品を世に送る職人たちを訪ねた。

 

素材の性質を活かした、住む人に優しいものづくり。

 欧米では木製窓が主流だが、日本の住宅は軽くて加工しやすいアルミサッシがほとんど。そんな中、木製サッシ「夢まど」を作り続けているのが、米沢市のアルス株式会社だ。
 設立は平成5年。元々は障子や襖を作る建具屋だったが、「無垢の木で何かを作りたいという想いは、かねてからあったといいます」。そう話してくれたのは、専務取締役の高橋風人さん。「木製サッシ・夢まど」の製造に乗り出した社長、高橋光雄さんのご子息だ。

 

高橋専務は専務就任2年目の28歳。職人の方々も若い顔が目立つ。

 

 建具屋時代、合板が使われ始めた頃、製造中に咳き込む社員が増えた。木を扱っているのに、体に良いものを作っていないのでは。それが、人にも環境にも優しい木製サッシを手がけるきっかけだった。当初はほとんどなかった注文も次々と増え、現在も一般家庭から企業、北は北海道から南は九州まで、多くのバックオーダーを抱える。
「環境意識の高まりや、住宅の省エネルギー基準の改定、さらに、家づくりやものづくりにこだわりを持つ人が増えてきたということも一因だと思います」と高橋専務。

 

「夢まど」づくりは、自社で木を削り出すところから始まる。

 

注文で溝の形や幅が変わってくるため、何枚もの刃を使い分け、様々な断面を作り出す。

 

作っているのは、単なる「木の窓」にあらず。

 県内の金山杉や、青森県のヒバなど、国内産の木材を各所に活用し、木が持つ特性を生かした製品「夢まど」は、複層ガラスを標準装備し、結露を防止、さらに、防火窓の認定も取得している。

 

 

 

 木製サッシが優れているのは、アルミや他の素材よりもはるかに高い断熱性で結露を防ぐ点。さらに、アルミを凌ぐ強度、木目の美しさ、温かな手触り、調湿生など、感じる全てが五感に優しい。紫外線による劣化は否めないため、定期的に保護塗料を塗る手入れは必要だが、それは手をかければ長く楽しめるということ。経年変化により使うほどに愛着が湧く、その魅力は木製品ならでは。日本ではまだまだ木製サッシの見解が偏っているが、だからこそ素材の価値を高め、理想の高性能窓を追求する醍醐味もある。

 

 

 

 同じようなメーカーが少ないことや、製品が製品だけに、製作や営業においても未知の部分が多く、個々の学ぼうとする力や提案力が必要とされる。
 その中でも「やはり建具屋時代から続く、お客様との直接のやりとりを大切にしています」と高橋専務。社員は若い顔が目立つが、「入社当初からサッシ作りの専門的知識を持つ社員はほとんどいません。作りながら、先輩を見て覚えていくんです」とのこと。個々の能力を尊重し、大きな可能性のために前進を続けながら、「今後はオーダー品だけでなく製品を規格化して量産し、木製サッシを普及させ、増産できるようにしていきたい」というのが展望だ。

 

 

 

 

「木製サッシと言えば『アルス』。そんな風に、木製窓の定番商品となるようなものづくりをしていきたい」。高橋専務はそう話す。
 社名の「アルス」とは、ラテン語で芸術の意で、元々は技術・技巧を意味する言葉でもある。技術の名を冠する職人集団、アルス株式会社の挑戦は続く。

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