特集の傍流

2017.11.9

外側にいるからこそ見える、 山形の地味を伝えたい。

2017年12月号(158号)やまがたワイン考〈後編〉
(株) カーブ・ド・リラックス 代表取締役社長 内藤邦夫さん
東京都港区西新橋

東京・虎ノ門のワイン専門店「カーヴドリラックス」。スタッフの情熱とこだわりで厳選された独自の品揃えが多くのワインファンを魅了し、関係者からも高い評価を得る、日本を代表する名店だ。代表の内藤さんはメルシャンに10年勤務、そのうち8年を東北で過ごした。「日本のワイン全般に言えますが、あの時と比べると山形のワインもいつの間にかとても美味しくなっていて」と、当時を振り返る。

 

都内の専門店に訊く山形ワインの売れ行き。

 オープンは1999年。当初、国産ワインの取り扱いはゼロだったとのこと。しかし、国産ワインへの反応や評判が良くなるにつれ、同店の扱い数も増え、売り上げも伸び、2008年には現在と同様の160種類に。
「昨年の当店単独の日本のワインの売り上げは、フランスワインに次いで2位。国産ワインでは、1位は山梨、次いで長野、北海道、4番目が山形のワインとなっています」と、他地方には及ばないものの、なかなか健闘しているようだ。

 

虎ノ門本店では、常時約1600種類のワイン、時期による入れ替えを含めると年間を通して約4000種類のワインを扱っている。

 

 

これがおすすめです、売り手が選ぶ山形ワイン。

 果樹王国山形は、ぶどう栽培にもいち早く取り組んだ土地柄。「山形のワインを飲むと、農家さんたちに息づく生食用も含めたぶどう栽培の、今まで積み上げてきた歴史と伝統を感じることがありますね」という内藤さんに、山形のワインのおすすめを訊いてみた。

「まずは、月山ワインの甲州シュール・リー。国内北限の甲州によるワインですが、やはり他のどの甲州よりとてもよく伸びる酸がしっかりとあります。また、ミネラル感に富み、ぶどうの熟度も高い。ボディーもしっかりしていて、まさに山形のテロワールを反映したものだと思います」。また、「私が劇的に美味しくなったと感じるのは朝日町ワイン。ここのマスカットベリーAは11月に収穫する遅摘みで、これは全国的にも遅い収穫なんです。2015マイスターセレクションの遅摘みマスカットベーリーAは、じっくりと育ったぶどうが非常に豊かな味を出していて、驚くほど濃厚です。これも土地が生んだ独特の味わいでしょう」。

 

山形のワインに抱く期待や、数々のエピソードを熱く語る内藤さん。山形にも幾度となく訪れ、畑やワイナリーでの見聞・交流を深めている。「産地の特徴を直に知り、買い手に伝える」が信条だ。

 

店舗や都内のレストランなどで、生産者を招いたワインセミナーや試飲会も積極的に催している(写真提供/カーヴドリラックス)

 

さらに、「タケダワイナリーのベリーAの古木も、樹齢の高さから、凝縮感というか、落ち着きや品位がありますね。こちらのブラン・ド・ノワールはベリーAを白ワイン製法で造ったワイン。辛口なんですが、エキスのような甘い果実感もある。非常にエレガントで、やわらかい果実味がたっぷり出ていて、ぶどうの生き様のようなものすら感じますし、ベリーAの可能性を示す一本だと思います」と太鼓判を押す。
「山形は歴史的にも甘口ワインに親しんできた文化がありますが、近年はだいぶ辛口嗜好になり、地ワインに興味を持って販促をかけている店舗もあります。県産ワインを扱う飲食店も増えてきました」。だからこそ、地元の人間がその土地の様々な味わい、良さを伝えなければ勿体ないと、改めて感じる。

 

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