特集の傍流

2018.4.7

心地よさをどう表現するかに、山形での体験が息づいています。

2018年5月号(163号)あの人の、やまがた観察記。
宇南山加子さん
東京都台東区鳥越

◇職人の町として知られる、東京都台東区。プロダクトデザイナーの宇南山加子さんが代表を務める、生活デザイン会社兼店舗『SyuRo(シュロ)』はそこに佇む。日本の伝統や職人の技術を生かした、生活で使い続けることのできる「かっこよくあたたかい」オリジナル商品や企画を提案している宇南山さん。彼女と、山形のつながりとは。

 

穏やかな空気が流れる『SyuRo』店内。

 

いまだ色褪せない、幼い頃の山形での体験。

 お父様が職人ということもあり、幼い頃から生活の一部にもの作りがあった宇南山さん。ご両親は山形県遊佐町の出身で、幼少の頃はよく、遊佐町をはじめとする庄内地方で過ごしたという。

 

「山形での体験は全て鮮明に覚えていて。自然がたくさんあって、とにかく景色がだだっ広くて気持ちよかったですね。それに、酒田の親戚から地元の民芸館に連れて行ってもらったり、山形の郷土玩具を買ってもらって遊んだり、作ったりもして。たくさんの自然やおいしい水、自然由来の良いものに触れたりと、様々な体験をさせてもらいました。大人になってから振り返ると、とてもいい経験だったなあと思います」
 母方のお祖父様は馬蹄の職人で、お父様はジュエリー職人。自身もお父様の姿を見て、学生の頃に金属でプロダクト制作を始めたのが活動のきっかけだ。

 

店内にはSyuRoのロゴマークにも使われている、お父様のプレス機が象徴的に置かれている。

 

「さかのぼれば、祖父の代から金属に縁があったんですよね。また、遊佐で長年、保育園の園長を勤めている伯母は、子どもと関わっていることもあって、化学物質を極力使わない自然のものを大切にし、手触りが良い素材や、ものの選び方をとてもよく考える人でした。ですから今のSyuRoの商品や活動には、そういったことが凄く根っこにあると感じます。それに、庄内で気持ち良さを感じていた自分というのは、凄く大事にしています。やはり、心地よいと感じることをどういう方法で表現するかという点では、山形での体験が大きく影響しているような気がしますね」

 

福岡県の「広松木工」によるテーブルの上には、三重県の土から作ったオリジナル商品の「炻器(せっき)」が並ぶ。

 

〝魅せる美しさ〟への追求が、山形にはある。

 山形には昔ながらの技術を持った職人も多く、自然の素材を生かしたプロダクトも数多く存在する。そんな山形は、デザイナーという立場から見てどのように映っているのだろうか。宇南山さんに、ズバリうかがってみた。

 

「山形は、北前船の影響なのかは分かりませんが、他のところより、もの自体や作り方が洗練されている気がしますね。ちょっと粋というか、要所要所で他と少し違う雰囲気を漂わせているというか。例えばザルにしても編み方が凄く込んでいたりして、〝どうしたら美しく見えるか〟を追求していたりすると思うんです。ただ使えればいいということではなく、いかに〝魅せるもの〟にするかを追求する元々の文化や気質は、山形には凄くあるんじゃないかと」
 確かに、庄内のばんどり一つを取ってみても、凝った編み方や模様で美しく飾られている。
「それに、山形の人は他県に比べたら、自分たちが作ったものに関するアピールを凄くされている方だと思いますし、様々な要素を洗練させて出している気がしていて、すごく好感を持っています。自分たちの良さを分かっている感じがしますよね。仕事で様々な所に行きますが、自分たちの良さに気づいていない方々は、自分たちの町をあまり好きじゃないところがあると思うんです。やはり、良さや、自分たちが何が好きかを知った上で、周りの人に〝これっていいよ〟と伝えることが一番重要なので」

 

SyuRoの代名詞とも言えるオリジナル商品「角缶」。高齢の茶缶職人の技術を社員が継承している。

 

「そういった、良いものを知ってもらうためのきっかけづくりを私も大切にしていますし、SyuRoによって少しずつでも、人やものがつながっていければいいなと思っています」

 

手触りをはじめ、五感に響く商品に囲まれながら。

 

 良さを知ってもらうきっかけづくり。それはgatta!のテーマとも共通すること。同じ方向を向いていることと、彼女と我々をつないでくれた山形という縁が誇らしく思えた。

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