山形で感じる鬼の気配。風習の鬼「其の壱・アマハゲ」

2023年3月号(221号)
特集|鬼さん、こちら
アマハゲ(遊佐町吹浦)

集落の各家を訪れ住民と新年を祝い、子どもたちの怠け心を戒める。

遊佐町吹浦地区の滝ノ浦、女鹿、鳥崎集落に伝わる民俗行事で、鬼や翁などの面をつけた若者が正月に家々を回り、子どもの怠け心を諌める一方、高齢者には穏やかに接し、長寿を願う習わし。「ケンダン」という藁を何重にも重ねた蓑を身にまとってひと際大きな体躯を持ち、その頭には角もあるが「アマハゲ」は災厄を払い、生きる力を授ける来訪神。大きな音や奇声をあげて訪問するのは厄払いのためだとも。

名称の由来は手足が低温やけどした際にできる「火斑」からきており、遊佐では古くから「アマミ」や「アマメ」「ナマミ」と言われている。これは、火に長くあたっていると皮膚にできる赤いまだら模様(火だこ)のことで、冬の間、仕事もしないで囲炉裏などで長い時間、暖を取っているという怠惰の証とされてきた。そこからアマメ(火だこ)を剥ぎ取る「アマメ剥ぎ」、「アマハゲ」へと転化したものといわれ、怠け者を戒めるという意味があるようだ。

なお「アマハゲ」は、1999年に国の重要無形民俗文化財の指定を受け、2018年11月には秋田県の「男鹿のナマハゲ」など全国10行事とともに「来訪神:仮面・仮装の神々」として、ユネスコ無形文化遺産に登録されている。

鳥崎集落内の神社にて。神酒を供えアマハゲの面を置いて祈願する。
鳥崎の神社にて。ワラで編んだケンダンと呼ばれる蓑を男衆3人がかりで着せていく。
藁を何重にも重ねた蓑を身にまとう。想像以上の重さになるという。
祈祷された面を付けることにより「アマハゲ」へと神化する。
鳥崎のアマハゲ。奇声を上げながら家に上がり込み、子どもを追いかけたり抱き抱えたりする神事だ。
アマハゲの体から落ちたケンダン(藁)は金銭面などのご利益があるとされ、村人たちはていねいに皆拾い集めて神棚に飾る。
女鹿のアマハゲ。面の意匠や種類、ケンダンの着こなし、来訪時の作法まで、滝ノ浦、女鹿、鳥崎の3集落それぞれが微妙に異なる。
列をなして集落内の家々をまわる女鹿のアマハゲ
太鼓の音とともに村に来訪する女鹿のアマハゲ。
神事が終わると、家人は用意した酒や肴でアマハゲをもてなす。

gatta! 2023年3月号
特集|鬼さん、こちら。

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