表紙の小さな物語

2021.6.4

チョコレート、おいしくなーれ。結愛ちゃん、悠愛ちゃん姉妹。

2021年3月号(197号)表紙

子どもも大人も夢中になる食べ物のひとつ、チョコレート。チョコレートが愛の告白を手助けしてくれるアイテムとなったのはいつ時代だろう。甘さの影にほろ苦さを隠し、ナッツやフルーツ、クッキーとも好相性。これほど多くの人に愛されているスイーツはほかにない。チョコレートは大切な気持ちを映す代弁者として、いまも昔も私たちの味方なのだ。

 

外にはいつもより多めに降った年頭の雪が残る、1月のある日。真新しい白壁が瀟洒なお宅を訪ねる。玄関のチャイムを押すと、出迎えてくれたのは結愛(ゆあ)ちゃん。今回表紙のモデルをお願いした7歳の女の子だ。まっすぐに揃えられた前髪が愛らしく、とてもお似合いだ。部屋のなかにお邪魔するともうひとりの小さな女の子が、ぬいぐるみと一緒に遊んでいる。

 

 

 

「今日は結愛ちゃんに、チョコレートのクリームを作ってもらいたいんだけど、大丈夫かな?」
「うん、いいよー」と結愛ちゃん。さっそくガラスボールに砕いたチョコレートを入れはじめた。
もうひとりの女の子に声をかけてみる。結愛ちゃんの3歳になる妹の悠愛(はるあ)ちゃんだ。

「こっちで一緒にチョコクリームつくらない?」
「うん、はるちゃんもやってみるっ!」駆け足ですぐさま寄ってきた。結愛ちゃんが楽しそうにチョコレートをパキパキ割っていたから、自分もやってみたくてウズウズしていたみたい。
ふたりは小さな手を使って次々とチョコレートを割っていく。簡単そうに見えて、じつはなかなか思い通りに割れないことも。力余ってその欠片が弾け、ボールに入らず飛び出した。それがふたりには面白かったらしく、キャハハと楽しそうに笑い合っている。

 

 

 

 

全部砕き終わったチョコレートは、ママが電子レンジに入れて温めてくれた。
「トロトロになるまで混ぜるの?」と結愛ちゃん。そしてすかさず悠愛ちゃんのほうを向き「やってみる?」と尋ねている。悠愛ちゃんの目に光が宿り、表情がキラキラと輝く。さすがお姉ちゃん、妹の好奇心のアンテナを見事にキャッチした様子。悠愛ちゃんが嬉しそうに頷く様子を見届けると、自分の髪をササッとひとつに束ね、「このヘラを持ってまぜまぜしてみて」と言いながら、チョコレートの入ったガラスボールにしっかりと手を添えた。
そんな結愛ちゃんの優しさに見惚れていると、溶けたチョコレートはあっという間に液状になり、辺りには甘く芳しい香りが漂ってきた。ちょっと味見してみたいなぁ。。。ふたりの心の声が聞こえたような気がしたので誘ってみる。

 

 

「クラッカーがあるけど、このチョコレートをつけて食べたらたぶん美味しいと思うんだよね。どうする?」
「えー食べていいの!食べたい食べたい」
「やったー」

溶かしたチョコレートとクラッカー。ただそれだけでこんなにも美味しい。一瞬で口のなかに広がる幸福感、その甘美な記憶が、いつの日かふたりの女の子の背中を押す勇気になるのかなぁなんて、独言たりして。

 

2021年3月号(197号)やまがた貯古齢糖考
飯田結愛ちゃん(7歳)、悠愛ちゃん(3歳)
山形県天童市

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