表紙の小さな物語

2016.5.7

忘れないでほしい、この道を歩いた思い出を。

2016年6月号(140号)表紙

満開の桜が少しずつ花弁を散らしはじめた4月中旬、朝日がまぶしい早朝に、荒井家の皆さんと待ち合わせ。春といっても、まだ少し肌寒さがのこる時季。それでも、可愛らしい真っ赤なジャケットを着て今日も元気いっぱいの、荒井のえさんと、荒井はなさん。普段は近所の「山形まなび館」で遊んだり、お父さんやお母さんと一緒に緑地公園に遊びに行ったり、ときには、愛犬ベビーちゃんと一緒に散歩にも。ベビーちゃんはなんと、二人よりもお姉ちゃんの10歳だ。

 

本当に仲が良くって、二人が一緒ならどこにいたって笑いが生まれる。アルプス一万尺をパチパチしながら歌ったり、ヤジロベエごっこをしたり、特別な遊び道具がなくても、小路の角やちょっとした広場があればそこが遊び場に。ほんとうに子供は“遊びを創る”天才だなぁと感心してしまう。ご両親もあわせてお話を伺ったあとも、まだまだ遊び足りなかったのか、「朝ごはんは後でいいから、学校(の遊具)で遊びたい〜!」と言って、お母さんから諌められている様子も微笑ましく、徐々に射してきた朝日と同調するかのような明朗さに、こちらまでパワーをもらえそうだ。

 

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平日とは打って変わって、街なかの週末の朝はまだ眠たそう。二人の楽しそうな笑い声が朝日に溶けていく。

 

そんな二人が毎日通う小学校に向かう途中の十字路。通り沿いにある見慣れた風景やふるい建物は、道路拡幅に伴う工事によって徐々に取り壊されていて、この周辺ももう間もなく自動車優先の広い道路になってしまうとのこと。奥州街道と並び東北の二大街道のひとつ羽州街道近くを南北に走る「栄町通り」には、珍しい木造4階建ての「旅館仙台屋」や、モダンな外観の「細谷牛肉店」などノスタルジックな佇まいが残り、通りから一歩なかに踏み入れば、身を寄せ合うように並ぶ住宅に沿って細々と伸びる小路など、かつての賑々しい商店街の面影がぽつりぽつり残っている。そしてこの通りは、のえさんとはなさんだけでなく、二人の母親であるはる菜さんにとっても、幼い頃から馴れ親しんだ思い出が詰まっている場所なのだ。

 

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母親のはる菜さんが昔よく食べに行ったという『(旧)北海ラーメン』の建物と通りを背景に。

 

「昔の栄町通りの面影は薄くなってしまっていますが、その景色でさえも、娘たちが大人になる頃にはなくなってしまうんです。それでもこの道を歩いた思い出や風景は何かのカタチに残せたらいいなあって」たくさんの人が遊び、笑い、多くの刻を歩んできたこの通りは今まさに変貌途上。エネルギッシュな赤に身を包み元気いっぱいに歩く二人に、消えかけた旧い街並みがやさしく微笑みかけているようだった。

 

2016年6月号(140号)ブレイクスルーの鍵
表紙モデル:荒井のえさん(8歳)、はなさん(6歳)
山形県山形市木の実町

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