表紙の小さな物語
昭和の風情漂う商店が立ち並び、役場がある町の中心部にも田畑が広がる長閑かな風景。休日には親戚が集まり、よく自庭でバーベキューをしているという小川さんご一家を訪ねて高畠町へ。ご家族で営む「電器屋」は懐かしい佇まいで、店舗横にあるコの字型の庭には、鮮やかな青色のテント張られていた。そこにレジャーシートを敷いて、キャンプチェアを並べ、グリルを設置。レジャー用のゲームやボールもあるし、さながら小さな「ひみつ基地」のよう。缶ビールを飲み、会話を交わしながら、お昼を目処に手際よくバーベキューの準備をするご家族の風景は、絵に描いたような和やかな日曜日だ。
家のすぐ近くにある緑地公園から、小川家の姉妹が遊ぶ楽しそうな声が聞こえてきた。補助輪なしの自転車を練習しているのは姉の夏葵さん。それを見て「自分もお姉ちゃんと同じくらい走れるんだよ」というふうにちいさな歩幅で追いかけるのは妹の優葵さん。そして、そんな活発な二人を右へ左へとひたすら追いかけるお母さん。
「お〜い、ごはんできたよ〜!」と、通りのむこうからおじいちゃんやお父さんの呼ぶ声が。たくさん駆け回ったあとの冷たいジュース、できたての焼きそばやグリルドビーフも美味しそう。自分の顔よりも大きく切ってもらった大好物のスイカを、二人仲良く並んでカブりつきだ。
ご家族と一緒にバーベキューに交ぜてもらい、お庭の「ひみつ基地」で歓談していると、「むかし、家の庭に張った日除けテントの下でご飯食べたり、ビニールプールで水遊びしたり、楽しかったよなぁ」などと、幼い頃の記憶をふと思い返してしまった。豪華な遊園地もいいけれど、子どもたちにとっては休日に遊びに行くおじいちゃん家が、何処よりもたのしいテーマパークなのかもしれない。

近くの緑地公園で夏葵さんは自転車の練習。「乗るとこちゃんと見ててね!」

「わたしも、ここからジャンプしたい!」「優葵はまだダメだよ〜」

仲良く草花を摘んで、かわすのは二人だけがわかる会話。

どれから食べようかなぁ!

顔よりも大きなスイカ!食べたあとは何して遊ぶ?

表紙モデル:小川夏葵さん、優葵さん
山形県東置賜郡高畠町
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