表紙の小さな物語
トタン屋根と木造の懐かしい佇まい、近所のお客さんを相手にひっそりと営むまちの八百屋さんが一軒。その店先で、手伝いをするのは、小学校二年生になる脩希(なおき)くん。西陽がさしかかってきた店内で、野菜を秤にのせたり、サインペンで値段を書いて割り箸に貼った、手作りの値札を置いたり。両親は共働きなのだけど学童保育へは行かずに、八百屋を営むおじいちゃんとおばあちゃんの家で一日を過ごし、勉強が終わったら八百屋の手伝いをするのが日課になっている。「遊び盛りだけど、嫌な顔ひとつせず毎日欠かさずお手伝いをしてくれるのよ」と微笑む、おばあちゃん。「今日もありがとうな」とお駄賃をくれた、おじいちゃん。
この八百屋は、おじいちゃんの代から始めたお店で、かれこれ50年にもなるそう。「すこし前までここの通りには、8件くらいいろんな店がならんでたけど、今じゃ此処とすぐ近くにある寿司屋さんの2件になってしまったよ」。時代とともに変わりゆく街並み、そんななかで幼い頃から祖父母の家業を手伝いながら、人との関わり合いを経験できるというのは、とても得難い経験だと感じた。
撮影が終わり、あらためて売り場を見たら、脩希くん手書きの“値下げ札”が。お値打ちに釣られて思わずメロンを買ってしまった。

重い野菜もなんなく運んで秤にのせる。逞しいね。

お買い上げしてもらった、カボチャをやさしく秤からレジへ。

やっぱり男の子。撮影に慣れてくると、わんぱくぶりを発揮。

裏庭では、大粒の梅が干されている。「う~ん。待ち遠しい」

縁側から眺めるちいさな裏庭には樹木や池もあり、晩夏の自然が凝縮されていた。

表紙モデル:秋葉脩希くん(8歳)
山形県山形市伊達城
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