表紙の小さな物語
慧丸くんは水曜日が大好きだ。幼稚園に行くのがちょっと面倒な気分のときも、お家でゲームをしていたいときもあるけど、水曜日の朝はバスに乗る足取りも軽くなる。
どうしてって、それは週に一度の〝お母さん弁当の日〟だから。
幼稚園には毎日おいしい給食が用意されていて、慧丸(けいが)くんは毎日残さず平らげる。苦手なナスやキノコの献立も、給食だとなぜか全部食べちゃえるらしい。仲良しの友だちが一緒だから? ペロリ賞のシールがもらえるから?
「給食には牛乳あるでしょ。オレ牛乳好きだから、給食ペロリできる。だけどお母さん弁当にはさ、パトカーとか、新幹線のはやぶさとかが入ってんの。マリオのときもあるよ。それから唐揚げとウインナーを入れてってママにいうの。前の水曜はタマゴとハムのサンドイッチにしてもらった。3個も入ってたよ!」
みんなと食べる給食も大好きだけれど、お母さん弁当には慧丸くんを笑顔にしてくれるドキドキのサプライズが入っているみたい。

パパが愛用している曲げわっぱのお弁当箱。実はこれ、生前おじいちゃんがお土産に買ってきてくれた大切な形見だそう。
お休みの今日は、ママの代わりにパパのお弁当におかずを詰めるって朝から大張り切り。
「パパ、唐揚げいっぱい食べたいと思うから4個入れてあげた!」
つまみ食いせずにお手伝いできてすごいなぁと思って見ていたら、じつはすでにお味見しちゃってたんだって。そうだよね、揚げたては衣がサクサクして鶏肉にも味が染みてて最高においしいもんね。
「ママがね、唐揚げを作ったときはいつもキッチンから〝お味見したい人はきてー〟って呼ぶから、さっき2個食べちゃった」
初めて使ったという大きな菜箸で、唐揚げを上手につまんでお弁当箱のなかへ。
「卵焼きは2個、あとブロッコリーでしょ、ウインナーでしょ、あ、ちょっと待って、おにぎりが1個しか入んなくなった」
大丈夫、残ったおにぎりは慧丸くんの分。お手伝いのご褒美に食べていいって。
「じゃオレ、塩おにぎり食べる!」と大きなお口を開けてパクリ。ついでにそのお顔をカメラでパチリ。
今日のお弁当、いつもより愛情の味つけが濃いめに仕上がっているみたい。

大人なら何気なく使っている菜箸も、慧丸くんの手にはオーバーサイズ。おむすびならぬ“唐揚げ”ころりん、転がっちゃった。

朝食は週4でおにぎり、幼稚園から帰宅した後のおやつもおにぎり、お風呂上りにお腹空いちゃった時もおにぎり。そんなおにぎりボーイ慧丸くんの大好物は、シンプルな塩むすび。「ゆかりとツナマヨも好きだけど、塩が一番かな」

表紙モデル:眞木慧丸くん(5歳)
山形県天童市
菅原道真を崇める天神信仰による臥牛像や、民芸品の赤べこ、俵牛など、神の使いとして親しみ深い牛。なぜ神使…
あいにくの曇り空。いまにも雨が溢れ落ちそうな初冬のある日。大人はベンチコートをまとっても足踏みするほど…
向かったのは山形県を代表するそば処として有名な村山市。国道13号線を北進し、県道25号と交わる交差点か…
山ふもとに果樹園が広がる朝日町。町の中心に位置する「宮宿商店街」を歩いていると、菓子店の換気扇から漂って…
まだ夏の気配が冷めやらぬ8月下旬、集まった3人は従姉妹同士。黄色いTシャツのみのりちゃんとピンクのハッ…
最上三十三観音の第一番札所として知られる若松観音。「目出度目出度の若松様よ〜」と花笠音頭の歌詞にも登場…