表紙の小さな物語

2020.12.8

寒風でもへっちゃら、清央くん

2020年12月号(194号)表紙

 向かったのは山形県を代表するそば処として有名な村山市。国道13号線を北進し、県道25号と交わる交差点から5分ほどで辿り着く『最上徳内記念館』が、今回の表紙の撮影地だ。撮影が行われたのは木枯らしが吹きはじめた10月中旬。温かい陽射しが降り注いではいたものの、北風が頬を撫でると身震いしそうになる季節。そんななか待ち合わせた駐車場で、おばあちゃんに手を引かれながら元気に飛び跳ねている男の子がいた。モデルを務めてくれた奥山清央くんだ。

 

広々とした芝生のある庭園は気持ちがいいね。おばあちゃんに手を振りながら飛び跳ねる清央くん。

 

北海道の形を模した庭園で。入館者は自由に散歩ができる。

 

 最上徳内記念館の敷地内にある庭園は、移築された明治時代の古民家が佇み、徳内の胸像や顕彰碑などが配された風光明媚な場所。北方領土探検家の博物館らしく、池の形は北海道と北方領土のカタチが模された凝った造りとなっている。その池を目指し、石畳の小道を駆けていく清央くん。池の真ん中にある北海道型の小島へは、飛び石を渡らないと辿り着けない。まだ4歳の清央くんの歩幅では、越えられそうにない難関だ。

 

 「おーい、おーい」と清央くんが叫び、離れ小島に呼びかける。カメラマンも呼応しながら軽快にシャッターを切る。しだいに楽しくなってその場で大きく手を振りながらジャンプをし始めた清央くん。寒風にも負けない笑顔がはじけている。
「清央くん、後ろを見てみて。あれ、なんだろ?」
「なにあれー!」

 

 清央くんが振り返ると、アイヌの民家を模した『チセ』風の建物が建っている。同記念館の敷地内にはアイヌの人たちとの交流も深く人望のあった徳内にちなみ、彼らの暮らしの様子を紹介する資料館が設けられているのだ。その建物前の広葉樹に、本物そっくりに拵えてある子どものヒグマの模型が置かれている。小熊らしく表情が丸く愛らしい。置物に駆け寄ると、その隣にストンと腰を下ろした清央くん。ヒグマの模型をじっと見つめた後、そっと肩を組んで頰を近づけた。まるで仲良しの友だちを見つけた時のように。心なしか仔熊の表情も柔らかく嬉しそうに、秋の日差しを照り返していた。

 

ヒグマの模型と一緒に「チセ」の前で。

 

2020年12月号(194号)アイヌ文化の残り香を探しに。
奥山清央くん(4歳)
表紙撮影協力/最上徳内記念館(村山市)

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