だれかの散文

加藤紀子@山形

2016.6.3

第2回:おかひじき


「トゥルントゥン食感が美味しい、腰掛庵のわらび餅食べたいなぁ」今日の午後、ふとそんな事が頭をよぎりました。天童に住んでる訳でもないのに、なんなら三重出身なら「伊勢の名物、赤福餅が食べたいじゃないか」と思ってもおかしくないのに、わらびが美味しい季節だからですかね、何の前触れなくあの食感と味を口が勝手に思い出しておりました。

 

そんな食いしん坊な私、4年程前にテレビの番組で野菜作りをやらせて頂いたのをきっかけに、そのまま農家さんの畑の一画をお借りしてせっせと野菜作りを学び、励んでいます。自分で育てる野菜はどこまでも愛おしく、これまでなら何も考えずにサヨナラしていた葉や皮も残さずに食べようと努力したり、季節毎の種撒きや苗植え、虫との戦い(低農薬なので遠慮なく虫がいたりします)などの作業は、仕事にはない『無心』になれる楽しさがあり、やればやるほどその魅力は深まるばかりです。

 

先日、夏野菜を植える準備として土を起こしておりました。茄子、トマト、キュウリ、枝豆、とうもろこしをどこに植えようかねえ?その前にチビチビ生えている草を抜こう・・としたその時、「これ、草じゃない!!」奇跡の再会が訪れました。

 

2年前のある日、山形でロケ途中に寄ったセブンイレブン(あれは長井だったかなあ?)の入り口に野菜の種が売っていて、どんな野菜の種があるのだろう?と覗いてみると「おかひじき」と書かれた見た事のない種が置いてありました。山形在住スタッフに尋ねると「ああ、美味いっすよ」と当然知ってますの顔。育て方をチェックするも特に難しい点がなさそうだったので、食べた事もないけどこれは何かの縁だ!トライしてみよう!と種を買い、早速畑へと向かいました。

 

畑師匠からは「凄く増えるから蒔くのは少しで大丈夫」とアドバイスを貰いましたが、食べた事もなければ育てた事もないおかひじき素人、教えられたよりも少し(貧乏性で欲張り)多めに蒔いて様子を見ることにしました。

 

その間に出来る事として“おかひじき”のリサーチ。まずはスーパーでは幾らで売られているのかを見るとなんと300円!高級!そんな“おかひじき様(急に低姿勢)”をどのように頂くかレシピを検索すると『どんな料理でも楽しめます』と振り幅広く、凄いじゃないですか、“おかひじき様”!

 

高級食材を無駄にする訳にはいかないなあと空を見上げ待つ事数ヶ月、畑に行くとついに“おかひじき様”がツヤツヤと輝く深緑色のお姿で私の到着を待っていてくれました。

 

収穫する手触りは柔らかく、摘んだ瞬間にはフレッシュで青苦い香りが鼻先に。「やっと会えたね」と家に連れて帰り、最初は定番と聞くお浸しで頂きます。シャクシャクとした食感は噛むのも楽しい!確かに“おかひじき様”自体にそれほど味のクセがない分、どんなアレンジも楽しめそう。新しい出会いに胸を踊らせ、畑に行っては収穫し、収穫しては食べ、また収穫して食べて・・と数回繰り返すうち「増え過ぎじゃない・・か・・な・・?」。

 

小さな種からデビューしたはずが、いつしか幹は昔お土産として流行った太鉛筆ほどとなり、気がつけば遠慮なくワサワサと葉が広がり続けるマイレボリューション。それでもせっかくのご縁だと食べ続け、いよいよ旬を終えたと思えば、最後は葉が固くなり油断するととがった葉先が腕や足やお尻に刺さるという“おかひじき様”のお戯れ。

 

ごめんなさい、わずか2ヶ月ちょっとで完全に食べ飽きました。ペペロンチーノ風に炒めてみたりサラダにしたり素麺と一緒に、または刻んで納豆に・・夫婦二人で色々手を尽くして楽しみました。だけど、もう完全に飽きた!種蒔きすぎたせいで飽きた!なんならもうしばらく“おかひじき(様なんて言ってひれ伏した日が懐かしい)”は育てなくていい!と決めて全ての収穫を終え、存分に楽しませてくれた“おかひじき”とサヨナラしました、サヨナラしたはずでした・・。

 

おかひじきを見るたびに私は山形を思い出します。あの日種を手に取って喜んだ日を思い出します。初めて食べた味も思い出します。今年も私と山形を繋ぐ存在が静かに芽吹いたようです。

 

どうぞどなたか、私に“おかひじき“レシピ、送って下さい。


加藤 紀子

プロフィール:

加藤紀子

92年に歌手デビュー。歌番組やバラエティー番組、ラジオなど幅広いメディアで大活躍するさなか、2000年より芸能界を休業し、パリへ語学留学。2002年に帰国し、芸能活動を再開。現在は、東海テレビ「スイッチ!」、NHK-FM「トーキング ウィズ 松尾堂」にレギュラー出演など幅広く活躍中。

加藤紀子ブログ「加藤によだれ」
http://ameblo.jp/katonoriko/

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