だれかの散文

2016.9.8

第5回:私の中のゼロ成分


前回からnaohigaさんというイラストレーターの方がこのページの題字と挿絵で私の拙い文章を強力サポートしてくださることになりました。絵心が悲しいほどにない私、そんな贅沢をお願いできるなら・・と甘えてみたら、なんとも優しく柔らかいタッチに仕上げてくださいました。今年の冬、味噌作りをしに行った山形県長井にある農家レストランのワンシーンをデッサンしてくださいました。この出来事がここでこうしてつながるなんて、まさに山形の輪!

 

そう、先にも書いたよう私には絵心というものがありません。

 

お家には大好きな安西水丸さんの絵本やカード(一度ラジオでご一緒させていただいた水丸先生は穏やかで可愛らしい少年のような方でした)、フランスの画家サヴィニャックや白根ゆたんぽさん作品が各部屋に飾ってあったり、ブログヘッダーも鹿児島在住の仲良しイラストレーターさんにお願いして描いて頂くくらい絵に興味があるのになぜに本人の絵心がない!

 

ただ、絵心がないというのはやれやれだし何かの折にみんなの前「絵、下手っ!」と笑われれば済むだけなので個人的には問題ないといえば問題ないのだけど、この他に私には“運動神経”というものがなく、これが問題。

 

気がついたのは5歳頃。酔った親戚が私を「後ろ返りだー!」と後転させた時、経験したことのない痛みを背中に感じ「曲がらないな、硬いな」と思った記憶。その後、運動会でのかけっこは必ずビリ、マラソン大会も同じく(ちなみに地元鈴鹿ではマラソン大会本番には鈴鹿サーキットのレーシングコースを走るというレース好きにはたまらないイベント。苦手な私にはあの起伏が悲しかった)。「走る意味って何?運動って美味しいの?」とふてくされ、と高校生の時には体育祭を嘘ついて休むほどになりました。

 

時は過ぎ、かれこれ10年ほど前。運動よりも音楽好きに育った私は実家で母の車を借りて海へ行き、カーステレオでベル&セバスチャンというグラスゴー出身のバンドのアルバムを爆音で聴いていました。好きなバンドのニューアルバムはファンにとっては宝物、細かな音も聞き逃すまい!と穏やかな秋の海を眺めながら集中して聴いていました。その時どこかから「ピーピー」という機械音が聞こえ「なんだろな?」と見渡すと母の車脇から大学生ぐらいの男の子がお腹を抱えて走って行きました。「どんぐりでも拾ったのかな?」と微笑ましく見ていると、や、や、や、助手席に置いてあった私のカバンがない!ドアを開けて今、私のカバン持っていったんだ!車上荒し!!

 

ダッシュでした、人生初のダッシュでした。こんな時こそ神は私にダッシュ能力を与え、まるでウサイン・ボルトみたく風を切って走り、カバンをガッツと掴んで取り返し、「盗みなんていけないよ」と大学生を諭す・・ことすら出来ないほど、足遅っ!足を前に前に出しているのにちっとも進みやしない!スローモーション並みに景色ずっと一緒!

 

みるみるうちに大学生と私の全部が入ったカバンは遠ざかって行ってしまいました。

 

そんな経験をしたり歳を重ねるにつけ、もう少し運動神経があればなあ・・と思うこと多々。そろそろamazonあたりで売ってくれないかなあ?なんて思うわけです、スポーツの秋に。


加藤 紀子

プロフィール:

加藤紀子

92年に歌手デビュー。歌番組やバラエティー番組、ラジオなど幅広いメディアで大活躍するさなか、2000年より芸能界を休業し、パリへ語学留学。2002年に帰国し、芸能活動を再開。現在は、東海テレビ「スイッチ!」、NHK-FM「トーキング ウィズ 松尾堂」にレギュラー出演など幅広く活躍中。

加藤紀子ブログ「加藤によだれ」
http://ameblo.jp/katonoriko/

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