だれかの散文
「なんで突然?」 パリ留学を決めて世に発表した時、周りからこうビックリされ、「私の中では結構前から決めてたんだけどなあ」と心でお返事していたのだけど、昨日の現場で久しぶりに同じセリフを聞きました。
「なんで突然?なんで今?」
そうなんです、なんで今だかなのですが、コンタクトレンズレビューしたんです、私!!
中学3年だったか、歌手とメガネに憧れていた私はテレビをかぶりついて観ていました(中でも出てみたかったのが『オレたちひょうきん族』でやっていた「ひょうきんベストテン!」。ひょうきん族メンバーが歌っている歌手をとにかく笑わせようと企むコーナーで、歌手の方の普段の顔が垣間見れたり、双方の駆け引きだったり、歌も笑いも一緒に楽しめて大好きだった)。そうしたおかげで(おかげなのか?)両親に歌手になりたいという意思を伝えることが出来た上に、視力が悪くなったことでメガネを買ってもらうことも出来ました。今思えば「そんだけメガネが掛けたいならダテメガネで良いじゃないか?」とナイスな解決策があるのに若い私、体当たり。
そこからの私の人生、「ひょうきんベストテン」には間に合わなかったけど、歌手デビューなんて奇跡が起こり、テレビに出る機会が与えられ、様々な場面を言葉で伝える仕事を任されるようになりました。一方でテレビにメガネで出演するのはちょっと・・出来れば外してもらえると反射もしないしお顔が分かりやすくなりますし・・的な雰囲気がどの現場にもあり、「のりちゃん、コンタクトレンズってのがあるよ」と勧められ、なけなしのお金でハードコンタクトを買ってみるも「目がグリグリする感覚苦手!無理!」と早々に諦め、仕事は裸眼、プライベートはメガネと切り分けて過ごすことになりました。
大半の現場では問題なく、何ならクリアに見えないことで緊張が緩和したりもしてラッキー!と思う事もあれば、スタジオでADさんが出してくれるカンペの文字が見えなかったり、スタジオで流れるVTRが見えづらく、必死に見ようとして目を細めるため眉間にシワが寄り、なんとも人相の悪い顔がテレビに映ってしまう事や、ロケなんかで「見てください、あの素晴らしい絵画!」と紹介されても細かなディティールなどすぐには掴み取れず、薄ぼんやりとしたコメントしか発せないことも幾つかあったなあ・・(ってことは問題あったんじゃないか)。
透明の薄いレンズを装着するだけで世界がこんなにクリアに見える喜び。
メガネにより全ての視界がはっきり切り分けられていた暮らしからのさよなら。
ラーメン屋に入った時、湯気でメガネが曇り、コントみたいになる恥ずかしさからの脱却。
3D映画でメガネ オン メガネで見え方の正解が分からず楽しみ半減からの卒業。
改めて山形の景色をこの目で見てみたい。
メガネフレームに切り取られない山形を、
輪郭のある山形を、
熊野大社の本殿に隠れている「三羽のウサギ」をお手伝いされずにこの目で探してみたい!
私にとって新しい山形!!
にしても『なんで今、私??』
43歳、遅ればせながらのデビューです。

加藤紀子
92年に歌手デビュー。歌番組やバラエティー番組、ラジオなど幅広いメディアで大活躍するさなか、2000年より芸能界を休業し、パリへ語学留学。2002年に帰国し、芸能活動を再開。現在は、東海テレビ「スイッチ!」、NHK-FM「トーキング ウィズ 松尾堂」にレギュラー出演など幅広く活躍中。加藤紀子ブログ「加藤によだれ」
http://ameblo.jp/katonoriko/
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