だれかの散文
「 最近若い人たちはあまり進んでお酒を飲まないんだって」なんて話をたびたび耳にすることがあって、飲まずに過ごす時間は理路整然と物事を考えるには有効的だし、身体にもお財布にも文句なしに優しく言うことなしに健康的だと思う反面、それでもなんだかもったいない・・と思ったりしてしまう酒飲みの私。それは「こんなに美味しいものが飲めないなんて!」と味わえないことを嘆いているのではなく、「お酒を楽しむ場所での人との出会いやどうでも良さそうな笑い話がある日突然意味を持つことがある!」を知って欲しいからなのです。
だからとて、いつもそんなミラクルがあるわけではありません。基本的には好きなお店で好きなものをつまみながらダラダラ飲んで笑ってあぁ楽しかったと家路につくだけのシンプルな話。夫婦水入らずで、友達と、仕事終わりにスタッフと・・などシチュエーションは多様で様々。時々楽しいが過ぎて「お酒を知らない身体だったら・・」と二日酔いを反省することは多々あれど、それが過ぎれば楽しく乾杯、はい、おかわり!
「家でNetflix観てた方がリラックスするし」確かに。私もそういう日を必要とするタイプなのでその気持ちはよく理解できます。でも、一生のうちの1日のそのわずかな時間に「えいっ!」と出掛けて、お店の人オススメのワインを一口飲んでみたら!
畑から帰ると真っ先に野菜を綺麗にしてからお風呂へ、そこから収穫したての野菜をつまみにワインをちびちび・・これが畑の日の私のパターン。昨日もその流れで夜を楽しもうと泥のついた小松菜を洗っていると、「今夜DJするお店に美味しいナチュール系のワインがあるんだって」と夫。
小松菜を置き、髪を整え、お気に入りのオールインワンに着替えてヘイ、タクシー。気づけば夫についてお店に入っていました。がしかし我に返るとここは知り合いもいない小さなお店。「夫DJが終わるまでの4時間どう飲んでどう過ごせば良いか・・」所在なく携帯と戯れている時、「一杯目はこれがオススメですよ」と優しそうな紳士が声をかけてくれました。話を聞くとこの男性が“今が飲み頃”とオススメするワインを自宅から持ち込み、みんなで集まって味わおう!のパーティなんだそう。遠慮なくお声がけに甘え、オススメを頂くことに。シュワシュワと小さな泡の音を出しながらグラスに注がれる白ワイン。なで肩タイプのこのボトルはどこのだ?とエチケットを見せてもらうと、タケダワイナリー“サン・スフル 2015”!家でコルクを抜く時、中身が全部出そうなほど元気に炭酸が飛び出す美味しいやつ!10月に放送したNHK—FM「トーキング ウィズ 松尾堂」の“日本ワインが熱い!”の回でゲストに来てくださったワインジャーナリストの方もオススメして下さったやつ!
「どの年も美味しいけど、この2015年が特に美味しいんだよねえ」にこやかにワインを口に運び、丁寧にその美味しさをお話してくださるこの紳士こそ日本におけるナチュール系ワインの第一人者、勝山晋作さん!!「時が解決することがあるんだなー」しみじみそう言いながらワインを一口大切に味わってらっしゃいました。「ワインにも開けて欲しいタイミングみたいなのがあるんだよ、やっぱり」
その後グルジア産2011年白ワイン、フランス産1994年赤ワインなどを色々頂きつつ、勝山さんと山形のワイン蔵の話や(酒井ワイナリー、高畠ワインなど取材した話を聞いてもらった)、山形市内の美味しいワイン店を教えてもらったり、新庄のオススメラーメン屋さんを教わったりして盛り上がり、夫のDJ終わりで「もう一軒!」近くのヴァン・ナチュールのお店に移動することになりました。
Gatta11月号を手に「ワインのお話、どんなことが書けるかな?」と思案している矢先にこの出会い。そうだった、やっぱり「えいっ!」と出掛ければやはり意味ある時間に変わる・・つくづくそう感じながら、「山形へ遊びに行ったらまた足を伸ばしたい場所が増えた!」そんな嬉しい発見の夜ともなりました。

加藤紀子
92年に歌手デビュー。歌番組やバラエティー番組、ラジオなど幅広いメディアで大活躍するさなか、2000年より芸能界を休業し、パリへ語学留学。2002年に帰国し、芸能活動を再開。現在は、東海テレビ「スイッチ!」、NHK-FM「トーキング ウィズ 松尾堂」にレギュラー出演など幅広く活躍中。加藤紀子ブログ「加藤によだれ」
http://ameblo.jp/katonoriko/
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