だれかの散文
気がつくと全く1年ぶりの山形旅となっていました。毎月ここで山形のことをあれこれ綴っているので感覚としては「ちょっと間が空いたかも」ぐらいかと思っていましたが、JR山形駅に到着し、駅の横に停めてあるという友達の車へ向かおうと、これまで通りS-PALを抜けて・・ってS-PAL(駅直結ビル)のお店が一新!!改札を出た二分後、今にも欲しい、ずっと買いたいと思っていた山形素敵土産が2Fのフロアいっぱいに!“やみつきしみかりせん”も“丹野こんにゃく”も鈴木製麩所さんの“お麩”など山形の美味しいがズラリと並んでいて「もう買いたい!先に買ってしまいたい!」2018年上半期一の興奮で今回の山形旅はスタートしました。
「今年はいつにしようかね?」山形に住む仲間と連絡を取り合い、計画するのは味噌作り。長井市にある“なごみ庵”さんで農家レストランの取材をさせていただいたのをきっかけに、その翌年から味噌作り体験をやらせて頂いて早4年。「まずは麹をほぐすところからだったね〜」なんとなくの記憶を辿りつつ、一つずつ女将の菅野さんの指示を仰ぎながら楽しい作業は続きます。
「いつから私はこういう作業をするようになったのだろう?」ふとこんな疑問が頭に。17歳で三重県から東京に出てきたのは芸能界と言う場所でのお仕事に憧れての事だったし、語学の勉強をしてスキルアップがしたいとフランス留学を28歳で経験してみたり、目指す場所はいつも自分が仕事をしていく上での居場所だったはずなのに、いつ、どのタイミングで「自分の手で触って作って物を作ろう」の意識が芽生えたのだろう・・・。
5年前、テレビ番組のレポーターとして山形へ通うようになりました。2週間に一度やってきては山形県内を縦横無尽に動き回り、様々な人に会ってたくさんの経験をさせていただきました。
お米や野菜、果物を作ってらっしゃる方からは収穫の喜びを、
日本酒やワインを製造する工場では気候風土を知り尽くした視点から美味しくなる方法を、
民芸品を作る職人の方からはその技術の緻密さと伝統ゆえの誇りを、世界中で人気の家具メーカー“天童木工”さんでは貴重な工場見学を、「その素晴らしい技はどのような行程で?」手織じゅうたん“山形緞通”ではカーペットが始まる糸一本の秘密など、ありとあらゆるお話を聞かせていただく機会に恵まれ、撮影が終了すると「今回も良い取材だったー!知れて良かったー!」つくづくそう思うようになりました。というのもお会いした方々どなたも、難しい顔一つせずとても楽しそうで朗らかにお話をしてくださったから!
「大変だ」とか「なかなか難しいところもあるけど」なんて言いながらも、その作業全てに愛情をたっぷり持ってらっしゃって、どの角度から見ても清々しくキラキラが溢れていて、「物作りって自分の内面や心を育ててくれるのかも!私もみんなのように中から滲み溢れる笑顔の持ち主になりたい!」
勝手な思いかもしれませんが、今まで自分にはなかったであろう意識の持ち方を、行く先々の山形で、お会いした山形の皆様のおかげで育ててもらったような気がします。
今、「都内で畑やってるんです!」胸を張ってこう言えるのは物作りのかっこよさをじっくり見せてもらったおかげだし、その野菜を自分で作ったお味噌で頂けるのはなかなか心に贅沢なこと。そしてその味噌作りを一緒に楽しんでくれる仲間が山形にいてくれることは人生に於いてとても豊かで大きな喜びとなりました。
この味噌作りの模様は「gatta! 2018年5月号 #163号」本誌にて密着取材してくださったので(祝本誌初登場!)是非手に取って頂けたら・・と思いますが、このwebでの連載は今回を以って卒業させていただくことになりました。
訪れるたびに新しい発見がたくさんあって、
「あれ、カトさん、いつ来たの?」と馴染みのよう声をかけてくださる方がいて、毎回私の全てをしびれさせてくれる大好きな場所。
その山形から発信する「gatta」で2年も連載させて下さった編集部のみなさま、本当にありがとうございました。
素敵なイラストで花を添えて下さったイラストレーターのnaohigaさん、ありがとうございました。
そして何より、この「加藤紀子@山形」にお付き合いくださった読者の方々、きっと山形のどこかでバッタリお会いできる、そんな日が訪れることを楽しみに、お別れしたいと思います。
書かせていただいて本当に楽しかったです!
心より、ありがとうございました。
加藤紀子 春

加藤紀子
92年に歌手デビュー。歌番組やバラエティー番組、ラジオなど幅広いメディアで大活躍するさなか、2000年より芸能界を休業し、パリへ語学留学。2002年に帰国し、芸能活動を再開。現在は、東海テレビ「スイッチ!」、NHK-FM「トーキング ウィズ 松尾堂」にレギュラー出演など幅広く活躍中。加藤紀子ブログ「加藤によだれ」
http://ameblo.jp/katonoriko/
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