特集の傍流
空を駆ける、夢を手放さない。 ブルーインパルス隊長、遠渡祐樹さん。
ブルーインパルス隊長:遠渡祐樹さん
宮城県東松島市矢本
「私が小学生の時に庄内空港が開港しまして、毎日離着陸する飛行機を頭上に見ながら登下校していたんですね。それで必然的に飛行機が好きになり、パイロットという仕事に興味を持つようになりました」と遠渡さん。出身は山形県三川町だ。
少年時代に抱いた夢を追い続ける。言葉にするのは簡単だが、誰しもが叶えられることではない。
「飛行機が好きだという気持ち、興味がなくなった時期っていうのが、小学生の頃からこれまでで一瞬たりともないんです。小学生の頃は毎週のように庄内空港へ写真を撮りに行っていましたし、中学生になると自分で30分くらい自転車を走らせて行っては空を見上げていました。その頃から知っている同級生には〝夢が叶って良かったね〟と言われます。ええ、もちろん文集にもパイロットになりたいと書いた記憶があります」
ただのパイロットではない。遠渡さんはブルーインパルスの一番機に乗るパイロット、すなわち隊長なのである。正式には2020年6月から、航空自衛隊第4航空団第11飛行隊の飛行隊長1番機2等空佐という肩書きで、ブルーインパルスのドルフィンライダーたちを率いている。
技量だけじゃなれない要職。運やタイミングも味方につけて。
「ブルーインパルスのパイロットに選ばれるには、もちろん飛行技術や身体能力も必要ですが、それだけではありません。まず3年という任期が決まっていて、1年目は勉強および練習、2年目からが本番となります。ですので後継者へバトンを渡すのは、2年ごとズレることになります。パイロットのなかで腕のいい隊員はたくさんいます。ですがブルーインパルスは番機によって最高に難しい技を繰り出すポジション、そこそこ難しいポジションとか、担う役割が異なり、その席の空くタイミングと自分の技量とが合っていなければ選ばれないのです。隊長職に関しても同じで、前隊長は私の2期上、防衛大卒の先輩が勤めていました。その後継者として私が選ばれたわけですが、もしそれが1期下だった場合は選ばれていなかったと思います。ですので技量云々もありますけれど、タイミングによるところも大きいと思います」
遠渡さんは、60年あるインパルスの歴史のなかで2人目となる山形県出身の隊長だ。拝命する前までは、横田基地や市ヶ谷にある防衛省で7年間、デスクワークをこなしていたという。
「30代前半までは現場で飛んでいましたよ。じつは30代の時に一度、一般大、防衛大卒の若手が就ける2番機のポジションを目指したことがあったんです。でもその席は別の同期隊員が選ばれて私は叶わなかった。そこで残された道は一番機しかないと、必然的に隊長を目指しました」
遠渡さんが少年の頃に描いた夢は、この時点でまったく褪せていないことがわかる。タイミングや運さえも引き寄せた、まっすぐで強い信念。
ふるさと、山形への想い。
遠渡さんのタッグネームは「Cherry」。ドルフィンライダーになった時に自分で決めるのだそう。山形県出身者らしい、郷土愛を感じさせるネーミングだ。
「松島基地は山形県の隣、宮城県にあって、これまでの任地より実家が近いという安心感、東北の地に住めるということでの心に余裕というか、安定感はありますね。自衛隊に入って久しぶりに味わう経験です。地元に近いこの地で隊を率いる職を任せられたこと、とても幸運だなと感じます」と想いを寄せてくれた。
2021年の山形上空で遠渡隊長率いるブルーインパルスの勇姿に会える日を、心から願わずにはいられない。

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