特集の傍流
牛は湯殿山大神の化身であり、願いをかなえてくれる神様でもあります。
里之宮湯殿山神社 宮司:澁谷宣寛さん
山形県山形市
旧県庁舎である「文翔館」の門扉前にはかつて、月山の方を向いて建つ小さな祠があったという。当時は交通の便が悪く、内陸から出羽三山に詣でることは容易でなかったため、人々はその祠にお参りしていたのだ。当時、それを聞いた初代山形県令・三島通庸が新庁舎建設の際に勧請し、湯殿山本宮の分霊として建てられたのが『里之宮湯殿山神社』である。

初詣の際には多くの参拝客が列をなす『里之宮湯殿山神社』。境内には「願い牛」をかたどった絵馬も。

出羽三山の奥宮『湯殿山神社本宮(写真上)』から明治9年に分霊を勧請し、旅籠町2丁目(現山形市役所)に祀られたのが由緒。本宮は冬季閉山されるが、『里之宮』では2月4日の立春までは初詣ができる。
撫でると願いが叶う不思議な御牛さま
湯殿山の開山が丑年丑日であったことから、牛は湯殿山大神の化身として崇められている。湯殿山は甦りの山ともいわれ、安産のご利益があることで知られているが、ここの「願い牛」は民間信仰から生まれたご利益がある。その昔、長年子供に恵まれずに悩んでいた女性がお参りをしたところ、子どもを授かった。その体験談が人から人へと伝わり、いつしか「子授けの神」として信仰を集めるようになった。

参道右手に御鎮座する「願い牛」。子授けだけでなく自分の体の良くなってほしい部分と同じところを撫でると良くなるといわれる。コロナ禍のため、参拝する時期によっては直接触ることは禁じられている可能性も。今は静かに手を合わせよう。

丑年御縁年を記念して発行された特別な御朱印。今年限定の華やかなデザインで、ぜひ手に入れたいところ。
また、「初市」の守護神・市神様も合祀されている。江戸時代に十日市の要石として立っていた安山岩が御神体で、商売繁盛の恵比寿神として崇敬されている。

湯殿山神社ともに昭和58年に遷座。御神体である安山岩は通常は見ることができない。

市神神社の社紋は「かぶ」。1月10日の初市では、かぶ汁が振舞われる。
今年は湯殿山の丑年御縁年。お参りをすると12年分のご利益があるといわれている。『里之宮湯殿山神社』の宮司を務める澁谷宣寛さんに丑年の心がまえを伺った。
「丑の季節は冬、丑の刻は午前1〜3時。ゆっくりと身体を休めて待つ時期であり、夜が明ける一歩手前なんです。ですから丑年は、忍耐強く黙々と頑張りながら夜明けを待つという年巡りではないでしょうか。
私たちはコロナ禍によって『足るを知る』ということを教えられているのだと思います。際限のない成長や富を求めるのではなく、現在の幸せに感謝をする。家族と一緒に過ごし、絆を感じることで互助の精神を学んでいるのです。本来、参拝というのは神様にお願いごとをするものではなく『報恩感謝』の祈りなんです。
いまは不自由を強いられて辛いかもしれませんが、しばらくはじっと耐え忍ぶとき。そうすることで、また新しい希望に満ちた時代を迎えられるのです。『牛の歩みも千里』ということわざがありますが、一歩ずつ歩いていけば千里の道も辿り着ける。少しずつ積み重ねていくことでいつか大きな成果をあげられるという例えです。大変な時代かもしれませんが、地に足をつけて生きていけば、夢や目標を達成できるのではないでしょうか」
今年は焦らず、牛のような大様さをもっていまあるものに感謝しながら過ごすことを心がけよう。光射す日は近いと信じて…。
里之宮湯殿山神社)山形県山形市旅篭町3-4-6 TEL /023-633-1810 http://yudonosan.jp
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