特集の傍流

2021.2.10

感謝の気持ちが紡ぎ出す、“本物”のスイーツたち。

2021年3月号(197号)やまがた貯古齢糖考
アンドリエス・ドニスさん、清水憲子さん
山形県北村山郡大石田町

 フランス出身のアンドリエス・ドニスさんと大石田町出身の清水憲子さん夫妻が「地元食材の素晴らしさや地元への感謝の気持ちを伝えたい」と、2019年にオープンさせた『AndMERCI KURA Oishida(アンドメルシィ クラ オオイシダ)』。原材料や環境にこだわり抜いた2人が届ける“本物”のスイーツを求めに、地元のみならず、仙台や新潟など県外からもリピーター客が絶えない。新型コロナウイルス感染症の蔓延や豪雨による水害などで休業が重なったなかでも、常連さんは「また来るから」と励ましにきてくれたという。2人の思いはオープン当初から変わらず「周りの人たちの助けや繋がりに感謝し、おいしいスイーツを届けたい」その一心だった。

 

 大石田には以前から夫婦で訪れており、その土地に触れ、食材に触れ、素晴らしさを実感していたアンドリエスさんは、自らのスイーツで地域を盛り上げていきたいと出店を決めた。
 出店するからには、できるだけ地域と共創していきたいという思いがあった2人。ケーキやタルトに使う素材の選定は、自らが進んで農家に何度も足を運び、直接交渉したという。畑のど真ん中で生産者と対話し、熱意やこだわりをまっすぐに伝えた。庄内のメロンや神町のいちご、最上のラズベリーなど、その数は約25社にも及び、生産者が「自分が一生懸命育てた果物がお菓子になって返ってきた」とスイーツを喜んで食べる姿に元気をもらったという。更なる“地産地消”を目指して、大石田産のさつまいもや豆類を使ったパウンドケーキも構想中だ。
 果樹王国山形が誇る果物もそれぞれに旬があり、収穫できる時期は決まっている。それでも、できるだけ通年で長いシーズン味わってほしい、との思いから雪室でりんごやラ・フランスを保存する試みも。「繊細だからこそ難しい、でもそこに挑戦する価値がある」とアンドリエスさんは語る。

 

アンドリエスさんは22歳の時に来日し、東京で活躍。桜を眺めるのが好き、と日本人よりも日本人らしい感性を持つ一面も。

 

 チョコレートは、高品質と名高いフランスのヴァローナ社の原料を使用し、パウンドケーキやトリュフなどに活用。本場フランスから輸入したショコラも常時販売している。今後はチョコレート工房を構え、フランスのショコラティエの指導のもと、すべて自家製の品を並べる予定という。

 

バレンタインに向けた新作のラインナップ。口溶けの良いトリュフはフランス産のラム酒が効いた大人の雰囲気。

 

小枝のようなオランジェットは、口に含んだ瞬間にオレンジピールの華やかな香りが広がる。バーショコラはキャラメリゼしたヘーゼルナッツをあしらったものと、チョコレートの甘さをより引き立てる甘酸っぱいフランボワーズのソースが入った2種類。

 

 また、アンドリエスさんのこだわりの一つとして、お店には常にその日に作った新しいものが並ぶ。毎日売り切り状態のため、閉店近くになると品薄になることも。それでもスイーツを求めて足を運んでくれる人たちのために、ケーキの取り置きや予約もできる限り対応しているとのこと。

 

県産フルーツをふんだんに使ったケーキやタルトが並ぶショーケース。都会的で煌びやかな佇まいのスイーツたちに思わず目移りしてしまう。

 

 清水さんは、会社の代表取締役として「“亀の歩みでも決して立ち止まらない”をモットーに、できるだけ長く持続できるお店を目指している」と話す。店舗経営に関しては全くの初心者だった清水さん。20数名のスタッフを抱える責任者として、働く環境を整えるために、スタッフ一人ひとりと向き合い、様々な本も読み、経営者としての勉強に励んだ。試行錯誤しながらも、一つ一つの課題をクリアしていく過程にやりがいを感じているという。お店に並ぶスイーツや働くスタッフの姿に魅せられて、お店に通う人のなかには「ここで働かせてくれませんか」と直談判するかたも現れるようになるほど。清水さんの次なる目標は、ネット販売への参入。コロナ禍における今だからこそ、全国どこにいても『アンドメルシィ』のスイーツが楽しめるように、焼き菓子などを提供していく予定だ。

 

過去に通訳の仕事もしていたという清水さん。もちろん夫婦での会話も流暢なフランス語で。

 

 店は平日でも客足が絶えず、なかには店舗建設に携わった地元の大工さんの姿も。すっかり常連のようで、アンドリエスさんと軽快に挨拶を交わす。次々訪れる人たちはショーケースいっぱいのケーキやチョコレートに目が輝き、顔を綻ばせている。「どれにしようかな」と、世界一幸せな悩みを抱えながら。

 

元々あった産直施設をリノベーションした蔵づくり風のお店。スイーツの詰まった玉手箱をイメージしたという。

 

AndMERCI KURA Oishida)山形県北村山郡大石田町豊田884-3 あったまりランド深堀 敷地内
営業時間/10:00〜18:00(月・火曜 休)TEL / 0237-48-7533  http://andmerci.info

 

※掲載している商品については実物と異なる場合があります。来店の際は公式情報の確認をお願いいたします。


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