特集の傍流

2021.2.12

甘美な香りに誘われて、宝石のような一粒と出合う。

2021年3月号(197号)やまがた貯古齢糖考
オーナーパティシエ:森谷禎輝さん
山形県山形市

 車を降りた瞬間に、甘い香りが出迎えてくれる、文翔館裏のパティスリー&ショコラトリー『kotonowa』。「実家がこの近くで、近所の人たちに育ててもらった思い出があります」とオーナーパティシエの森谷禎輝さん。自分が育った地元に恩返しの気持ちを込めて、2016年に馴染みの地に店を構えた。オープンから4年経った今では平日でも老若男女の客足が絶えない人気店となっている。

 

白を基調としたクリーンな雰囲気に木のしつらえがあたたかみを感じさせる店内。

 

 内装やパッケージ、ケーキのデザインは森谷さんの奥様が中心となり構想、夫婦二人三脚で店をつくり上げてきた。シンプルで上品なパッケージは贈答用にも喜ばれており、焼き菓子を中心にしたギフト商品は価格帯のバリエーションを増やすことでさまざまなニーズに答えている。

 

チョコレートはもちろん、蜂蜜の風味ゆたかな「コトロール」や「コトプリン」も人気。

 

 森谷さんがパティシエの道を本格的に意識するようになったのは高校卒業の時。工業高校出身ということもあり、同級生はエンジニアなどに就職した。当時は美容師やデザイナーなどアーティスティックな職業も世間的に注目されているなか、両親が中華料理屋を営んでいた影響から、自然と飲食と芸術的な職業両方の意味合いを持つパティシエになりたいと思うようになったという。
森谷さんは専門学校には通わず、20歳の頃に知り合いの伝手を頼って茨城の洋菓子店に弟子入り。そこから16年間の修行期間のうち、2年は本場ベルギーで学んだ。「専門学校卒には絶対負けないぞという思いはちょっとありましたね」と柔道部仕込みの熱い思いがちらりと覗く。当時の部活の顧問からは異色な進路だと笑いながら背中を押されたが、そんなギャップも自分のモチベーションにつながっているそうだ。

 

 店名にショコラトリーと銘打つように、店の一つの柱となっているチョコレート。一粒から購入できるボンボンショコラはもちろん、いわゆる生チョコの「パヴェ」など、森谷さんが本場ベルギーで学んだ本格的なチョコレートが一年を通して楽しめる。ほかにもバーやタブレット型などバレンタインに向けてますます賑わいをみせるショーケースに思わず眺めているだけで心が躍る。フランボワーズやラベンダー、ライチ、紅茶にシトロンなどラインナップも豊かに揃い、艶を纏ったボンボンショコラは、まさに宝石のよう。ケーキは「“これぞスイーツ”といった甘みを感じながらも、飽きが来ないよう、さっぱりと食べれるように意識している」という。親しみやすさと特別感が共存した味わいにリピーターが生まれるのも納得だ。

 

カラフルなボンボンショコラは見た目も華やか。シンプルかつ高級感のあるパッケージが一粒一粒の輝きを引き立たせている。箱売りは4個入りから。

 

最後まで飽きずに食べれる甘さが嬉しいチョコレートケーキも見逃せない。

 

口のなかでとろける「パヴェ」。シンプルな見た目とは裏腹に濃厚な味わいが魅力。

 

 「本当は近所の駄菓子屋のように、小学生からお年寄りまで気軽に来ていただける、地域に馴染んだ店を目指しているんです」と優しい眼差しが印象的な森谷さん。来店した一人ひとりの顔を見て丁寧な挨拶を交わす姿勢に実直さを感じる。「嬉しいコト、悲しいコト、感謝したいコト・・・いろんな『コト』が人と人とを結び広がってく人と人『ノワ』。そうした繋がりに関われる喜び、過ぎゆく大切な日々の役に立ちたい」と名付けられた『kotonowa』。森谷さんが贈るあたたかなスイーツは、これからもきっとさまざまな人の縁を結び、仕合わせの輪を広げてくれることだろう。

 

kotonowa)山形県山形市旅篭町3-3-41
営業時間/10:00〜19:00(火曜ほか月2回 休)TEL / 023-609-9344


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