特集の傍流

2021.3.24

紅花交易で育まれたおもてなし文化の継承者たち。

2021年4月号(198号)舞子と舞娘。
やまがた紅の会 ことりさん、小雪さん、すみれさん、マネージャー 渋谷由希さん
山形県山形市

 かつて紅花の一大産地として栄えた山形。江戸時代には京都や大阪との交易が盛んに行われ、上方の文化がここ山形にも面影が残っている。「料亭文化」もそのひとつであり、山形市の「やまがた舞子」や酒田市の「酒田舞娘」が現在も活躍している。

 山形市中心街に現れ、煌びやかにもてなす「やまがた舞子」。山形商工会議所や山形市などの指導のもと、1996年に地元企業27社が設立した「やまがた紅の会(山形伝統振興株式会社)」が運営母体となっている。現在はことりさん、小雪さん、すみれさんの3名の舞子のほか、2名の芸子が在籍中だ。「料亭でお座敷遊び」というと、高価なイメージがあるが、基本は舞子1名・1座席・1時間で1万2000円と比較的親しみやすい料金で依頼できる。

 

地元企業と行政が一丸となって支える山形の料亭文化。郷土の旬味と風格漂う歴史ある空間に、やまがた舞子の芸や会話がより一層華を添える。(写真提供:山形伝統芸能振興株式会社)

 

目元に紅を指すことは「魔除け」と考えられている。古来より朱は穢れを祓い魔除けの色として使われてきた。

 

化粧はほぼひとりで行う。仕上げに紅をさし、艶やかな舞子姿へと変身。

 

柔らかな笑顔と上品な雰囲気を纏ったすみれさん。菜の花の簪は季節柄に合わせて取材日が初のお披露目。

 

 素顔の彼女たちは、街なかを行き交う同世代の子たちと何ら変わりないように見える。しかし、時折垣間見える、楚々とした所作や柔らかな言葉づかい、可憐な表情に「やまがた舞子」たる所以を感じざるを得ない。ことりさんは、高校生の頃に花笠まつりで見た舞子さんの姿に憧れ、すみれさんは姉であることりさんの影響を受けてこの世界へ。小雪さんは幼少期から日本舞踊を習い、出身の上山市で行われている「踊り山車」に出演していた舞子さんの姿をみたことがきっかけで志したという。夢を叶えた3人は目を輝かせながら「舞子の仕事は楽しい!」と口を揃える。
 研修や日々の稽古では舞踊や三味線だけでなく、華道やお裁縫、英会話なども学ぶことができ、教養も身に付く。さらに山形のことに詳しくなり、コミュニケーション力も鍛えられ、舞子としての多様な経験が自らを成長させてくれた、と充実感を滲ませていた。

 

体を動かすことが好きな小雪さん(左)。オフの日はボルダリングやスノーボードを楽しんでいるそう。ことりさん(右)は、明るく場の雰囲気を盛り上げるおしゃべり上手。美容やおしゃれも大好きとのこと。

 

すみれさんの休日はペットとゆったり時間を過ごす。1日3回散歩に行くことも。最近はNetflixでドキドキするミステリーやサスペンスにハマっているそう。

 

 かつてご自身も山形舞子として活躍した経歴を持つマネージャーの渋谷由希さんは「着物や日本の伝統文化に興味があるなど、舞子を目指す動機は人それぞれ。芸の稽古や接客経験などを通して、立ち振る舞いがどんどん磨かれて内面から輝いていく、それがやまがたの舞子の魅力のひとつだと思います。」と話す。「やまがた舞子」は前述の山形伝統振興株式会社に所属する会社員。給料は基本給+歩合給で、20代のOLさんと同じくらいだそうだ。経験、資格は必要なく、活発で気配りができ、人と話すのが好きな人は大歓迎とのこと。

 

マネージャーの渋谷さんは芸子として現在も活躍中。かつて舞子として学んだ経験がいまの仕事にも活きているという。(写真提供:山形伝統芸能振興株式会社)

 

 「やまがた舞子」は山形の観光大使として県や市のイベントに出演することもあり、時には他県や海外にも赴く。彼女たちは宴の席に華やかさを添えるだけではなく、日本古来の美意識の象徴として、伝統芸能の魅力と価値、地域の魅力を伝える役目も担っているのだ。
 山形の料亭・舞子文化は紅花交易の歴史により育まれてきた希少な観光資源でもある。私たち県民にとっても頼もしく、誇るべき彼女たちの存在を、絶やすことなく後世にも受け継いでいきたいと願うばかりだ。

2021年4月号(198号)
舞子と舞娘。

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