特集の傍流

2021.6.30

やまがた水伝説 その弐 白川湖水没林

2021年7月号(201号)水に導かれて。
いいでカヌークラブ
山形県西置賜郡飯豊町

いまなお森に眠る小さな五輪塔。それは身分違いの恋の果て-。

 

ほんのひととき現れる白川湖水没林

 4月中旬から1ヶ月半ほどの期間限定で広がる神秘的な風景。雪解け水が流れ込み満水の時期を迎えた飯豊町の山懐、白川湖畔の水没林だ。新緑に輝く飯豊連峰と、水面を天然の花器に見立てて生けられたように佇むシロヤナギの姿。初夏の風が吹くたびに揺れる湖水の表情は青から緑の間を絶え間なく行き来している。

 

いいでカヌークラブでは、5月中旬頃まで湖の中をめぐるカヌー・SUP(立ち漕ぎパドルボード)体験を提供。見渡す限りの緑が心身を癒してくれる。

 

カヌーを漕ぎながらヤナギ林の間をクルージング。水没林の見頃を過ぎた6月からは中津川橋のふもとに場所を移し、また違った景観を楽しむことができる。

 

鳥のさえずりを聞きながら大自然を満喫する贅沢な時間。カヌーは漕ぎ方を1から丁寧に教えてくれるため、初心者や家族連れでも安心だ。

 

湖面に映る青空に癒されながら、ここでしか味わえない絶景に飛び込む。期間限定という特別感も相まって、シーズン中は訪れる人が後を絶たない。

 

 ここ白川湖岸公園の白川ダムが治水と灌漑を目的に整備され完成したのは1981年(昭和56)のこと。きっかけは1967年(昭和42)に発生した羽越豪雨だ。そしてこのダムの建設に伴い、14あった集落の117世帯が水没した。その地区のひとつ、須郷に伝わる恋物語を紹介しよう。

 

悲恋の少女ヶ淵と五輪塔の由来

 上杉藩城下から遠く離れたこの郷の寺・大乗院に、あるときひとりの若い侍が預けられた。その寺の近くには大檀那、山口太郎兵衛の家があった。山口家には15、6になる美しい娘がおり、いつしかふたりは人目を忍ぶ恋仲となっていた。しかし武士が活躍するこの時代に身分違いの契りは許されない。2年ほど経ち若侍は城下へ呼び戻され、娘は悲しみのあまり病の床に臥してしまう。

 

 時は流れ、5年の歳月が過ぎた頃、大乗院に行脚僧がひょっこりと訪れた。それは変わり果てたかつての若侍であった。刀を捨てて僧侶となったものの心の底にわだかまりが残り、再び須郷の地へ赴いたという。けれど娘はその1年前に憂世の無常を儚みながら淵へ身を投げてしまっていた。若い僧侶はせめてもの供養にと、一基の五輪塔を刻み、それが終わると再び旅立ったという。娘が投身した淵は五輪橋の下流100mほどのところにあり「少女ヶ(おとめが)淵」と呼ばれていたそう。五輪塔はかつての主要道路に近い森のなかにひっそりと佇んている。それはまるで、湖底に沈んだ記憶の一片を伝えるかのようだ。

 

 

白川湖水没林(飯豊町)

飯豊町中津川地区にある人工湖に広がる季節限定の絶景。白川ダム湖岸公園までJ R手ノ子駅(米坂線)から車で25分。(取材は5月10日前後の白川ダム湖岸公園にて。)カヌー・SUP体験の詳細・予約は下記リンクから。

〒999-0424 山形県飯豊町数馬

 

いいでカヌークラブ公式ホームページ

https://www.iide3.net

2021年7月号(201号)
水に導かれて。

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