特集の傍流

2021.7.1

やまがた水伝説 その四 胴腹の滝

2021年7月号(201号)水に導かれて。
鳥海山・飛島ジオパーク
山形県飽海郡遊佐町

左右に分岐する水は、その味わいも異なるという-。

 

名水が渾々と湧き出す、清涼で厳かな潜流瀑

 古来から湧水の宝庫であり、「水の郷百選」にも選ばれている遊佐町。鳥海山の山麓、標高240mに位置する『胴腹の滝』は地域住民の生活を支える水汲み場でもある。その形態は、伏流水などが崖の中腹から湧き出ている滝、潜流瀑(せんりゅうばく)だ。苔むした岩肌を縫うように清らかな水が流れ、ふたつの筋状の滝が小さな社を囲んでいる。荘厳な雰囲気をまといながらも、平日でも次々と人々が訪れ、暮らしに寄り添った一面を覗かせていた。

 

駐車場から程なく歩くと、杉林の中に鳥居が現れる。古からこの地が守られてきたことを感じさせるような佇まいだ。

 

側を流れるせせらぎの音に導かれながら、杉林のなかを進む。

 

 鳥海山の山腹、まさに身体の胴「どうっぱら」から水が湧き出ていることから名付けられた『胴腹の滝』。中央の社は『胴腹瀧不動堂』で「子安大聖不動明王」が祀られており、安産の神としても崇められてきた。

 いまからおよそ250年前の江戸時代に、鶴岡の注連寺で修行した行者、宝雲海がこの地に帰依し更なる修行を重ねたという。月日が流れ、その子である法寿の手によって朽ちたお堂は再建され、八日町地区に住む高橋家が代々守り継いできたそうだ。水の恩恵を受けてきた人々の感謝の気持ちが、綺麗に維持された滝の姿に表れている。

 

人々の生活を支える伏流水、左右の味の違いとは

 活火山である鳥海山は、約60万年にわたって何度も噴火を繰り返し、火口から流れ出た溶岩によってつくり出された。『胴腹の滝』の周囲は、約10万年前に山頂付近から流れ出た溶岩で構成されているという。雨水や雪解け水が溶岩内の割れ目に浸透し、長い年月をかけて私たちに澄んだ水をもたらしてくれるのだ。

 

汲んだ水はまるで氷で冷やされたかのように冷たい。この水で淹れたお茶やコーヒーは格別だそう。

 

『胴腹の滝』から湧き出る水は、硬度が11mg/ℓ、ミネラルを主とする蒸発残留物も40〜50mg /ℓと少なく、淡白で癖のない軟水とのこと。湧水は殺菌をしていない生水のため、飲用する場合は、煮沸消毒をするとより安全だ。

 

 左右2箇所から噴き出している湧水は、それぞれ味が違うといわれる。個人的な主観ではあるが。左は冷たくキリリとしており、右は甘くまろやかに感じた。どちらも間違いなくおいしい水。気になる人はぜひ自分の舌で確かめてほしい。

 

 

胴腹の滝(遊佐町)

JR遊佐駅から車で15分。駐車場から5分ほど杉林の中を歩くと到着。熊出没注意の看板もあるため、熊鈴などを用意するとなお安心。訪れる際は、ペットボトルや水筒をお忘れなく。
〒999-8302 山形県飽海郡遊佐町吉出

2021年7月号(201号)
水に導かれて。

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