特集の傍流

2021.7.30

知られざる垂水霊域と山中奥深き峯の浦散策へいざ。

2021年8月号(202号)円仁が愛した山寺へ。
山寺観光ガイド「きざはし会」:武田昭男さん
山形県山形市

 立石寺境内入口から道なりに奥へ進むと、最上三十三観音第二番札所である「千手院観音」へ辿り着く。この観音堂を起点に「峯の浦」と呼ばれるトレッキングエリアを目指すのだが、ここは円仁が最初の拠点とした場所で、山全体を堂宇とする立石寺構想を思案した場所とも伝えられている。歴史や史跡が数多く残されているほか、近年は凝灰岩の特異な光景がSNS等で注目を浴び、岩塊から霊気を感じようと訪れる人々で賑わっている。

 

千手院観音に着くと、「ついてる鳥居」がお出迎え。抱きついて「ついてる」を10回唱えると、右は恋愛、左は金運が成就するという。

 

鳥居から先、お堂までの石段にはJR仙山線の線路が。踏切はなく、目の前を車両が颯爽と横切っていく。

 

子年の守り本尊でもある千手院観音。御本尊は慈覚大師作とされる木造千手観音菩薩立像。

 

磐司磐三郎の墓に低頭しいざ峯の浦を目指す

 円仁はこの地を霊域とするため、地主で猟師の磐司磐三郎(ばんじばんざぶろう)と交渉する。ふたりが対面した場所が門前町の「対面石」の前であり、そこで殺生をやめる誓いを立てた磐司磐三郎は神格化され、地主神となったという。千手院観音の鳥居の横には磐司磐三郎の墓が残されている。まずそこに手を合わせ、さらにお堂のご本尊にも挨拶したらいざ山道へ。

 

宝珠橋のたもとにある巨大な対面石。隣には『お休み処 対面石』があり、蕎麦や名物の「芭蕉焼きだんご」が味わえる。

 

前述の「ついてる鳥居」の横には磐司磐三郎の墓が。宮城県秋保では「磐司」と「磐三郎」の2人であるという説も伝わる。

 

垂水霊域の入口。「千手院観音」のお堂から裏山の山道へ。

 

 今回はガイドの武田昭男さんに同行いただき、山野草や歴史についての話を伺いながら進む。すこし息が上がってきたなと感じる頃に、視界を覆い尽くす巨大な岩が目に飛び込んできた。岩肌には雨風の侵食風化でできた無数の穴があき、悠久の時を感じさせてくれる。垂水霊域と呼ばれるこの地には、古峯神社、稲荷神社のほか、大きな岩の割れ目のなかに不動明王が配されるなど、厚い信仰のメッセージが残されている。

 

山間の古道を15分ほど進むと垂水霊域に到着。山寺観光ガイド「きざはし会」に所属する武田さんは、季節の植物情報なども織り交ぜて案内してくれた。

 

武田さんに導かれて恐る恐る岩穴の最上部へ行くと、そこには小さな祠が。古峯神社と稲荷神社が祀られていた。

 

海底や宇宙空間と見紛うような造形美を放つ古の霊域だ。

 

大正時代までは山伏などの修験場として

「大正の頃までは修験者がこの円仁宿跡に寄宿して業を積んでいたようです」と武田さん。自然侵食による変化はあれども、円仁が訪れたとされるおよそ1200年前とほぼ同じ光景が目の前にある。その崇高さから神仏が祀られ、修験者が集い、地元の人に愛され大切に守られてきたのだろう。時代は移り変わっても人々が心を寄せ、神秘の在り処を感じさせるものは変わらないということか。

 

奥へ進むと「円仁宿跡」へ到着。ここで円仁が立石寺の構想を練り、修行をしたとされる。岩に刻まれた一直線の溝は雨水避けのために作られたという。

 

「円仁宿跡」の隣には「垂水不動尊」があり、巨岩の間に不動明王が祀られている。昔、左手の岩肌には千手観音が彫られていたそう。

 

垂水霊域から岩めぐり、さらに本院を目指して歩く

 垂水霊域を後にすると、道は山の頂に点在する城岩七岩エリアへと進む。なかでも張り出した弓張岩の上から望む景色は圧巻で、山城の主となったような気分が味わえる。さらに山道を下り進むと、屏風を広げたような大きな岩と毘沙門天岩が並ぶ「修験場」に着く。「岩に手をかざし無心で祈りましょう」と武田さん。大きな木や岩はそれだけで生命力に溢れ、力を授けてくれるのだという。続く行程には、立石寺が開基するまでの30年間を支えた峯の浦本院の名残が遺跡として残されている。古の天台の道は先人が生きた証。安息の祈りをいまに伝えているようだ。

 

山城守のごとく点在する岩群「城岩七岩」から山々を望む。ここで円仁も祈りを捧げたか。

 

「修験場」にて立禅を。巨大な岩壁に手を当てて呼吸を整え、しばし瞑想の時間。木々がざわめく音に耳を傾けていると、自然と一体化したような感覚に。

 

「修験場」を後にすると、岩窟にて胎内くぐりを体験。胎内くぐりは、岩を抜けることで生まれ変わることを意味している。

 

 

宝珠山 千手院)山形県山形市大字山寺4753(JR山寺駅より徒歩15分)
TEL /023-695-2845 https://www.mogami33.com/guide/n02.html

 

やまでら観光ガイド「きざはし会」)ガイド料(約2時間):1回4,000円(令和2年6月時点)

予約は電話もしくは下記ホームページにて。

TEL /023-695-2816(山寺観光協会) https://www.yamaderakankou.com/campaign/kizahashi.html

 

山寺で使える500円クーポン付

裏山寺ガイド付き瞑想ハイキングツアー(株式会社DMC天童温泉)

予約は下記ホームページにて。( 開催日程:令和2年10月31日まで)

https://www.tendodays.com/amazing/1985/

2021年8月号(202号)
円仁が愛した山寺へ。

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