特集の傍流

2021.8.11

山形の地で「羊」と生きる人。

2021年9月号(203号)山形で羊を語る。
月山高原花沢ファーム:丸山公介さん、クックミートマルヤマ:丸山浩孝さん、チェビオット:大沼邦充さん、大沼久美子さん
山形県鶴岡市、山形県上山市

 明治維新後、欧米文化の流入とともに羊毛の需要が拡大し、ここ山形での緬羊の飼育は盛んに行われていた。しかし、輸入羊毛の増加に伴い、国内で飼育される緬羊は激減。現在は羊肉も羊毛もほとんどを輸入に頼っている。

 そのような状況下でもなお、山形で羊とともに生き続けようとする人たちがいる。その想いをお聞きした。

 

ストレスフリーで育った羽黒のブランド羊を守り続ける。

 鶴岡市羽黒地区では以前、約15農家が牛や豚とともに羊を育てていたというが、全国的な畜産の縮小とともに農家数は減り続け、現在は月山高原花沢ファームでのみ羊の飼育を続けている。

 

精肉用に改良された大型の「サフォーク種」を飼育している。毎年春に産まれた羊を1〜2年ほどで出荷する。

 

 羽黒山の麓で、2本の清流に挟まれた涼しい小高い丘で育った羊は「羽黒緬羊」と名付けられ、子羊肉「ラム」や成羊の「マトン」の中間である生後12〜24ヶ月の「フォゲット」の羊肉として出荷されている。香りや旨味はありながら、クセのないさっぱりとした味わいだ。同市内の精肉店『クックミートマルヤマ』で取り扱っており、県内はもちろん、県外にも出荷され全国の羊肉好きの間で人気を集めている。

 

羽黒山の麓で「ストレスをかけない」をモットーに育てる羽黒緬羊。羊舎のある小高い丘は湿気が少なく、緬羊にとって快適な環境とのこと。

 

 羽黒緬羊は、玄米や麦、トウモロコシなどの穀物だけでなく、鶴岡産のだだちゃ豆のさやを食べて育てている。当初は、加工に使用した豆のさやの処理に困っているという知人の話を聞いて餌に採用し、偶然にも肉質の向上につながった。さらに3年前からはモミごと粉砕した米を発酵させた飼料も与えている。

 

鶴岡の特産品でもあるだだちゃ豆のさやが飼料に。だだちゃ豆には、肉質を向上させるタンパク質、ストレス軽減効果があるGABAが豊富に含まれているという。(写真提供:月山高原花沢ファーム丸山公介さん)

 

 「品質向上の研究を重ねて、より良い羊肉を提供していきたい」と月山高原花沢ファームの丸山公介さんが話せば、「畜産は消費者に伝わりにくい側面もあります。羽黒緬羊の良さを全国にしっかりと発信していきたいです」とクックミートマルヤマの丸山浩孝さんは続ける。改良を重ね進化するブランド羊は、ますます全国に広がっていきそうだ。

 

月山高原花沢ファームの丸山公介さん。(手前)、クックミートマルヤマの丸山浩孝さん。(奥)クックミートマルヤマでは、オンラインショップで羽黒緬羊のギフトセットも販売。

 

ラムとマトンの間、両者の良いとこどりでもあるフォゲット。『クックミートマルヤマ』での羽黒緬羊の販売は毎週木曜から。新鮮な肉を手に入れたい人は木曜の来店がおすすめ。

 

 

月山花沢ファーム・羽黒緬羊)山形県鶴岡市羽黒町荒川字西田157
TEL /0235-62-3341 不定休

 

 

クックミートマルヤマ)山形県鶴岡市みどり町20-35

営業時間/9:00〜19:00(日曜休) TEL /0235-23-5246

http://993-10.com

 

蔵王の高原で羊飼い、羊毛から手作業でていねいにつむぐ。

 自然の生活に憧れ、1987(昭和62)年にログハウスのレストランを蔵王坊平にオープンした大沼さん夫妻。久美子さんは以前から羊毛加工が趣味で、徐々に羊毛で作った服や小物を店で販売するようになっていった。当初は羊を飼育していた近隣の農家のかたから羊毛を分けてもらっていたという。

 

蔵王の牧場で羊飼いをしながらレストランを営業している大沼さん夫妻。羊毛加工品作家である大沼久美子さん(右)と、大沼邦充さん(左)は山形緬羊組合長も務める。

 

羊毛から毛糸を手動でつむぐ。草木染めをすることもあるそう。糸をつむいだ後は干して完成する。

 

 「山形は精肉のために飼育している人が多く、羊毛のために自分たちで羊を飼育してみたいと思うようになりました」と話す。岩手県の牧場が閉鎖すると知り、羊を分けてもらい、1999(平成11)年から羊飼いとしての生活が始まった。

 

大沼さん夫妻のもとでのびのびと育つ羊たち。

 

 現在は、店名の由来でもある羊種のチェビオットをはじめ、ジャコブやカラード、マンクスロフタンなど約60頭を飼育している。精肉ではなく羊毛の採取を主目的としているため、毛のなかに細かなゴミが入らないように、粉砕した飼料は極力与えず、主なエサは牧草だ。

 

店名の由来となったチェビオットは国内でも希少な品種。チェビオットの羊毛は光沢があって美しいとのこと。

 

久美子さんお手製の羊毛雑貨の数々。温かみのある風合いと手触りだ。実際にウールは保温性と吸湿性に優れている。

 

天然酵母のパンや、自家製スモークのウインナーやハム、自家焙煎のコーヒーなどをいただけるレストラン。5〜10月は土・日・祝日営業中。事前問い合わせが確実。

 

 「放牧した羊たちが草を食べたり、走り回ったり、自然のなかで自由に過ごしている姿を見ている時間が何よりもやりがいを感じます」と邦充さん。蔵王の雄大な自然のもとで、伸び伸びと育つ羊たち。羊毛製品の温かみは、羊飼いの優しさも含まれているのかもしれない。

 

 

チェビオット)山形県上山市蔵王坊平高原

営業時間/5月〜10月10:00〜17:00(土・日・祝日のみ営業) TEL /023-672-5004

http://sheep-cheviot.info

2021年9月号(203号)
山形で羊を語る。

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