特集の傍流

2021.8.13

国体をきっかけに蔵王から全国へ、ジンギスカン発祥伝。

2021年9月号(203号)山形で羊を語る。
ジンギスカン・シロー:斎藤央明さん
山形県山形市

 大正時代初期。日本緬羊協会の会長を務めていた『ジンギスカン・シロー』の初代・斎藤恒夫氏の伯父・斉藤忠右衛門氏は県内外に緬羊飼育を勧め、昭和初期には緬羊飼育の技術交流のためモンゴルを訪問。その際、遊牧民たちが中央が盛り上がった円盤状の鉄兜に羊の肉を乗せて焼いた羊肉料理を目にしていたそう。

 

ジンギスカン・シローが創業した昭和30年代の一枚。(資料提供:ジンギスカン・シロー)

 

 一方、恒夫氏は第二次世界大戦の際にシベリアに抑留され、1947(昭和22)年に帰国。ようやく故郷に戻ると、忠右衛門氏から羊料理をやるよう勧められたという。その背景には、戦後になって軍用品としての羊毛の需要が減り、さらには化学繊維の台頭で暴落していたことから、羊農家を救済する必要があった様子。

 

羊毛の需要が拡大するにつれて、政府は緬羊の飼育に力を入れ始めた。この写真が撮られた昭和初期には国内の飼育頭数が94万頭にまで増えたそうだ。(資料提供:ジンギスカン・シロー)

 

 伯父の勧めを受けた恒夫氏は、モンゴルの鉄兜を使った羊料理を参考に山形鋳物工場へ鉄鍋の製作を依頼。またリンゴやにんにくなどを用いて羊肉の旨味を活かす「たれ」を考案。同時期の1949(昭和24)年に蔵王温泉が新日本観光地百選山岳の部1位に選ばれたこともあり、この羊肉料理を名物にしようと、蔵王流のジンギスカンが誕生したという。

 その後1959(昭和34)年に行われた国民体育大会冬季大会の献立に登場すると、選手たちがこぞって絶賛。肉と鍋を購入して帰り、これがきっかけで全国へ広まったと推測されている。

 

創業当時のジンギスカン試食会の様子。左から2番目が初代恒夫氏の父であり、店名の主であるシローさん。(資料提供:ジンギスカンシロー)

 

かつては蔵王温泉街に店舗を構えていたが。2代目・恒晴さんの代に2001(平成13)年に現在地へ移転。市中から通いやすくなった。(写真提供:ジンギスカンシロー)

 

左の鍋が1948年頃から使われ始めた初期型。鍋の表面に溝が切られている。1955年頃になると真ん中の中期型へ改良。脂の流れを考えて溝が進化し、表面や鍋底に凹凸ができた。そしてさらなる改良を続け、1990年頃からは右の鍋の形へ。溝の隙間が無くなり、脂が落ちることによる煙の発生も大幅に激減した。

 

現在活躍している鍋はこちら。フチに置いた野菜に自然と脂が流れるように溝がより進化し、フチも深くなった。店頭で購入できるため、この鍋を買い求めて来る人も。

 

初代の味を守り、変わらず愛される店へ。

 創業以来、蔵王温泉の名物店としてその人気を牽引してきた『ジンギスカン・シロー』。現在は3代目である斎藤央明さんが厨房を守り、県内外のファンを変わらず魅了し続けている。「初代の頃から羊肉の精肉店と飲食店とふたつの顔を持つ、それがうちの特徴でしょうか。2代目の父・恒晴から受け継いで間もないですが、創業以来70余年変わらず、同じ味を守って提供できるよう努めています」と話す。

 

程よく厚切りの生の羊肉が味わえる「ジンギスカン特上定食(生肉)」2,000円。漬物や副菜もついた一番人気のメニュー。

 

取材時は特別に3代目店主の央明さんが鍋を仕込んでくれた。創業以来守り続けているのは、「たれ」だけじゃなく、手間を惜しまない姿勢だ。

 

3代目直伝の焼き方は、しっかり熱した鍋の上に羊肉を置いたら焦らず我慢、とのこと。片面に焦げ目がついてきたか?というくらいで1〜2回ひっくり返すのがコツだ。

 

羊肉の溶け出した甘い脂が野菜に滴っていくらでも食べられる。ジューシーなのに脂がサラッとしているのも嬉しいところ。創業当時から守り続けている「たれ」はにんにくが効いておりご飯とも相性抜群で、箸が止まらなくなってしまうほど。

 

良質な肉と野菜にこだわり、安心できる食材を提供。

 羊肉は融点が高いため、体内に入っても脂が吸収されにくい。さらには高タンパク質で鉄分豊富と、栄養価的にも優れている。「羊肉は臭みがなく柔らかいラム肉を使い、自家製辛味や漬物などの野菜はほぼ自家栽培です」と央明さん。この手間を惜しまない姿勢こそが、長く支持されている所以に違いない。

 

 

ジンギスカン・シロー)山形県山形市蔵王半郷266-10

営業時間/11:00〜14:00、17:00〜20:00(毎週木曜・第4日曜休) TEL /023-688-9575

http://www10.plala.or.jp/jingisukanshiro/

2021年9月号(203号)
山形で羊を語る。

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