特集の傍流

2021.12.3

上山産ラ・フランスにおける、おいしさへの飽くなき追求。

2021年12月号(206号)ラ・フランス ストーリー
スミヤ果樹園:佐藤花南さん、山形大学学術研究院:奥野貴士さん
山形県上山市、山形市

 「ラ・フランスは香りや味、すべてのバランスが完璧。総合力が高い果物ですよね」。そう魅力を語るのは上山市『スミヤ果樹園』の若き3代目佐藤花南さんだ。上山市のラ・フランスは県内でも珍しい棚仕立ての栽培法を採用。枝を横に張らせて作ることで、風通しがよくなるとともに、葉の重なりが少なくなり、果実は太陽光をたっぷり浴びて甘みを蓄える。また、市では山形大学と連携し果樹栽培支援アプリ「かるほく」を運用。佐藤さんも今年からそのアプリを栽培に役立てている。

 

「かるほく」は気温データをリアルタイムで表示でき、デリケートなラフランスの栽培に役立つ。

 

“おいしい”を可視化、生産者を救うアプリ

 「かるほく」は、各エリアごとの気温がリアルタイムで分かるほか、写真から果実のサイズを測定し、収穫適期を示すシステムを搭載。佐藤さんは「栽培で気を遣う春先や、霜が降りる時期に気温が分かると助かります。とくに1から果樹栽培を始める人や地理に疎い人には心強いでしょうね」と話す。
 『スミヤ果樹園』のラ・フランスはカタログギフトやふるさと納税返礼品など引く手数多。家族総出で収穫したのち、2℃に設定した冷蔵庫で予冷を行う。予冷はラ・フランスの熟成度合いを均一に揃える必要不可欠な処理。箱詰めして発送する際には、食べ頃の日付を書き加えているという。上山を代表する若手生産者のひとりである佐藤さん。農業は楽しいと即答する姿が頼もしかった。

 

事務所の脇には巨大な冷蔵庫が。

 

収穫後は、見た目やサイズで果実を選別。選別後はコンテナに詰めて冷蔵庫で予冷する。

 

手慣れた様子でフォークリフトを運転するのは豊島篤志さん。「農業がしたい」と兵庫から移住し、上山市で新規就農した。市内の若手ファーマーが集まる上山市若手農業者会でも佐藤さんとともに活動している。

 

スミヤ果樹園のラ・フランスは全国各地へ運ばれる。

 

上山市皆沢にある『スミヤ果樹園』の皆さん。和気あいあいと会話する様子からも、そのチームワークの良さが伺えた。

 

アプリで農家の生産管理の一助に

 「かるほく」の開発者である奥野貴士准教授に話を訊くべく編集部は山形大学へと向かった。きっかけは数年前の大学の学園祭だったという。上山市の生産者が、奥野准教授の研究室を訪れ「西洋梨の収穫適期がわからない」ち相談したことから始まった。ラ・フランスの収穫適期は、山形県で指標を出しているが、上山市ではほかの市町村とは違い棚仕立てで西洋梨を栽培しているため県の指標ともズレがあったという。そこで、奥野准教授は上山市と共同で「かるほく」を開発した。
 それまでは熟練の生産者らの感覚や、個々の情報交換のもとに生産が進められてきたが、「情報を収集し生産者に提供することで収穫適期を判断する一助になれば」と、気象データや定点カメラによる生育中の果実の画像、生産者が計測した果実データを集約・解析し生産者に提供している。

 

生物物理学を専攻する奥野准教授が開発した「かるほく」は、上山市内の園地から収集したデータを大学が解析・発信し生産をサポートする。

 

市内の園地数カ所にこのような機器を設置。気温や湿度、日射量を計測するほか、定点カメラで生育状況も記録する。

 

次代につなげるために教育の面からも展開

 「山形は、西洋梨を栽培する技術は世界一だと思う。その技術を先人たちから受け継ぎ、次代に向けて発展させていくために貢献できれば」と話す奥野准教授。現在は、今シーズンの果樹栽培にも深刻な被害をもたらした凍霜害を予測するアラートシステムの開発コンテストを県内の学生を対象に開催している。優れた作品はアプリに実装し役立てられる予定だ。
 そのほかにも、農協や西洋梨以外の果実栽培団体とも連携し、気温データなどの共有も進めているという。また、次世代の生産者を育てるために、果樹栽培をテーマにした教育プログラムも開発。子どもたちを対象にしたイベントなども開催している。新たな技術との繋がりのなかで、世界に誇る山形の果樹栽培が歩みを進めていく。

 

赤い果実も実は西洋梨の一種で、リーガルレッドコミスという品種。山形で栽培されているが、まだ流通量が少なく希少だという。

 

西洋梨のブランド価値向上を目的として、奥野准教授と「ギャラリーかご」が開発した、自宅での追熟時に果実を飾るためのカゴ。雪の結晶をモチーフにしたデザインで、上山市ふるさと納税の返礼品になる予定だ。

 

2021年12月号(207号)
ラ・フランス ストーリー

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