特集の傍流
醸造責任者:村上滋郎さん
山形県長井市
日本では数少ないという国産ホップの産地、そして市内の水道水すべてをまかなうほどの豊富な地下水を持つ水のまち、長井市。そんな土地で2019年に『長井ブルワリークラフトマン』とオープンさせたのが同市出身の村上滋郎さんだ。美術家でもある村上さんは、京都府で作家活動を行なっていた際、ビールを作る友人に出会い、その出会いがきっかけで地元にブルワリーを設立した。

国道287号線を川西町に向かって車を走らせると見えてくる、「長井クラフトビール」の文字が目印。
『長井ブルワリークラフトマン』は朝日連峰を水源とする口当たりが滑らかな長井の超軟水を使い、祖母のひょう干しなど山形の食文化に副原料の着想を得たという、異彩を放つビールが印象的。約7年前からは自らホップの栽培に着手、目指すは原料もオール地元産のビールだ。「地元に根ざしたブルワリーでありたいと考えています。近所の人が買いに来てくれることもしばしば。長井の人にクラフトビールを知ってもらうきっかけになりたいです」と村上さん。

ビールは自社のものだけでなく、OEMで醸造を請負うこともあるとか。

全国的に珍しい硬度18の超軟水と自家栽培のホップで仕込む『長井ブルワリークラフトマン』のビール。まず初めは白いラベルの「ひょうペールエール」がおすすめ。郷土食材のひょうを使い、微かに残る爽やかな酸味が料理を引き立てる。(330ml、840円、ペールエール、ALC.5%)

地元産のひょう、くきたち、秘伝豆のきなこを副原料とした個性的なビールが定番の3種。公式オンラインショップでも手に入るほか、土日は直接ブルワリーにて購入可能。
長井市を拠点に活動するクリエイターグループ「アメフラシ」の一員でもあり、東北芸術大学の講師でもある村上さんは、ブルワリーという枠組みに囚われず、すべてを繋げていきたいという。ブルワリーのロゴや洗練されたデザインのラベルは、村上さんが発案したものをデザイナーの友人が仕上げてくれたそうだ。「いまはコロナの影響で学外活動ができないですが、いつか学生と一緒にビールをつくりたいです」と構想を語る村上さん。さらに「誰もが想像できないようなことをやりたくて。文化が独自に進化してきた島国である日本。そのように、地元長井に根ざしながらビールを進化させていきたいです」と続けた。山形独自の郷土食をクラフトビールというかたちで昇華させた村上さん。伝統文化の継承者ともいうべき彼の、アーティストならではの独創性が、ますます山形のクラフトビールを面白くしている。

クラウドファンディングの返礼品として作ったビールケース。木材などの原料も山形産にこだわり、地元の木工所で加工した。

ビールやロゴ、建物の内装など隅々までこだわりが詰まったブルワリー。それはまるで村上さんの信念が宿った作品であるかのよう。
長井ブルワリークラフトマン)山形県長井市泉677-11
TEL 0238-87-1600

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