特集の傍流
蔵王ブルワリー代表:海谷康裕さん
山形県山形市
待ちわびた春が間近に迫る3月12日、山形市に新たなブルワリーがオープンした。県道21号を蔵王温泉に向かって車を走らせると見えてくる、朱い大鳥居が『蔵王ブルワリー』の目印だ。発起人である『山里菜有限会社』の海谷康裕社長は「蔵王で生まれ育って、本業の食品卸会社も蔵王にあります。縁深いこの地を盛り上げたいと常々考えていました。昔は観光客で賑わった蔵王も、年々その数は減ってきて、土地を離れる人も多くなった。愛着ある地元を元気づけたかったんです」と熱く語る。

蔵王のシンボルともいえる大鳥居の袂に『蔵王ブルワリー』はある。
蔵王を表現する舞台は地域密着型ブルワリー
造られているのは良質な蔵王の湧水を使用した、個性豊かなビール。注目は樹氷をイメージした「SNOW MONSTER」で、従来のホワイトエールよりも格段に白く、その色は世界初だとか。「樹氷を表すためには色はもちろん、味にもこだわりました。クラフトビールはメーカーの個性がはっきりと映し出されます。多様なスタイルを持つクラフトビールだからこそ表現できる蔵王があると感じています」と海谷さん。

(左から)クラフトビール好きにオススメの「ZAO CLASSIC IPA」(インディア・ペールエール、ALC.7%)、フルーティーな甘みが飲みやすい「YAMAGATA さくらんぼ ALE」(フルーツエール、ALC.4%)、樹氷をイメージした唯一無二のビール「SNOW MONSTER」(ホワイトエール、ALC.4%)、爽やかでスッキリとした飲み口が特徴の「MATSUNOMORI ALE~Re-fresh~」(ペールエール、ALC.5%)。いずれも330ml600円。
造るだけで終わらない、蔵王ならではの食を堪能
『蔵王ブルワリー』にはレストラン『Crang Dining』が併設されているため、造りたてのビールと相性の良い料理がともに味わえるのが嬉しいところ。オススメは、ピザ窯で焼き上げる本格ナポリピッツァ。なかでも「蔵王 Crang Pizza」は、新鮮野菜をふんだんに使用した迫力満点のオリジナルメニューだ。今後は自社ファームで獲れた米や野菜を育て、提供していく構想もあるという。

新鮮な野菜と生ハムがもちもちのピザ生地とマッチ。蔵王山頂をイメージした「蔵王CrangPizza」。

「蔵王牛ローストビーフ」はその名の通り、ブランド牛「蔵王牛」を使用。野生味溢れる赤味肉の旨さと上品な脂の甘みが味わえる逸品。

店頭では持ち帰り用の瓶ビールも販売。オリジナルボックスに詰めれば贈り物にも喜ばれそう。
造り手に訊いた、クラフトビールの魅力
造りたてビールを提供する地域密着型ブルワリーや小規模でビールを生産するマイクロブルワリーが年々全国で増加しているそう。『蔵王ブルワリー』の醸造長、坂本陽介さんは栃木・新潟で修行を積んできた。「まずは味も見た目も良いものを提供できるよう頑張りたい。小さい醸造所ですから、水の温度や気温で微妙に味の変化が起こります。逆にそれも楽しんでほしいかな」と話す。「観光に来たかたには“蔵王っていいところだな”と気づきのきっかけに。山形に住むかたには魅力を発見してもらえる場所にしたい」と海谷さんが続ける。

「試行錯誤して造ったビールが乾杯の一杯になると嬉しいですね」と話す醸造長・坂本さん。発酵タンクには酸性やアルカリ性を示すpH値と糖度、気温を毎日計測し記録している。

蔵王ブルワリーの創立メンバー。同世代ということもありチームワークは抜群だ。(左から)醸造長の坂本陽介さん、料理長の髙橋香さん、ホール兼事務担当・マネージャーの海谷友香さん、代表の海谷康裕さん。ちなみに海谷さんと坂本さんは中学時代の同級生だそう。

鮮やかなさくらんぼの色味が味の想像を掻き立てる。醸造長・坂本さんのこだわりが詰まった自信作だ。見た目や味、香りなど、ビールの個性を味わうなら、まず造り立てを店頭で。
日本酒やワインと並んで山形色のビールが味わえるいま。各々のブルワリーが地域の魅力を信じて発信する姿は、山形におけるビールの地位を押し上げ、未来を明るく照らしているようだ。

約2年の構想・準備期間を経てブルワリーが完成。クラウドファンディングでは150万円のゴールをわずか10時間で達成したことからも県民の期待値の高さが窺える。屋上には1日1組限定で貸切できるビアテラスも完備。

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