特集の傍流
味どころ ふる山 代表取締役 古山裕喜
味どころ ふる山(米沢市)
山菜大国である山形は、昔は、山に行けばただで食材が手にが入っていた。今では、私有地で採取が禁止されていたり、そもそも山菜採りに出かける機会も減っている。そのため、今でこそくきたち干しやひょう干しの煮物は郷土料理を出すお店も増えたが、以前までは「無料の食材をメニューにするなんて」と驚かれたこともあったという。

山形の食の多様化の中で、安心と安全、調和のとれた食のあり方を研鑽し、食と文化を継承伝達することを活動目的とした「おいしい山形の食と文化を考える会」の会長も務める古山さん。

古山さんご自身が干したくきたち干しとなす干し。撮影後、編集部におすそ分けしていただきました。
歯ごたえ抜群のナス干しの味噌炒め、祖母の味を思い出すくきたち干しの煮物、実はどれも「味どころ ふるやま」の料理長、古山裕喜さんご自身が干した、お手製の干し物で作られている。昭和63年、天皇が崩御する直前12月に店を構えた。店主の古山裕喜さんは米沢出身、高校卒業の後、上京して料理の修行を行った。なんとも気さくに話すマスターは、とても67歳には見えない。料理に使用する食材の仕入れ先は、もちろんほとんどが米沢。中でも米沢の伝統野菜の使用には力を入れている。今回なす干しに使用されている薄皮丸茄子もその一つだ。

干すことで色も食感も変わり、また違った美味しさを味わえる薄皮丸茄子干しの味噌炒め(右)。おばあちゃんを思い出す、くきたち干しの煮物(左)、少し香るごま油がさらに美味しさを引き立てていた。
今と昔では、やはり様相が違うという。「今の家庭に出刃包丁ってないでしょう?万能包丁しか使われない。魚のさばき方も知らなかったり、今ではスーパーで魚が切り身で売られているからなんの魚かもわからなかったりする和食の食べ方や箸の使い方、そういったものを学ぶ場、機会自体が減ってきていますね。。便利になっていく一方で、やはり忘れてはいけないものもありますよね。」と話した。
「昔は先輩に飲みに誘われたら、素直に行って、お酒を飲んでた。そこで酒の注ぎ方、飲み方だって自然と覚えてたんですよ。今は無理に誘ったら、すぐパワハラなんて言われてしまう時代なので。でも、そういう機会があるからコミュニケーションが自然と生まれていくんです。私の店が、それらのきっかけとなればいいですね。」
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