特集の傍流
株式会社小嶋総本店 代表取締役社長 小嶋健市郎さん
山形県米沢市
日本酒の力と先人の知恵を信じ、いまが自社商品の本質的な価値をあげるためのステップと捉え、様々な取り組みを始めている小嶋総本店。「東光」は全国のみならず海外でも有名だが、その中でも、梅酒コンテストで3冠という偉業を成し遂げた『吟醸梅酒』は、新旧の知恵を独自に織り交ぜた逸品だった。
梅酒づくりの原点は、祖母のレシピだった。
創業から420年間、酒造り一筋に歩んできた小嶋総本店。時流の中で、「売り方を見直さねばならない」状況は必然的に訪れた。それまで抱えていた、沢山の品数を大幅に絞り始めたのも業界全体が低迷していた頃。「商品を絞ると売上が減るという不安もありましたが、一方でアイテム数が多過ぎて生産が複雑化したり、お客様もどれを飲めばいいのかわからないというマイナスがありました」と話すのは23代目の小嶋健市郎さん。
マーケティング畑を歩んできたからこそ、「売り方を変える」という発想がある。『安く売るのではなく、酒を造る技術力を売る』、この考えのもと6年間でアイテム数を約4割まで削減、そうした発想の転換は商品開発にも繋がった。国内の主要な梅酒のコンテストで3冠の偉業を成し遂げた『吟醸梅酒』がそれだ。
デビューまもなく、一気にスポットを浴びることになった梅酒について聞いてみた。
「この梅酒を商品化した5~6年前は、個性豊かなリキュールや梅酒が全国的に多く造られていた頃でした。当社では昔から梅酒を製造販売していますが、そうしたブームの中、あらためて“自分達が特徴ある梅酒を造るなら、どんなものになるだろう”と考えたんです」と小嶋さんは振り返る。
小嶋総本店が以前から定番商品としていた梅酒は純米酒ベース。それに比べ、吟醸系の酒粕を蒸留して取り出した芳香な焼酎をベースに配合を変え、試行の末に造り出したのが『吟醸梅酒』だ。
「もともと、純米酒ベースの梅酒の原点は祖母のレシピなんです」。夏になると、自宅の庭の梅を摘んできて梅酒を造っていた祖母。家庭の優しい味とクリアな舌触りは、多くのファンを魅了してきたのだ。

ボトリング作業の様子。
課題を解決する手立ては、伝統的な手法で。
大きい酒蔵をつくることはできるが、古い酒蔵をつくることはできない。県外だけでなく国外にも出向くと 「歴史」に価値を認めてもらうことが多く、そして「山形の酒」というブランド力の強さにも実感させられるという。「これまでは、販売サイドからアプローチしていましたが、これからはお酒そのものの価値を高めるようにしていきたい」と小嶋さんは意気込む。

江戸時代の母屋や蔵を保持した美しい景観は、最新の技術を投入するより伝統的な手法で現在の課題を解決しようとする社の気概を映した鏡に見えた。
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