特集の傍流

2017.10.20

良質なぶどう栽培の実績ある土地で、顔の見えるワインづくりを目指す。

2017年11月号(157号)やまがたワイン考《前編》
ベルウッドヴィンヤード 代表 鈴木智晃さん
山形県上山市

 上山市久保手地区。遠方には朝日連峰の頂を感じ、東の空には蔵王連峰の山並みを望む扇状地の地形。市街地より少し標高が高く水はけの良い山裾の立地を生かして、昔からブドウ栽培の的地として歩んできた歴史がある。
 その久保手地区と隣接した裏町地区の畑を舞台に、ワインづくりに取り組みはじめたベルウッドヴィンヤードの鈴木智晃さん。「かみのやまワインの郷プロジェクト」の支援で耕作放棄地となったブドウ畑を譲り受け、畑づくりから取り組んだ。そして今秋、自家農園初となるスパークリングワインがデビューする。
 

 

醸造家の経験を生かし、ワイン用ぶどうを栽培。

「上山でワインぶどう栽培を目指すなら、市街地から近くて利便性の高い西手がいなぁと漠然と思っていました。それで紹介されて最初に足を運んだとき、小高い丘の斜面に広がる畑の景色を見ていたら、ああここに垣根の畑を広げて、ワイナリーの場所はこのあたりで……と自然と頭のなかで描いていた構想が現実を帯びて感じられたんです。その一週間後にはここでワイナリーの創業を目指そうと決めていました」と鈴木さん。県内大手のワイナリーで数々の受賞ワインを生み出してきた実績と、ワイン醸造家として19年のキャリアを持つ鈴木さんが見込んだ地で、今年手がけたぶどうは前年までの棚仕立てを残したデラウエアと、垣根仕立ての欧州系ピノノアール。それらを糖度が上がり切る直前で収穫し、どんな食事にも合うようなキリッと酸味の効いたワインをイメージしながら醸造作業を委託して仕込んだという。

 

仕込み作業の様子。秋保ワイナリー(仙台秋保醸造所)にて。


 

鈴木さんは、委託醸造した今年の自家ワインを「感慨深くかつ新鮮」と表現。


 

 

「ワインづくりには長く携わってきましたが、畑づくりから自分一人で手がけたのはほぼ初めての経験でした。ワインぶどうの栽培は欧米風の垣根仕立てが主流なので、棚仕立ての栽培にも不慣れななか、プロジェクトを通じて知り合った先輩がたや仲間、いろんな方からのサポートがあってようやくワインづくりができたように思います。ただ初年度の今年経験できたことはすべて自分の糧となり実になったので、苦労したというより本当に学びながら、そして愉しみながらすべての作業に取り組めました」と話す鈴木さん。

 

 

気軽に立ち寄れる、ワイナリー創業へ。

 ベルウッドヴィンヤードと、自身の姓を冠した自家ワイナリーの創業はおよそ2年後を目処に、原材料から出荷までを一貫体制でまかなえるドメーヌワインづくりへの夢を膨らませている。
「ワイン工場を作るのが第一目的ではありますが、同時にいろいろな方々が気軽に足を運べるような場所にもしたいなぁと。畑から見る市街地の眺めもすごくいいし、目の前には蔵王の四季が広がってのどかさもある。もちろん自分もそうですが、集う人が居心地のいい場所にできたら最高ですね」と、すでにその光景は鈴木さんの頭のなかにくっきりと輪郭を帯びて描かれているよう。
 取材に伺った9月中旬はまだまだ日差しも強く、収穫が終わったばかりのぶとう棚には、スパークリングワインと同色の陽光が跳ね返っていた。ワイナリー構想を話しながら破顔する鈴木さんの表情もまた同じ、いやそれ以上の輝きで満たされていた。

 

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