特集の傍流

2017.7.10

まだまだあります。飛島に伝わる興味深い話。

2017年8月号(154号)ふしぎの島、飛島。
鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会 主任研究員 岸本誠司さん
とびしま未来協議会 事務局長 呉尚浩さん
山形県酒田市飛島、山形県酒田市

 飛島の魅力は、全体を把握しやすい大きさの島に、様々な見所がこれでもかと詰まっているところ。まるで島そのものが大きな博物館のようだ。
「大地、自然、文化、すべての多様性があるのが飛島です。島のジオサイト(ジオパークの見所)としての特徴は、その物語性にあり、交流、体験、学びを通して、感じた魅力はさらに深まっていくと思います」と語るのは、鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会主任研究員の岸本誠司さん。飛島を訪れた際はぜひ、大地・自然・文化の多様性を意識しながら、島を回ってみてはいかがだろう。

 

岸本誠司さん)鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会主任研究員(民俗学)。とびしま漁村文化研究会代表として、飛島の文化継承活動に取り組む。東北公益文化大学非常勤講師。

 

「飛島の島人たちは生粋の漁民。日本に残る多様な暮らし方の中で、里とは一線を画す価値観や社会性に魅力を感じます。島の地質・地勢に、海の民の生活文化がこれほど深く溶けこんでいる島を、私は他に知りません」(岸本さん)

 

 

島内の遠賀美神社には小型の狛犬が奉納されており、北前船の船乗りたちの信心がうかがえる。これは福井県で産出される緑色の凝灰岩(ぎょうかいがん)、笏谷石(しゃくだにいし)でできたもの。加工が容易な笏谷石は北前船のバラスト(船底に積む重し)に利用された。

 

飛島の島民はその昔、鶏肉と卵をまったく食べないと言われていた。現在はどちらも口にしているが、昔は海から糧を貰っているということで本当に食べなかったのだそう。鶏を避ける理由に、鶏の鳴き声に関わる、先の記事で紹介した弘法大師の伝説が引き合いに出されるほど。

 

川がなく、真水の確保が難しい飛島では、保水力に優れた常緑樹のタブノキが重宝され、積極的に植林されてきた。「宮谷のタブ林」は昔から島民の生活を支えてきた涵養林で、樹々が競うように枝を伸ばしている。

 

島には古くからイカ漁の歴史があり、江戸時代にはイカで年貢を納めた。島全体でスルメ10万枚を納めた記録もある。飛島出身の漁撈長の船は、現在もスルメイカの1隻の水揚げ成績で国内1、2位を誇っている。

 

イカは島民にとって価値ある大きな存在。島内の神社には、イカと鯉が施された「イカ来い」を意味する装飾も。そのほか、木造の建物にイカが彫られていることも。これは水に関わるものを彫ったりつけたりすることで、その建物を火災から守る火伏せの意があるのだとか。

 

かつては、厄を運んでくるとされる夜鳥(ヨンドリ)を追い払うため、写真のヨンドリ棒を持った子ども達が鳥追い唄を唄いながら集落を歩き回ったという。こうした古くからの風習の痕跡が飛島には多く残る。

 

「とびしま総合センター」では、昔の漁業の道具や民具が保存されており、希望者は閲覧することができる(要事前連絡)。

 

島舟の模型なども展示。

 

展示室で道具や民具を説明してくれた、飛島コミュニティ振興会会長の佐藤勝一さん(右)と、総合センター所長の加藤栄一さん(左)。

 

 ユネスコの世界遺産が対象の保全に主眼を置いているのに対し、ジオパークは自然環境を保全しつつ、そうした地域資源を観光や教育、防災などの各分野で活用し、持続可能な地域社会の貢献につなげることを目的としている。飛島のジオサイトを守り、人々が住み続けられるように、ジオパークの仕組みが上手く機能することが求められているのだ。

 

ジオパークが生む地域力、それは人の交わりの力。

 ジオパークは住民参加型のボトムアップの活動で、地域一体の理解や努力も必要になる。「そのためにも、ジオパークと防災という点から関心を持ってもらえたら」と話すのは、東北公益文科大学教授の呉尚浩さん。飛島にある津波堆積物は、過去にこの周辺に大きな津波が来たことの証拠だという。

 

呉尚浩さん(左))「とびしま未来協議会」事務局長。東北公益文化大学公益学部教授。公益学や環境学の視点から自然の循環的利用・保全と地域づくりを研究している。

 

「ジオパークといっても、なかなか島民のかたはそれが何なのか分からない面がある。ですが、防災とジオパークがつながればより関心をもっていただけると期待しています。ジオパークを成功させるためには住民の参加も不可欠ですが、島全体のことを考えることができるという点で、ジオパークは大きな影響を与えてくれると思います」(呉さん)

 

飛島には荒々しい岩肌なども残る。

 

海によって削られた崖。逆に、削られにくい岩が島を守っているということだ。

 

 

 飛島の地形・地層を読み解くことは、大地の営みを知ることになり、災害時の備えにもつながる。ジオパークをきっかけに多様なテーマで、島の内外を問わずに様々な人が関わることは、固い地域の力を育むに違いない。

 

 
 

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