特集の傍流
フォーラム東根 支配人 堀賢一郎さん
山形県山形市
2016年同様、今回の「山形ビエンナーレ2018」でも行われる、「山形国際ドキュメンタリー映画祭」とのコラボ上映会「シネマ通りの夜」。
「映画館勤務者として、映画を絡めた企画ができたらと思っていました」と話すのは、「シネマ通りの夜」の企画者である堀賢一郎さんだ。普段は東根市にある映画館『フォーラム東根』で支配人を務める堀さんが、ビエンナーレに関わるようになったのには、どのような背景があったのだろうか。
きっかけは、2014年の1回目のビエンナーレの前に行われた、アートラボという市民参加型のワークショップに参加したこと。そこで、ビエンナーレにてイベントとして実施されることが決まったのが『BARミチノオク』(山形ビエンナーレ開催期間中の金・土の夜のみに開店するBAR。この人に山形を語ってもらえたら絶対面白いという人に、BARの1日マスターとして話をしてもらうイベント)だったのだが、堀さんは映画館に勤務しているということもあり、やはり映画を絡めた企画ができれば……と思っていたのだそう。
「それで、そのラボの最終日くらいに、僕の友人のミュージシャンが1回目のビエンナーレに出演するということを聞いて。最初はライブだけの予定だったんですが、せっかく山形に来てもらうのなら、彼は映像も得意なので、それをうちの映画館で上映して、関連企画ということでやらせていただけないかと話したのが、最初の始まりでした。
2回目も、映画で何かイベントをやりませんかとお話をいただいて。それで僕はドキュメンタリー映画祭の事務局のみなさんともよく一緒に仕事をさせていただいているので、せっかく芸術祭と国際映画祭という2つの祭りがあるのであれば、おつなぎしましょうかとその橋渡し役をやらせていただいたんです。2回目に関しては『シネマ通りの夜』という名前で、七日町にある『BOTAcoffee(ボタコーヒー)』さんの2階でドキュメンタリー映画の上映と、ビエンナーレに招聘された作家のトークをやらせていただきました。ビエンナーレもそうですし、映画祭のプレイベント的な意味も含めて企画させていただいたというのが今までの流れですね」

2016年の「シネマ通りの夜」で上映された『在るこども ジャガーの夜』の映像。写真提供/堀賢一郎
「上映する映画は、ビエンナーレのコンセプトをいろいろとお聞きしたり、ビエンナーレの大きな〝山〟というテーマに沿った形で、事務局の方々と、そのテーマに合うような作品がないかと検討を重ねて決めていきます。今回のシネマ通りの夜では3作品を上映するんですが、長門屋さんの方でも上映がありますし、フォーラム山形では、茂木綾子さんの最新の長編ドキュメンタリー映画『ZEN FOR NOTHING』を1日限定で公開するプログラムになっています」
そもそも、堀さんがアートラボに参加したのは、映画館の中だけで活動していては、どうしても街との連携や関わりがなくなってしまう部分があると感じていたからだった。
「僕は山形の出身なのですが、前任は福島に10年ほどいまして。そのときは商店街の店主さんたちといろいろなコラボをやったりして、その中で街の人の顔が見えてきたというか、自分の住んでいる街の顔が見えてきたという実感があったんです。ですが、山形に戻ってきてそういう実感があまりなくて、映画館だけでやっていてはこのまま何も変わらないなあと。それならワークショップに参加して、いろんな人のつながりのきっかけを持とうと思いました。結果、それでつながりが増えましたし、一歩踏み出すと街の見え方が全然違ってくるという感じがあって、それが意外に簡単にできるんだなあと感じましたね。今回も、〝ビエンナーレやってるね、映画祭やってるね〟という感じではなく、〝なんかちょっと関わってみようかな〟と思ってくれたら、その人の街の見え方が変わるんじゃないかなあというふうに思っています」

「シネマ通りの夜」の映画上映後に行われたクロストークの様子。マイクを持っている一番奥の方が堀さん。写真提供/堀賢一郎
お気付きの方もいるかと思うが、「山形国際ドキュメンタリー映画祭」も、2年に一度の奇数年に開催されるいわば〝映画のビエンナーレ〟だ。つまり、2年に一度の偶数年に開催される山形ビエンナーレとは、毎年交互にやってくることになる。そんな二つの祭りを、映画祭事務局と芸術祭関係者を、結ぶ市民として活動を続ける堀さん。
「僕は運営する側に入ってしまっているので、ビエンナーレをゆっくり観れる時間がないというのがありますが、子どもと妻に参加してもらって、自分たちの住む街でこんなことをやっているんだよということを楽しみにしてもらえたらいいなと思っています。今回のビエンナーレについて荒井良二さんが〝子どもたちの声が響いてきたら嬉しい〟とおっしゃっているんですが、ビエンナーレに行くのも子育ての一環というふうに僕は捉えていて。そういうふうにビエンナーレが、子どもはもちろん、老若男女関係なく楽しんでいただける場になってくれるといいなあと思います」
堀さんはそう結んでくれた。
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