特集の傍流

2018.8.16

アートで街は変えていけるという感動。

2018年9月号(167号)山形の芸術祭
東北芸術工科大学 学生 菅原葵さん
山形県山形市

 「山形ビエンナーレ」への参加をきっかけに、街とアートの関わりを知り、東北芸術工科大学へ進路を決めた学生がいる。コミュニティデザイン学科4年生の、菅原葵さんだ。

 

アートが街に貢献できると、知れたことが大きかった。

 菅原さんは秋田県出身。秋田公立美術大学附属高等学院の工芸美術科で金属工芸コースに在学しており、付属高校ということもあって、当初は秋田公立美術大学への進学を考えていたという。
 だが、菅原さんが高校3年生の時に、東北芸術工科大学の教授・主任学芸員であり、「山形ビエンナーレ」のプログラムディレクターを務める宮本武典氏が主張講義に来たことで、「山形ビエンナーレ」の存在と、その内容を知って芸工大に興味を持ち、ビエンナーレに参加することに。

 

「そもそも、宮本先生のお話を聞いたときに衝撃を受けたのが、街中でアートを展開して、その街を盛り上げていることでした。勉強していたアートや工芸などが、現実分野でこんな風に街に貢献できるんだということを知らなかったので、すごく刺激を受けたんです。
 というのも、私の祖父が100年以上も歴史のある八百屋を経営していたんですが、私が高校二年生のときに、その八百屋の近くに大型ショッピングモールができたり、道路の大幅な拡張のために店舗の半分がなくなってしまうなど、いろいろな条件が重なって、どうしてもシャッターを下さなければいけなくなってしまったんです。そのことが、私の中で結構ショックな出来事でして、何かできないかと思っていたときでもありました」

 

2014年の「山形ビエンナーレ」に参加した際の写真。当時、高校生だった菅原さん。写真提供/菅原葵

 

 「山形ビエンナーレ」に足を運び、実際の展示を見てさらに心を動かされたという菅原さんは、イベント自体を面白いと思うとともに、「私もこの仲間に入りたい」という気持ちになったという。コミュニティデザイン学科に進路を決めたのも、アートやデザインといったクリエイティブなもので、街なかを変えていけると知った心境の変化が大きかったのだとか。

 

「ビエンナーレに参加して芸工大に興味を持ったので、それからオープンキャンパスに参加して、いろんな学科を見て歩きました。そのときに、当時新設の学科が紹介されていて見に行ったら、その学科は、すごく平たく説明すると、まちづくりや地域の人たちを巻き込んで街を元気にすることを実践する学科だったんですね。それを初めて知って、私のやりたいことに一番近いかもしれないと思いました。そこでまちづくりに興味を持ったんです」という。

 

 今回のビエンナーレでは、『とんがりビル』で行われる音楽ライブなどの学生スタッフを務める菅原さん、「今回は、学校全体がビエンナーレの方向を向いて意識しているというか、全体的な呼びかけもされていたりするので、学校全体で〝ビエンナーレで何かをやりたい〟という人が、前回に比べて増えた印象があります」と話す。
 1回目はお客さんとして、2年前はスタッフとして初めて参加したビエンナーレ、今年は菅原さんにとって3回目となる、学生生活最後のビエンナーレとなる。

 

2016年のビエンナーレの際、スタッフとして参加した菅原さん(写真左手前)。写真提供/東北芸術工科大学

 

「ビエンナーレのスタッフは、アーティストさんとの距離がすごく近くて、制作過程に携わらせていただいたり、会期中にもすごく近くにアーティストさんがいらしゃって、接する機会がたくさんあるので、そういった今しかできない交流を、自分自身も楽しみたいです。
 後輩たちもビエンナーレのスタッフを担当しますので、一緒にお客さんたちにビエンナーレの魅力や楽しさをお伝えするのはもちろんですが、山形という場所自体の魅力を、例えばお昼ご飯はここがおすすめですよとか、そういう話も含めてお伝えできるような、そんなビエンナーレになればいいなと思います」

 

 興味を持って学んだ〝街づくり〟を生かす道を歩みながら、クリエイティブと街と人をつなぐ存在として活躍する菅原さんの表情は、晴れやかで楽しそうだった。

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