特集の傍流

2018.9.7

きわめて大真面目に「げそ天」とその将来性を考える。
第一回げそ天ミーティング開催!

2018年10月号(168号)やまがたのげそ天
エンドー 店主 遠藤英則さん、杉の下意匠室 鈴木敏志さん(アートディレクター)、小関司さん( イラストレーター)
山形県山形市

 平成のげそ天ブームの仕掛け人がいるという噂を聞きつけ、向かった先は山形市羽前千歳駅前にある食料品店「エンドー」。店の入口には風にはためく「げそ天」ののぼり。これは期待できそうだ。

 

エンドーの外観。白地に赤の「げそ天」の文字は遠目からでもよく目立つ。

 

 待ち構えていたのは「エンドー」の店主遠藤さんと、ふたりの男性。その正体はアートディレクターの鈴木さんとイラストレーターの小関さん。さぁげそ天バナシに花を咲かせましょう!

 

左からエンドーの店主、遠藤英則さん。杉の下意匠室の鈴木敏志さん、小関司さん。エンドーのイートインスペースにて。

 

山形げそ天界を、この3人が熱くする!
山形ソウルフードのトップを目指すプロジェクト。

 漢字の一に大と書いて「天」。その左右に伸びた広がりを10本のイカの足にしてしまっている。エンドーのげそ天のロゴマーク、これをデザインしたのが鈴木さんと小関さんである。
 おやつ感覚で、惣菜として、酒の肴に、いろいろなシチュエーションにマッチするエンドーのげそ天。老若男女に愛されている所以は“無類のげそ天好き、ではない人たちが商品開発を手がけた”あたりに鍵がありそうだ。

 

エンドーのげそ天は1個300円(税込)から大1,100円(税込)まで。味はプレーン、塩レモン、ピリ辛から選べる。新たにカレー味が近日中に発売。チーズ味も同時に開発中。

 

特別好きじゃなかったですよ(笑
「あ、あるね」くらいの対象でした〈鈴木さん〉

鈴木「いわゆる天丼、あのごはんの上に天ぷらがのってるのってあまり好きじゃないんですよ。天ぷらとごはんは別々に食べたい派。だから最初に遠藤さんが、これ食べてくださいって、げそ天とご飯を別々に出してくれたのが良かったのかもしれない。なにコレ、うまいっ!って。げそ天もそうですけど、エンドーのご飯のおいしさに感動しちゃって」
小関「そうそう。これ、おむすびにしたら最高じゃないですかってすぐ言いましたもんね。そもそもボクはそれまでげそ天を意識して食べたことがなかったと思います。生蕎麦の付け合わせとか、あぁげそ天ね、そんなくらいの関係性でしかなかった」
鈴木「うん。げそ天に過大な意識を持っていなかったのがかえってよかったのかもしれないね。げそ天ってこんなにおいしかったっけ?ってなりましたもん」
遠藤「“げそ天むす”の案は頭のなかにはあったんですよ。それをおふたりにひと押ししてもらって、自信が持てたというか」

 

エンドー 店主 遠藤英則さん)魚の仕入れから裁き、調理、販売もこなすエンドーのマルチプレーヤー。羽前千歳の駅前をげそ天で盛り上げるべく日々奮闘中。

 

 人々が歩いて旅をしていた時代を思わせるような、竹皮に包まれて出てくるげそ天むすび。遠藤さんはお客様に渡すとき「包みを開けるときは気をつけてくださいね。おむすびころりんしちゃいますから」と声をかけるそう。
 天を向いたげそ天がチラ見えするおむすびが3つ。お新香も少し添えられている。竹皮には天然の殺菌効果があることや、適度に蒸気を吸ってくれるためべちゃべちゃになりにくい、さらに冷めてもそのまま電子レンジで温められる、水洗いして再利用も可というメリットがある。加えてこの見た目、日本式弁当の原点を見るような郷愁に駆られる人も多いのでは。

 

エンドーのげそ天むす。

 

現代の在りようを意識した食べ方の提案、
ファストフードへのオマージュ。

 食べ放題ができるほど、エンドーのげそ天はしつこくない。「お子様もお年寄りでも噛み切れる食感が自慢」と遠藤さん。エンドーのげそ天には国産のスルメイカが使われている。日本人がもっともよく食べるイカであり、じつは秋に最旬を迎える食材なのだ。

 

170〜175℃の油で揚げる。油の泡が細かくなったら揚げ上がりのサイン。擦りおろしたショウガを入れた天つゆにつけて食べるのも美味。

 

鈴木「見た目はね、ファストフードのアレですよ。フライドポテト。あの気軽さでげそ天を食べられたらもっと身近になるし、関わり方が変わるだろうというのが商品開発の大きな着眼点でしたね」
小関「ピリ辛や塩レモン、カレーなど味の変化があることで飽きない。そして選べる楽しさも生まれるから」

 

 

 ファストフードというとジャンクフードのイメージを抱く人もいるかもしれないが、それはあくまで提供手段であって中身のことではない。むしろスルメイカの栄養成分を解説すると、タウリンという注目成分を多く含んでいるうえに低カロリー。タンパク質も多めなので、ダイエット向きの食材でもある。

 

遠藤「カレーとチーズはもうあとちょっとで仕上がるかなと。近いうちに出しますんで」
鈴木「ぜひぜひ。待ちわびていますよ」
遠藤「はい、頑張ります」
鈴木「話題づくり兼ねて、まずボクらが仙山線に乗りながら食べますか」
小関「苦笑)」

 

げそ天は、別次元へ行ける可能性を秘めている。〈鈴木さん〉

鈴木「初めて訪ねた時に、羽前千歳の駅前まで攻め込んでげそ天ののぼりが立っていたんです。その不可思議な感じがすごく良くて。当初は万能に使える包装紙を、とかそういうオーダーだったと思うんですけど、それだけで終わっちゃうのがもったいないというか。推しているげそ天を強力に取り上げて、ほかの商品も一緒に引き上げていく手法のほうが効果的なんじゃないかと、ブランディングの話をさせていただきました」

 

杉の下意匠室 アートディレクター 鈴木敏志さん)山形市出身。地元山形のデザイン会社にマネージャー、アートディレクターとして勤務。2017年独立し、合同会社杉の下意匠室を設立。

 

遠藤「話を聞いて、まさかげそ天一本でいけるのかっていう不安がありましたね。それでも店の現状を生かしつつ新しいことを進めていくっていう考え方に共感できたというか。面白いなって」
鈴木「エンドーの店構えというか、いい雰囲気があるんで、それをバツっと切っちゃって格好良く仕上げるのは違うかなと思ってたんですね。人肌を感じつつ、キャッチーで、シンボリックなものを意識しました」
小関「シンボルロゴに関しては、格好良すぎず、親しみのある、若者にも、もしかしたらお年寄りの人にも不快じゃないところを狙ったんです」
遠藤 「笑)よくかわいいって言われます。オシャレと言われたことはないです」
鈴木「オシャレにならないように、かなり気をつけましたから」
小関「はいそうです」

 

素朴で味わいのあるデザインの包装紙やスタンプカードなど。飾らず実直な店のポリシーを具現化したものだ。

 

 

鈴木「このエンドーのげそ天のおいしさがあったから、デザインなり商品開発が実現できた部分はあるよね」
小関「商品開発に関しては、げそ天ってそもそも蕎麦の付け合わせだったりおかずだったりおつまみだったりするじゃないですか。そういう関わりの角度を変えようと。塩味があればカレー味があってもいい、フライドポテトみたいにスナック感覚で食べられるようにしては?という発想から、小学生がおやつがわりに買いに来て食べ歩きしながら帰るみたいな。そこまでいけたら到達点というか。もちろん山形名物に推したいけど、今はまだソウルフードのポジションでいうと、上に“たまこん”がいますよね」

 

杉の下意匠室 イラストレーター 小関司さん)白鷹町出身。仙台、東京でデザイナー、アートディレクターとして勤務。フリーのイラストレーターとしても活動し、2017年独立。

 

鈴木「いるね。たしかにソウルフードなんだけど、まだ別次元へもいけるんじゃないすか、の段階。お惣菜や付け合わせで終わらせないで、エンドーのげそ天なら単品買いもできて、定食、おむすび、弁当、それから2時間食べ放題もある。関わりかたを選べるっていう仕掛けがこれからじわじわと効いていくんじゃないですかね」
遠藤「この間、男子高校生が何人かきてくれて、ひとりの子がげそ天むすを頼んでくれたんですよ。それでこの竹皮に包んで提供したら、ほかの子も“おおーうまそー。俺もー”って。なんか嬉しかったですね」
鈴木「10代男子に効いたってすごいね。げそ天むすもげそ天も、仙山線、奥羽本線の電車の中で食べて欲しいね。“なに食べてるんだろうあの女子高生、まさかげそ天!?”みたいな(笑」
遠藤「いいですね。げそ天シリーズを羽前千歳駅の名物、駅弁にできたらって気持ちで作っています」

 

 

鈴木「エンドーのげそ天に関わらせていただくことで、どこかで山形らしいことに貢献できているかなっていう感覚があります。ボクらふたりとも山形生まれで、いろいろ経験しながら大人になって、そしてまた山形に機縁しているなかで、ここにいるからできた仕事がげそ天のブランディングだった。やりがいもありますし、これは成功させたい。本気で」
小関「ですね。ここからブーム起こせたら」
遠藤「はい、どしどし揚げていきます!」

 

エンドーの惣菜コーナー。

 

もちろん生鮮食品も販売。

 

エンドーの店内に設けられたイートインスペースは、毎日午後3時を過ぎると近所のお母さん達が集まる憩いの場に。

 

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