特集の傍流

2018.10.10

イタリアと山形を、相互に学び合える関係に。

2018年11月号(169号)〝伊山交流〟と山形。
古川澄子さん
山形県高畠町 ⇔ イタリア ミラノ市

 山形とイタリアをつなぐ活動をする人を紹介しながら、イタリアと山形との〝えにし〟について紐解き、意外な共通点や新しい発見・交流の可能性を考える今回の特集〝伊山交流〟と山形。今回は、以前外務省に勤務し、転勤でイタリア・ローマの日本大使館、ミラノの総領事館に勤めていた古川澄子さん(高畠町出身)へのインタビューをお送りする。

 

==========

 

 ーーイタリアに関係してから現在まで、イタリアでどのような活動をされてきましたか?

 

 外務省を辞職してからは、その後はミラノ大学でイタリア近現代文学を専攻して修士を取得し、フリーランスで通訳や翻訳などをやっています。勤めの時と違い今は自由がきく身なので、山形で知り合った国際ドキュメンタリー映画祭の関係者の皆さんや「よみがえりのレシピ」の渡辺智史監督などと協力し、イタリアの友人知人の力を借りて、映画祭とミラノ大学ドキュメンタリー映画祭との相互上映や(TOP画像は当時の様子)、2015年のミラノ万博の際には「よみがえりのレシピ」の上映会をミラノ市内で渡辺監督にも来てもらい実現しました。関心も高く満席となり映画もとても好評で大きな反響がありました。ミラノ万博の際には吉村知事もお越しになり山形のPRイベントがあり、その際知事から「つや姫大使」に任命いただきました。東北のお祭りについてトークをしてほしいと頼まれて浴衣を着て東北の夏祭りについて日本関連のイベントで話したこともあります。

 

「つや姫大使」任命の様子。

 

東北の夏祭りについて紹介した当時の写真。

 

 ーーイタリアの好きなところはどのようなところでしょう?

 

 もちろんイタリアといえば歴史的・芸術的遺産がたくさんあって歴史と文化の豊かな国なのですが、それに加えて、人がオープンで屈託がなく親切なところ、また風景がきれいで季節ごとに豊かな自然の恵みがあり食べ物が美味しいところが好きです。イタリア人は気さくだし、気候も北欧のように厳しくなく、お米も食べるし魚介類も豊富なので、ヨーロッパの中でも日本人の暮らしやすい国だと思います。

 
 

 ーーでは、山形の好きなところは?

 

 イタリアの魅力とも重なりますが、人と自然と食文化が好きです。山形県人は屈託がなくてオープンで、形式張っていないし、良い意味でマイペースな人が多いと感じます。あと沢山の方が情熱と理想を持って農業なり仕事に取り組んでいて、話してみると皆さんそれぞれに素晴らしい趣味や特技があったりして、人間としての幅が広いところ。それとイタリア人との共通点として故郷を愛していること。土地としても都会のものを真似して持ち込むのでなく、山形らしさを大切に我が道を行っているところが好きです。あとは何と言っても山形の魅力は自然が雄大で綺麗で、四季折々の美味しい物が沢山あるところでしょう。

 
 

 ーーイタリアと山形の似ている部分、異なる部分を挙げるとするなら?

 

 私が住んでいるミラノはイタリア随一のインターナショナルな都会なのでイタリア全体からするとちょっと異質なエリアなのですが、一般的に言って自然と人間の生活が近いところ、自然と共に生きているところ、四季折々でたくさんの自然の恵みがあり、地元の食文化を大切にしているところ。食べ物はもちろん美味しいし、発酵酒(ワイン・日本酒)の産地という共通点もあります。あと家族単位で暮らしが動いているところでしょうか。
 異なる部分については、17年もイタリアに住んでいることもあって若干新鮮な視点を失いつつあり思いつかないです。似ている部分の方がずっと多いように感じます。ピエモンテなどの北イタリアは山に囲まれ風景も山形ととても似ていますが、違うところを挙げれば、山形ほどには平地で雪が降らない積もらないということでしょうか。

 
 

 ーーイタリアと山形を渡りあう中で、双方に対する想いや、心に響いたエピソードなどがあればお聞かせください。

 

 毎夏、高畠の実家に帰りますが、イタリアから山形に帰っても全く違和感を感じない自分がいます。むしろ東京に立ち寄ると、街は巨大だし人の動くスピードが速く、新しい建物が次々と出来て、情報量が多過ぎるし外国人のようにキョロキョロしてしまいます。東京はあまりにすべてのことが集中しすぎて巨大化し過ぎだと思います。もう中央集権で首都主導で国を動かしていく時代は終わったと感じていて、これからは地方が東京を通さずに直接外国の地方と交流するlocal to localが主流になると思います。山形も食・日本酒などを通じてイタリア各地と交流を広げています。山形とイタリアとは、農業分野、自然・歴史遺産、文学、映画などでもお互いに学び合えるパートナーだと思うし、これからは有名な観光地を廻る、ショッピングなどよりも、新しい体験・学びや人との交流をしたいから旅行に行く、という「もの」より「体験」、またさらに言えば「心の交流」が大切と思う人が増えていくと思っています。「よみがえりのレシピ」を観てくれたイタリア人からも、自然がきれい、四季それぞれに美しい、各分野の様々な人たちが協力しあって地元農業を盛り上げているのは素晴らしい、などの共感の声を聞き、自然に寄り添ってよりよい未来を作っていきたいという気持ちはイタリアも日本も同じなのだな、と改めて思いました。

 
 

 ーー山形のような地方都市を活性化させるには、どのようなことが必要だと感じますか?

 

 日本全体としても人口が減っていく中、外国人を含むもっと多くの人に訪れてもらって人の交流が増えることが大事と思います。訪問者にとって魅力となるもの、土地にとって大切なものがすでに山形には沢山あります。
山、川、海といった豊かな自然、その自然や祖先を敬う心、季節季節の自然の恵み、親切で誠実で勤勉な県民性。これらはお金をいくら積んでも買えるものではありません。
ないことに目を向けてそれと欠点と考えるのではなく、当たり前すぎてなかなか気付くことのできない、地元にある素晴らしいことを再発見して再評価すること、足元をよく見てみること、が絶対に大切だと思います。そのためには外に出て山形を見てみること、外から来た人が褒めてくれることを改めて考えてみて大切にしていくことが大事と思います。私も大学で東京に出て初めて自分が毎日口にしていたものがどれも素晴らしく美味しいものだったんだ、ありがたいことだったんだ、と分かりました。

 
 

 ーー今後、やりたいと考えていることがあれば教えてください。

 

 山形にもっとイタリア人に来てもらえるように地道な活動を続けていくつもりです。日本への関心は高まり続けていて旅行先に日本を選ぶイタリア人は軒並み増えているし、初めての日本旅行では東京、京都、奈良、宮島、日光、などの有名観光地を巡るのが一般的ですが、二度目以降は、もっと知られていない日本を見てみたいという人が大半です。少しずつでも口コミで着実に訪問者・山形ファンが増えていくような未来を思い描いています。具体的には、イタリア人写真家に山形の写真を撮影してもらい山形とイタリアで写真展を開催して山形の土地と風景を知ってもらう、イタリア語で山形を紹介するフェイスブックを立ち上げたい、などのプランがあります。まだ何も進んでいないのでここで言うのも恥ずかしいのですが、意思表明をしたほうがお尻に日がついて実現に向かうかもしれませんので表明したいと思います。
 あとは引き続き山形で製作されたドキュメンタリー映画のイタリア各地での上映会も実行したいです。映像の力は大きいです。映画を見て、ああ、こんなところに行ってみたい、と思った経験は皆さんありますよね。また、地元高畠町出身の浜田ひろすけの童話など、山形にゆかりのある作家の著作をイタリア語に訳したいという思いもあります。山形でもイタリアでも思いに共鳴して手を差し伸べてくれる方々がたくさんいらっしゃるので協力して少しずつ進めていきたいです。

 
 

 ーー今後も、山形を訪れるイタリア人や山形ファンが増えるよう、様々なプランを構想中の古川さん。ありがとうございました。

 
 

関連記事

上へ