特集の傍流

2018.11.12

二人の若いキーマンが見据えるリノベーションとは。

2018年12月号(170号)YAMAGATA COZY STYLE 2018
合同会社ボタ 代表 佐藤英人さん、デザイナー 須藤修さん
山形県山形市

 山形の街をもっと居心地よく、人々を良質に温められる場所にするには……、そんな観点から切り込んだ今回の特集。対談では空間や店舗のリノベーションを通して街づくりを牽引しているキーマンに登場いただこう。
 佐藤英人さんと須藤修さんは、ともに東北芸術工科大学デザイン工学部の同期という経歴を持ち、現在は互いの拠点が徒歩圏内という距離でそれぞれ活動している。

 

佐藤英人さん(右)/合同会社ボタの代表。2015年よりBOTA coffeeの運営に携わり、2018年6月に法人化。建物の設計や家具製作、「シネマ通りマルシェ」の企画運営活動も実践中。山形市出身。
須藤修さん(左)/家具の修復やデザイナー業を主軸に、プロダクトや空間デザインも手がける。「gura Craft Store」のプロダクトディレクション&デザイナーとしても活躍。南陽市出身。

 

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佐藤さん「ボクは建築・環境デザイン学科、須藤くんはプロダクトデザイン学科で当時から何かと絡む機会はあったけど、ぐっと近く関わり合ったのは2014年の第1回リノベーションスクール@山形のときかな」

 

須藤さん「そうだね。対象案件に対して事業化に向けた本気のプランニングを行うっていう、ボクたちにとっても貴重な経験だったと思う。第1回目の対象案件がとんがりビルとBOTA coffeeとしてそれぞれ事業化されて、リノベーションの利点を見ることができたという点でも」

 

佐藤さん「うん。リノベーションの語源はRe Innovationという造語。革新だったり付加価値だったり創造だったり、その場所やモノに対して新しい命を吹き込むような行為。建築的なハードの部分だけじゃなくて、コンテンツとか、人とか、ソフトの部分もすごい重要で、どういった人の行為がそこにあるかということも大事だし、歴史とか物語とかを踏まえて大切にすることが真のリノベーションだと思う」

 

須藤さん「リフォームが単に元に戻す行為だとすると、リノベーションの場合はもともとあるモノの活かしかたを考えながら仕事に入ることができるから、その段階が面白い。家具なら前のオーナーがつけた傷とか悪いところもいい方向に変えて別の違う人に伝えられる、他者と関われる行為がくっついてくるんだよね」

 

佐藤さん「傷って言葉いいね。傷って人によっては欠点だけど、それが魅力的な部分とも捉えられるね。そこが須藤くんの作る家具の良さにもなる。リペアをするときに必ず通る過程ってある?」

 

須藤さん「仕事を受ける時にこう直そうとか、そういうアイデアはあえて何も持っていかない(笑)。話を聞いているうちに『ああこう使いたいんだな』って輪郭が見えてくると、直す作業自体は最終行為で、過程に割く時間はコミュニケーションがほとんど」

 

佐藤さん「その見えない部分にかける時間っていうか、ボクはそこに須藤くんの商品価値があると思っているし、建物の再生、すなわち街の表情をより居心地よくリノベーションしていくときも、背景を知らずにはできないと思うんだよね。まず一番に大家さんとか元のオーナーに会ってコミュニケーションすることからはじめないと。ボクらのようなプレイヤーがいくら街を元気にしたいって騒いでも、オーナーたちの気持ちをも含めてリノベーションして一緒に成長できたらなと思う」

 

佐藤さんがサブユニットを務めたリノベーションスクールにて。「使い込んだり馴染むことで価値が高まっていくモノが好き」と佐藤さん。

 

須藤さん「それってすごく大事なことだね。昔からあるものをリセットするんじゃなくて、理解を広げて加えていくことで入口を多くしていく感覚っていうか。これまで交わらなかったチャンネルの人たちや街の風景も新旧織り交ぜて、もっと言えばリノベーションをきっかけに周りも含めて眺めてもらえたら知らなかった街の顔が見えたりするよっていうね」

 

佐藤さん「すごくわかる。じつは店を始めてから、街の案内人にならないとっていう気持ちがあって。街づくりってどうしても行政のイメージがあるけど、実際はボクらのような民間の小さい企業一つひとつが集積して街を作っているわけで、点と点をつなげるための回遊するきっかけを発信することも必要なんだよね。公共空間をどううまく使っていくかが、居心地のいい街をつくるためのポイントでもあるのかなと。ボクはその辺にも力を入れて行きたいですね」

 

須藤さん「これからに関して言えば、例えば新品を買う、モノを直すってことがあったときに、頭の中に選択肢がひとつしかないと思い込んじゃうことは豊かとはいえないと思うんですよ。枠にはめ込まないで自由に考えられることのほうが楽しいと思うんです。そういうときに壊すしかないとか価値がないって決めつけないでほしくて。佐藤くんやボクのような存在を活用してもらうことで思考の可能性を広げてもらえたら、街だってデザインだって家具だってもっと身近になっていくんじゃないかなと思うんです。選択肢のひとつに思い浮かべてもらえる存在なれたらいいですね」

 

須藤さんが手がけた、重厚さと近代的なハンサムさを併せ持つ遠藤鮮魚店(南陽市)。「未来のためにリペア、リノベーションして愛着を育てていくことも大事」と須藤さん。

 

 

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