特集の傍流

2019.2.8

アマハゲの行事を守るために必要なこと、自治体の取り組みとは。

2019年3月号(173号)アマハゲをひもとく。
遊佐のアマハゲ保存会会長/遊佐町長 時田博機さん
山形県飽海郡遊佐町

 遊佐町長で、「遊佐のアマハゲ保存会」会長の時田さんは、ユネスコ無形文化遺産の登録を受け、「長く継続してきたものに光が当たり大変光栄。これまでは、各集落それぞれで行なってきたが、登録を受け町全体で、継承保存に努めていく必要があると思う」と話す。一方、登録されたことで、町の広報発信への大きな効果を期待する反面、「行なわれているのが小さな集落で、負担になるのではないか」と心配している。アマハゲは地域の神事・民俗芸能であり、観光資源としての活用ではなく保存継承が大切だと時田会長は考える。

 

次代への想いを語る時田町長。

 

泣きじゃくる子どもたちとは対照的に、にこやかにアマハゲを迎え入れる親族たち。遠方で暮らす親族たちも、この日ばかりは皆和やかに集う。

 

地元の若者たちによる、継承に重点を置いていきたい。

 アマハゲに扮する若者は、時代の流れとともに変化してきた。昔は、15歳以上で各集落に住む未婚の男性が担当してきたが、現在はそれだけでは足りないため、30〜40代の既婚者も加わっている。「人材については、いないことにはどうにもならない。引っ越してしまった方がアマハゲのために帰省するケースもあります。今後、担い手が減少していったら、集落からだけではなく町内全体から人員を募ることなども検討しないといけなくなるかもしれない」と時田会長は危惧する。

 

アマハゲのケンダン(蓑)を身につける、鳥崎集落の担い手。鳥崎集落では昭和25年頃から、15歳になると担い手に加わるようになり、それが現在まで続いている。しかし、後継者不足に悩むのはどの集落も同じだ。

 

 今回の登録により、広く知られるようになったアマハゲだが、実は3集落以外は、その詳細を知らない住民が多いという。観光ではなく神事のため、親戚や知人がいる場合以外は、集落外の人間がアマハゲに触れる機会は少ない。

 

ユネスコに申請中の頃から、女鹿、滝ノ浦、鳥崎に看板やノボリを設置し、アマハゲへの理解を促している。 写真提供/遊佐町教育委員会

 

 時田会長は、「『名前は聞いたことはある』くらいの認識の方が多いですね。しかし、嬉しいことに昨年、遊佐小学校の生徒がアマハゲの研究をしてくれました。自分でお面を作ったり、非常によくできた研究内容でした。今後は、教育分野とも連携して、3集落だけではなく、町全体で学習する機会を設け、文化を誇りに感じてもらえるようにしていきたい」と話す。

 

急勾配の石段がある女鹿の八幡神社から村に降りてきたアマハゲ。裏声で「ホッ!ホー!」と声をあげたり、戒訓めいたことも言う。

 

滝ノ浦のアマハゲは、老爺のような顔の面が特徴。始終無言で子どもを抱き上げたり、家人を玄関へ連れ出そうとする。

 

写真は鳥崎集落のアマハゲ。アマハゲは神様であるため、皆で囲んで酒や料理でもてなし、包み金や丸餅を渡す。集落によっては、丸餅の1つを護符として置いていくところも。

 

神事として守り続けるために、町のバックアップを。

 今回のユネスコ無形文化遺産に登録された10件の来訪神行事は、全国協議会を結成している。「これまで、協議会の集まりには会長が参加することが多かったが、今後は実際に地域で担い手となる若者に参加してもらいたいと考えている。交流や研修を通してあるべき姿を考えていくことが重要。他の地域と情報共有して、保存に努めることが大切だと思う」と時田会長は話す。
 2月からは、町内の温泉施設「鳥海温泉 遊楽里(ゆらり)」にアマハゲの常設展を行うことになった。ここでは実際に使われたケンダンやアマハゲのパネルの展示、動画の上映などを予定している。

 

2月1日から「鳥海温泉 遊楽里(ゆらり)」での展示が始まった。5月26日までの予定。9:00〜17:00で入場無料。

 

遊楽里には鳥崎のアマハゲの顔出しパネルが設置されている。そのほか、遊佐町生涯学習センターには女鹿、遊佐駅には滝ノ浦のパネルを設置している。

 

 時田会長は今後のアマハゲについて、「時代の変化とともに、行事の担い手となる人材確保の方法などは工夫する必要はあるが、神事なので今後もできるだけ変えずに進めていくことが大切。そのために町としてバックアップをしていきたい」と話す。町をあげてアマハゲを守り、次代に継承していく準備はすでに始まっている。

 

集落を練り歩く女鹿のアマハゲ。

 

関連記事

上へ