特集の傍流

2019.4.12

市民が善意で集い、地元の出版物を守る活動がありました。

2019年5月号(175号)やまがた 市民の出版物。
山形市立図書館 館長 横倉明史さん、小荷駄のみどりから… 運営委員長 井上幸弘さん
山形県山形市

昭和54年に開館した山形市立図書館で、開館当時より行われている「市民の出版物展」をご存知だろうか。これは、山形市立図書館がその年に収集した、山形市出身や在住の著者による一般図書や児童図書をはじめ、教育関係の出版物、市内で発行された雑誌・フリーペーパーを展示するものだ。今年の2〜3月に行われた同展では、2018年に図書館が収集した出版物750作品の内518作品を展示した。来場者は例年、期間中に800〜900人ほどが訪れている。

 

「2018市民の出版物展」の様子。郷土雑誌や文学関連の書籍が多い。

 

自費出版の詩集や歌集、小説、学校の文集まで。
幅広く収集・保存し次代に伝える役割を担う。

 山形市立図書館では、配布や販売の規模を問わず、できる限り多くの山形市にゆかりのある出版物を収集・保存している。中には、小中学校で出した文集や、家族や友人に配布した私家本もあり、ジャンルを問わず幅広い。館長の横倉さんは、「寄贈の受付や購入によって、できる限り収集をしています。市民の方々の文化的な創作活動の成果を蓄積し、その記録を未来に繋げていけるよう取り組んでいます。もしかしたら、その中から、遠い未来に評価される作品も出てくるかもしれませんよね」と話す。また、「山形のものづくり文化にも繋がるのかもしれませんが、山形の方は記録していくことが得意だと感じています。せっかくの記録なので収集・保存し、展示を通してたくさんの方の目に触れる機会を設け、お互いに多面的な評価のできる場にしたい」と続ける。

 

山形市立図書館の館長に就任して1年目の横倉さん(左)と、ボランティア「小荷駄のみどりから…」の井上さん(右)。

 

暮らしと本とのかかわりについての意義も語ってくださった横倉館長。

 

市立図書館企画運営係長の佐々木さん(左)からもお話をうかがうことができた。

 

佐々木さんいわく、展示されている本の中でも、県内出身の著名な作家の著書に、毎年注目が集まるという。

 

図書館ボランティアによる市民のための出版文化賞

 同館では毎年、図書館ボランティア「小荷駄のみどりから…」が、「小荷駄のみどり出版文化賞」を選考している。
「小荷駄のみどりから…」は、山形市立図書館の意向調査の結果、「ボランティア活動がしたい」との声が多数寄せられたことを機に、平成13年3月に発足し、活動内容によって企画・広報、図書整理、読み聞かせ(高齢者・児童)のグループに分かれている。

 

「小荷駄のみどりから…」の会員は60人程で、年齢は30〜80代と幅広い。会員は随時募集中で、市立図書館に通えれば誰でも参加可能。ご希望の方は「小荷駄のみどりから…」公式ブログからメールまたは、図書館カウンターへ問い合わせを。写真提供/山形市立図書館

 

ボランティア運営委員長の井上幸弘さんは、「〝小荷駄のみどり出版文化賞〟は、山形市民の著作または編者の手による出版物で、広く市民に読んでもらいたいと思われる、優れた内容または貴重な記録である作品を選んでいます」と選考基準を話す。
文化賞は今年で13回を数え、これまでの受賞作品は、山形の食文化に関するレシピ本や、大学教員の調査報告書などジャンルはさまざまだ。

 

第13回「小荷駄のみどり出版文化賞」は、滝口克典さんの著書「若者たちはヤマガタで何を企てているか?」が選ばれた。

 

過去に受賞した作品も展示している。

 

本として記録に残し、未来に繋げていく

「一市民が自分の考えや想いを発信する方法は様々ですが、出版物として形にすることで、記録に残り続ける良さがあります。さらに、たくさんの人が集まる図書館で発表し、手に取って見てもらうことで、新たな交流や創作活動の励みに繋がれば嬉しいですね」と井上さん。市民による市民のための取り組みは、山形の文化や歴史のレコーダーとしての役割を担い続け、時代を超えて市民の想いを繋いでいくのかもしれない。

 

あかねヶ丘へ移転した山形市立商業高等学校跡地に建設され、1979年7月に開館した「山形市立図書館」。40年を経過したいまも、モダンな雰囲気を湛えている。

 

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