特集の傍流

2019.8.6

地元のハッカを甦らせ、地域を盛り上げる人々がいます。

2019年9月号(179号)やまがたとハッカ。
ハッカの風再びプロジェクト/高擶薄荷爽草の会 長谷川喜久さん、押野日菜子さん、天童市立高擶小学校6年生の皆さん
山形県天童市

2015年に受講した天童市の市民講座で〝高擶ハッカ〟を知った長谷川喜久さん。漂ってくる香りなどから、田んぼのあぜ道にハッカが自生していることは気づいていたが、その背景や歴史は知らなかったという。興味を持った長谷川さんは、講座終了後も地元の郷土史家である野口一雄さん(※2019年4/5発行号、市民の出版物特集にて登場)に高擶ハッカの歴史を教わり、また、北海道北見市にも足を運んだ。その後、高擶ハッカを広めるため、2017年に高擶地域づくり委員会の活動の一環で、プロジェクトを立ち上げ活動を続けている。

 

ハッカの風再びプロジェクト 高擶薄荷爽草の会リーダー長谷川喜久さん。農業を営みながら、高擶薄荷を広める活動を続けている。天童市農業委員、市食育推進委員を務める。

 

地元の小学生たちとともに、高擶ハッカの再興に取り組む

 プロジェクトでは、拠点となる高擶公民館の花壇やメンバーの畑で、高擶で自生していたハッカを栽培し繁殖に努めるほか、自分たちで蒸留し、ハッカの取卸油の抽出も行っている。
昨年からは、公民館の向かいに位置する天童市立高擶小学校の6年生も活動に参加。小学校の校内に高擶ハッカを栽培したり、小学生と一緒に公民館の文化祭でハッカクッキーやハッカ茶を振る舞うなど、地域を巻き込み活動を展開している。今年も引き続き6年生がプロジェクトに参加し、先日は総合学習の時間を利用し、ハッカの収穫が行われた。今夏は、各自が自宅に持ち帰り、鉢植えやペットボトルを使い、ハッカの栽培方法を研究する。

 

高擶小学校の一角にある花壇には、しっかりと屯田兵・石山伝次郎氏に関する記載もある。

 

収穫の様子。昨年の6年生のハッカの学習やハッカへの想いを引き継いで、今年の6年生(26名)が関わる。

 

総合学習の様子。地元天童市で農業を営む、プロジェクトメンバーのひとりである押野日菜子さん(写真左)は、ハッカクッキーの考案者でもある。

 

「ハッカは種を採取するのではなく、根を植えて繁殖させていますが、栽培については試行錯誤です。ときには、学校で栽培している小学生らから教えられることもあります。最近、高擶小学校の学区内に、大規模な住宅地が造成され、住民が増えました。高擶ハッカを通して、新旧の住民の交流や、住んでいる地域の良さを知るきっかけにもなれば嬉しい」と長谷川さんは期待する。

 

若干の茎と根を残しながら、ハッカのほぼ全草を刈り取っていく子どもたち。

 

刈り取ったハッカを何本か組み合わせて、茎の根元の部分を藁で結わえていく。

 

結わえるとこのような感じ。

 

束ねる、結わえる、それぞれの作業を分担しながらテキパキと仕事を進めていく生徒たち。

 

刈り取ったハッカを教室にて陰干し。

 

十分に乾燥したハッカを、中に網のような仕切りがある蒸留フラスコの中につめていく。

 

フラスコ内の水を加熱していく。

 

精油分を含んだ水蒸気は、ガラス管を通って別の器で冷却され、液体になっていく。

 

分離して溜まった液体。上の薄い黄色の部分が、ハッカの原油ともいえる「取卸油」だ。これを遠心分離機にかけて精製すると、我々がよく知る透明なハッカ油となる。

 

ハッカから広がる、地区内外の交流

 「いずれは、地域で小さな蒸溜所を設けて、ハッカの加工や苗の販売を通して交流が生まれる場所を地区内に作りたい。昔使われていたという蒸留器も市内で見つかりました(※前記事を参照)。大変貴重なものなので、たくさんの方に見ていただけるところに展示したいとも考えています」と今後の展望を語る長谷川さん。そのほかにも、ハッカを取り入れた観光プランも考えているそう。

「ローマの詩人が昔、味や香りに清涼感をもたらすミントを『もてなしのハーブ』と呼んでいました。高擶ハッカを通して、たくさんの方をおもてなしし、よりよい町づくりに繋げていければ。高擶ハッカは、スポットが当たらずに、ほとんどの方に忘れられていた時代も、道端で雑草としてずっと咲き続け、気がついてくれるのを待っていてくれたのだと思うんです。今後も大切に活動を続けていきたいです」と長谷川さんは話してくれた。

高擶が、爽快な香りとともに、日増しに盛り上がっていく。

 

高擶の薄荷が再び多くの人々に注目される日も、そう遠くないかもしれない。

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