特集の傍流

2019.10.10

映画祭スタッフとして支えて得たもの、地元の皆に伝えたいこと。

2019年11月号(181号)やまがたと映画祭。
認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭 事務局員 遠藤徹さん、ドキュ山ユースメンバー 菊地大雅さん、ボランティアスタッフ 寒河江瑞希さん
山形県山形市

「首都圏の大学に進学し、文学を専攻していて、周囲には映画に詳しい学生もいました。出身地を告げると『ドキュメンタリー映画祭の街だね』と返されることも多かったです。離れてみて映画祭のすごさを知りました」と話すのは山辺町出身の遠藤さん(TOP画像)。就職を考えたときに、ふと思い出してアクセスした、山形国際ドキュメンタリー映画祭のホームページに求人があり応募し、2017年に事務局に入局した。現在は、作品選考にも関わるほか、高校生ボランティアで構成される「ドキュ山ユース」を率いる。

 

自分と同じ悔しさを、高校生たちに味わせたくない

 遠藤さんは、首都圏に進学する以前から、映画は好きで映画祭のことも知っていたという。しかし、「ドキュメンタリーというと敷居を高く感じていましたし、地味で暗そうというイメージもあって、興味はありましたが、参加したことはありませんでした。でも、今、改めて過去の映画祭を振り返ると、上映作品も来県した監督もすごい方ばかりなんですよ。自分が高校生まで映画祭に参加しなかったことを悔しく感じています。だから同じ思いをする高校生がいないようにしたいです。また、お客様の世代拡大にも繋げていければ」と遠藤さんは話す。

 

スタッフ、ボランティア、高校生のドキュ山ユースの一人ひとりが映画祭と市民の架け橋として、私たちに映画祭の魅力を伝えてくれる。 写真提供/山形国際ドキュメンタリー映画祭事務局

 

若い世代にも広げたい映画祭の関心

 高校生ボランティアチームの「ドキュ山ユース」は、2017年の映画祭を機に結成されたが、映画祭以降も活動を続け、文翔館での野外上映会や高校での放課後上映会など、若い世代に映画祭を広めるため活動を続けている。「映画を観に行くとか、イベントやボランティアに参加するとか、映画祭への関わり方や興味の幅はさまざまあって良いし、ボランティア参加のきっかけも、ドキュメンタリーに興味があるからだけではなくて、国際交流への関心や、ボランティア活動への意欲など、いろいろなグラデーションがあって良いと思います。ドキュ山ユースとしては、高校生達自身の自主性を尊重しながら、映画祭への理解を若い世代にも広げていきたいです」と遠藤さんは話す。
 世代を超えて着実に広がっていく映画祭の輪。それが映画祭を盛り上げていく。

 

映画祭以外でも展開する、高校生ボランティアの地道な活動。

「ドキュ山ユース」メンバーの菊地さんは、「やはり、自主上映会をした時の達成感はとても大きいものです。企画・運営した陳梓桓(チャン・ジーウン)監督を招いての上映会はドキュメンタリー映画との関わりがものすごく近くなったように感じました。多くの方に来ていただきうれしかったです」と活動の手応えを話す。

 

「ドキュ山ユース」有志による初の自主上映会が行われたのは2018年2月。山形市民会館で、中央に写る陳梓桓(チャン・ジーウン)監督と記念撮影。左から3番目が菊地さん。 写真提供/山形国際ドキュメンタリー映画祭事務局

 

自主上映会の映画上映後に行われたパネルディスカッション・質疑応答にて、客席からの質問を読み上げる菊地さん。 写真提供/山形国際ドキュメンタリー映画祭事務局

 

 もともとドキュメンタリーに興味があり、2017年に初めてボランティアに参加した菊地さん。今回の映画祭では、多くの市民に映画祭をより身近に感じてもらうために、ユース推薦の上映作品や期間中のイベントをまとめたリーフレットも手がけているという。菊地さんは、「まずは映画祭の空気に触れてほしいです。映画を観るだけでなく様々なイベントも催されていますので気軽に参加していただき、少しずつ映画祭の深みにはまっていってほしい。自分自身、活動を通して世界が広がったと感じていますし、できるのなら一生を通じて何らかの形で関わっていきたいと考えています。今後は自分と同じような経験をする高校生が増えていくとうれしいですし、増えていくとも思います。そして、若者の関わりというものに対してユースの果たす役割は重要だと思います」と話す。ユースの活動を通し、新たな時代を担う世代が育成されていく。市民が主体となって行われる映画祭の未来は明るそうだ。

 

菊地大雅さん)山形県立天童高等学校3年生。 撮影協力/フォーラム山形

 

ドキュメンタリー映画との出会いが、自分の世界を変えることもある。

 当時、通っていた高校の部活の顧問に促され、事務局主催のワークショップに参加したのを機に興味をもち、「ドキュ山ユース」に加わり、高校を卒業した現在も映画祭のボランティアとして関わる寒河江さん。映画祭では監督と観客の質疑応答で司会も務めた。「同級生からは『すごいステージに立ったんだね』と驚かれました。企画した野外上映会に、同級生もたくさん来てくれたのもうれしかったです。『こういうのも悪くないね』『すごく楽しかった』と言ってもらえたりして。ドキュメンタリーというと難しいイメージが先行して、中高生は触れる機会が少ないかもしれません。若い世代にももっと興味を持ってもらえる映画祭になれば」と話す。

 

高校生当時の、寒河江さんの活動の様子。「ドキュ山ユース」初の自主上映会に関わったほか、チラシの配布、映画祭での司会、ラジオ出演など多岐にわたった。

 

自主上映会のあとに設けられた意見交流の場。高校生も大人も対等に意見をかわしあった。

 

 寒河江さんは高校卒業後、ユースでの活動をきっかけに映像や音響を学ぶ専門学校へと進学した。「ドキュ山ユースでは沢山のことを学びましたが、その中で一番大切だなと思ったのが『誰に、どのように伝えるか?』ということでした。高校生にドキュメンタリー映画を知って欲しいならこの映画だ、高校生が来やすいカフェで上映会するのはどうだろうなど、コンセプトに合わせて伝える形を考えるのがとても難しかったです。でもそれが楽しいところでもありました。高校生のときに、それを体感して学べたのは本当に良い経験だったと思います」

 

舞台照明家を目指しているという寒河江瑞希さんは、仙台の専門学校に通う18歳。ほかにも映像編集などを学び、自らの夢へと歩んでいる。 撮影協力/SLOW JAM

 

 映画祭の魅力について、「ドキュメンタリー映画は内容の幅が広いので、マップを片手に自分の観たい作品を回り鑑賞するのが楽しいです。上映後の監督と観客の質疑応答は映画祭ならではですので、参加していただければもっと楽しめると思います。また、県外の方には、鑑賞の合間に山形のおいしい食にも触れてほしいです」と寒河江さんは熱弁する。10代も虜にするパワーがドキュメンタリー映画祭にはある。今後については、「山形の人は芸術に興味があるけど、行動に移さないと聞いたことがあります。もっと、ドキュメンタリーのこと、映画祭のことを広く知っていただきたいし、作品との出会いが自分自身の世界を変えるということも知ってほしい。私自身、おばあちゃんになっても、映画祭には関わっていきたいですね」と話す。
 山形と言えば「山形国際ドキュメンタリー映画祭」のようなメインのイベントになっていってほしいと語ってくれた寒河江さん。「今回は私もボランティアで参加するのでぜひ話しかけてください!」とのこと。市民に新たなファンを拡大しながら、映画祭は回を重ねるごとに成長していく。
 

関連記事

上へ