特集の傍流

2020.3.10

山形県の魚「サクラマス」を父に、「ニジマス」を母に持つ、ご当地サーモンの養殖に取り組んでいます。

2020年4月号(186号)わたし、◯◯一年生。
岩魚屋 代表 佐藤竹美さん
山形県最上町

 今年2月に、山形市のメトロポリタン山形でお披露目されたばかりの山形発のブランド魚「ニジサクラ」をご存知だろうか? 2013(平成25)年度から米沢市にある山形県の『内水面水産試験場』で開発がスタートした魚で、県の魚であるサクラマスと、東根市が養殖発祥地のひとつと言われているニジマスの交配種だ。母にあたるニジマスは、アメリカで育種された養殖向きのドナルドソン系を用い、また、サクラマスを親にもつ魚は全国でも初めてだという。

 

上質な脂で、食感も抜群。試食会でも好評を博す。

 2017(平成29)年から業者による養殖がスタートしたが、昨年末から新たに取り組み始めたのが最上町の養殖業者『岩魚屋』だ。幼魚の状態で仕入れ、約2年かけて体長約50センチ、重さ2キロまで育て出荷する予定になっている。代表の佐藤さんは「イワナ以外を扱うのは初めてですが、マスとイワナの養殖方法は似ていることを知っていたので、試験場から養殖の打診をいただき、ふたつ返事で了承しました」と話す。

 

佐藤竹美さん)1982(昭和57)年よりイワナの養殖業をスタート。現在、約300匹のニジサクラを養殖。自身が住む最上町黒沢地区のまちづくり委員会の会長も務め、郷土芸能の振興や、東日本大震災を機に始まった宮城県気仙沼市本吉町との交流などの活動に尽力する。

 

『岩魚屋』のニジサクラ。

 

 『岩魚屋』の養殖では、300メートルほど登ったところから引いている湧き水を使用しており、近くに流れる川の水などは使用していない。湧き水の水温は夏場でも14〜15℃と、季節を問わず一定に保たれ養殖に適しているそうだ。また、病気に感染する心配も少ないという。

 

 

 

湧き水の周辺からは、縄文時代に使われていたヤジリが出土しているそうで、はるか昔からこの地域に住む人々とともに歩んできた清流によって、ニジサクラは大切に育まれているようだ。

 

 ニジサクラの養殖について佐藤さんは「イワナに比べると警戒心が強いため、エサを与えるときも人の気配を消したり配慮する部分はありますが、今のところ、養殖が難しい印象はありません」と続ける。

 

 

 ニジサクラは生まれてくる稚魚は全てメス。また成熟せずに卵も産まないため、栄養が肉にいき、上質な脂ともっちりとした食感になるという。刺身や寿司、カルパッチョなど生食にも適し、お披露目の際に行われた試食会で並んだポワレやパイ包み焼きなども好評だったという。
「新挑戦というのは楽しみなことばかり。私がニジサクラの養殖をしていることを知っている友人たちからも『市場に出るのはいつ?』と訊かれます。私も自分で養殖したニジサクラを早く味わってみたいですね」と佐藤さんは笑顔を見せる。
 ニジサクラは、当面は試食会などでのPRを続けていき、1万匹以上を確保できる見込みの2022年度から本格的に販売を開始する予定だ。山形の新たな名産に期待が集まる。

 

技術指導に訪れた内水面水産試験場の専門研究員、野口大悟さん(右)とともに、期待に会話も弾む。

 
 

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