特集の傍流

2020.3.10

遊佐から世界へ。琥珀色に輝く新たな挑戦。

2020年4月号(186号)わたし、◯◯一年生。
遊佐蒸溜所 齋藤美帆さん、岡田汐音さん
山形県遊佐町

 山形県内唯一の焼酎専門メーカー『金龍』が手掛ける『遊佐蒸溜所』。鳥海山由来のきれいな水を豊富に利用できる遊佐町の田園地帯に社を構え、2018年秋から稼働している。
「これまで培ってきた酒づくりのノウハウは封印し、一から取り組むことがウイスキーへのリスペクト」という佐々木雅晴社長の方針のもと、ウイスキーづくり未経験の若手スタッフを抜擢しスタート。国内のクラフト蒸留所での研修や、蒸留設備を扱うメーカーでスコットランドのフォーサイス社の指導を受け、現在は入社3年目の齋藤さんと2年目の岡田さんら4人のチームで取り組んでいる。

 

ウイスキーの本場、スコットランド製のポットスチル。『遊佐蒸溜所』は4550㎡の敷地に蒸留棟と2棟の貯蔵庫を備え、1日で約5000ℓの仕込みができるキャパシティを持つ。

 

 

本場をリスペクトした実直なものづくり

 主に蒸留を担当している齋藤さんは、入社した当日に同社がウイスキー事業に参入することを知ったという。その半年後には「準備室」に配属され、蒸留所の建設前からウイスキー事業に取り組んでいる。「当初は、ウイスキーづくりについて全く知識がありませんでしたから、不安も大きかったです。しかし、蒸留所の設備が整うにつれ、いよいよ自分たちの手でウイスキーがつくれるのだという期待が高まっていきました。実際にウイスキーをつくれるようになったときはとても感動しましたね」と振り返る。

 

設備も工程もスコットランド流を踏襲。「毎日のもろみの状態に合わせ蒸留釜の蒸気量を調整しなければならず、大変ですがやりがいもある」と齋藤さん。

 

 一方で、齋藤さんの一年後輩にあたる岡田さんは、就職活動を始めた頃に、同社のウイスキー事業参入を知ったそうだ。もともとお酒が好きで、友人の影響でウイスキーも好んで飲んでいたという岡田さんは、新事業への挑戦という魅力にも惹かれ入社を希望した。現在は製造の中でも主に糖化発酵の工程と広報を担当している。

 

粉砕から仕込み(糖化)までの工程を説明する岡田さん。

 

麦芽を粉砕するモルトミル。ウイスキーづくりに最適な粉砕比率になるよう調節しながら稼働させる。

 

 遊佐蒸溜所でのウイスキーづくりは、現在2期目。1期目の1年間では約600樽を仕込み貯蔵庫で熟成中だ。岡田さんはウイスキーの出来について「教わった通りにつくった1期目はクリーンで洗練された味になりました。おいしいのですが、それは“スコットランド流の味”。2期目は試行錯誤しながら進め、より甘みのあるフルーティーな味わいに仕上がっています」と説明する。

 

発酵には木桶を使用。木目の隙間に乳酸菌がつくことで、華やかでフルーティーなもろみができるという。

 

蒸留液のアルコール度数や香りを確認し、原酒に適した部分を抽出するミドルカットの作業中。

 

カットポイントによって、原酒の特徴は大きく左右される。

 

原酒をテイスティングする齋藤さん。週5日のペースで蒸留し、毎日テイスティングを行なっている。

 

適度な湿度が求められる貯蔵庫は土間になっている。地下2m程のところに鳥海山麓の地下水が流れていて、その湿気を生かしている。

 

 販売開始は2022年頃を予定している。今後もシングルモルトに特化し、品質を重視したウイスキーを目指しているという。「ウイスキーは原酒ができてすぐに販売できるわけではなく、数年から数十年の熟成期間を経て商品になります。今やっていることの結果が出るまでには少し時間がかかりますが、さまざまな試みを通して本場の作り方に敬意を払いながら“遊佐蒸溜所の味”を模索していければ」と齋藤さんは話す。
 鳥海山の麓を舞台に、若手たちの挑戦はまだまだ始まったばかりだ。

 

写真提供/遊佐蒸溜所

 

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