特集の傍流

2020.4.14

パッケージには理由がありました。歴史と意匠から見える背景とは。【後編】

2020年5月号(187号)やまがた百年パッケージ。
十一屋 代表取締役社長 松倉公一さん
山形県山形市

 山形DNAが反応するパッケージの魅力に迫る、特集「やまがた百年パッケージ」。最後となる後編は、昭和40年代の山形中心市街地の活気を想起させる、根強いファンも多いこのお菓子を。

 

山形の発展を祝い、歴史の節目に生まれたお菓子たちが定番に。
店の看板商品となった銘菓のパッケージは。

 十一屋の看板商品といえばこのふたつを思い浮かべる人も多いのでは。西洋のお城が図案化された包装が印象的な「ゴールドシャトー」は、山形駅の前身となる建物、山形ステーションデパートの開業を記念して誕生。一方「チルミー」は、十一屋本店の新装開店を記念して生まれたという。
「本店は、チルチルとミチルが青い鳥を探して夢の世界を旅する童話の世界観をイメージした建物。また、当時は珍しかった乳菓にチャレンジした商品が、ゴールドシャトーなんです」と松倉社長。そしてパッケージデザインはどちらも1970〜90年代に山形のデザイン界を牽引した加藤和夫氏の手によるもので、十一屋が長く作り続けている菓子パッケージは加藤氏の意匠によるものが多いそう。

 

マロンクリーム餡を洋風生地で包んだ和洋菓子ゴールドシャトー(1967年生まれ)と、チーズ風味のホイル包み焼菓子チルミー(1972年生まれ)。いずれも税込119円。

 

「ネーミングのセンスもそうですが、柔らかいタッチで描かれた加藤さんの文字は味があって好きでした。現代的なフォントにはない個性がありますし、商品の魅力をより引き立ててくれる気がします。先代を務めた母の時代から、商品パッケージのデザインは加藤さんに頼っていましたね」と松倉社長。

 

永く愛される菓子、店づくりを

 十一屋の創業はいまから216年も前に遡る。山形市地蔵町、現在の七日町5丁目で創業以来、菓子製造業に努めてきた。現在、村山地域を中心に全11店舗を構えるが、七日町の本店と桜田店にはレストランも併設し、根強いファンを持つ山形の洋食文化を支え続けている。松倉社長は「私事ながら私は祖父を昭和24年に、先代の父を昭和25年に亡くしており、残念ながら肉親から当代の歴史を伝え聞く機会はそう多くありませんでした。ですので店の歴史については山形商業高等学校産業調査部の資料などで知ったものですが、資料のなかに昭和2年に開かれた山形産業博覧会のチラシがあって、そこに十一屋が喫茶店をオープンしたという記述が残っていたんです。当時から小売業だけでなく、サービス業も担っていたことがわかりました。十一屋の気風として、昔から誰もが気軽に寄れるサロンのような店づくりを目指していたんだなと感じています」と歩みを振り返る。

 

十一屋で製造している商品の一部。

 

 十一屋には今回紹介したゴールドシャトーやチルミーのほかに、羊羹やふうき豆、最中といった息の長い商品が多数ある。その一方で近年はお米パイやシャインマスカット大福といったヒット作を生み出し、話題作りには事欠かない。時代の風をよみ、地域に愛される商品づくりをしてきた姿勢がいまを支える証だろうか。松倉社長は「ゴールドシャトーやチルミーは進物として根強い人気があります。発売からおよそ50年の歳月が流れましたが、それだけ皆さまの身近な存在でいられることには感謝しかありません」とあくまでも謙虚だ。

 

「十一屋のロゴも加藤氏の作です。真心のリボンで菓子を包むという思いが込められています」と松倉社長。

 

関連記事

上へ