特集の傍流

2020.4.14

明治期の機材から印刷物まで、印刷の歴史を保存した資料館。印刷の今昔から学ぶ、パッケージの楽しみ方とは。

2020年5月号(187号)やまがた百年パッケージ。
山形謄写印刷資料館 館長 (中央印刷 代表取締役社長)後藤卓也さん
山形県山形市

 山形市銅町の中央印刷社内に構える「山形謄写印刷資料館(ガリ版資料館)」をご存知だろうか? 同社の後藤卓也社長が先代の父とともに設立した資料館で、ガリ版印刷用の機材や印刷物を全国から収集し、保管・展示を行っている。

 

山形謄写印刷資料館)山形県山形市銅町1-1-5 中央印刷内 電話/023-631-5533 開館日時/土・日・祝日を除く9:00~15:00(見学希望者は事前に要連絡)

 

印刷用の機材も展示されている。

 

職人らの温もりが漂う、手書きの味わい

 ガリ版印刷とは、ロウ原紙に鉄筆で文字や絵を書き、インクを染み込ませて下に敷いた紙に転写する方法。学校などでも広く使われていたため、一定の年代以上は懐かしく感じる方も多いだろう。

 

 

コンパクトで電気を使わないガリ版箱。

 

 電気を使用せずに、コンパクトに持ち運ぶこともできるため、巡洋艦や戦艦の艦内報や、電気が通っていないような戦場でも使われていたという。しかし、その製法から、大ロットや大判には向かず、コピー機やワープロの普及に伴い、昭和40年頃から次第に廃れていった。

 

戦艦「陸奥」の中で刷られた艦内報。

 

チラシをはじめ文集や脚本など多岐にわたる

 当資料館にはガリ版で刷られた作品も数多く収蔵され、会津若松市出身の俳優で下積み時代にガリ版で生計を立てていたという佐藤慶氏や、置賜で活躍した謄写名人の鈴木藤吉氏らによる作品が多い。また彼らのチラシや封筒のほかにも、小学校や中学校で作られた文集、ガリ版では珍しい多色刷りの大判ポスターなど、内容はさまざま。なかには、近年までガリ版で印刷されていたというテレビアニメ「サザエさん」の脚本や、大学の講義の内容を非公式にまとめた本などもあり、広く親しまれてきた印刷方法だったということがわかる。

 

鈴木藤吉氏(中央)と、佐藤慶氏(右下)の写真

 

 

 

ガリ版で印刷された豆本も。

 

こちらは、表紙からページの一枚一枚に至るまで、すべてが発泡スチロールの表面にガリ版で印刷された珍しい本。

 

飲食店の顔にも使われていたガリ版印刷

 展示の多くはチラシだが、中には和食料理店で使われたと思われる店名入りのおもて紙や、和菓子の包み紙なども収蔵されている。

 

ぶどう酒の説明書と思しきもの(左下のピンク色の紙)も。

 

今回の特集でお邪魔した「樽平酒造」のチラシか包装紙と思われるものも発見。

 

ガリ版印刷の資料館だが、印刷に使われた石版原版も展示されている。写真は、寒河江市の「川島精華堂」のもの。

 

 

こちらは山形市の「セトヤ市村」のもの。

 

 

 ガリ版は色数により工程が増えるため、作品はどれも1〜3色程度と少なめだが、手書きの温もりも転写されているようで、現代でも色あせていない。手書きのため、作者の力量次第で、デザインの自由度も高い。
 ガリ版印刷の技術だけではなく、印刷に込めた先人たちの想いも次世代に伝える資料館なのだ。

 

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