特集の傍流

2020.5.7

発酵食品がナゼ免疫力アップにつながるのか。プロフェッショナルに訊く、発酵食品のチカラ。

2020年6月号(188号)食べ合わせでもっと効く 山形育ちの発酵食
日本発酵文化協会認定 発酵プロフェッショナル 安部明子さん
山形県山形市

 醤油、味噌、酒、鰹節など、日本特有の食文化に欠かせない発酵食品は、周知の通り麹菌によって生み出されている。日本醸造学会が2006年(平成19)に〝国菌〟と認定した麹菌。単刀直入にいえば微生物、カビの一種である麹を使った発酵食品は食べておいしいだけでなく、栄養学や医学的な観点からもその有用性について高く評価されているが、今回は効果的な摂取法などについて、専門的な見解を調べてみた。
 ご協力いただいたのは、山形県在住の発酵プロフェッショナルである安部明子さん。昨今の情勢を鑑み、抗ウイルス対策のひとつである自己免疫力と発酵食品の関係性について伺った。

 

日本食にとっては絶対的な調味料である醤油。大豆を原料に長期熟成して仕込まれる。総務省の家計調査(2018年)によれば、1世帯あたりの醤油消費量は山形県が全国1位(撮影協力/山形市・庄司久仁蔵商店)

 

安部明子さん(左)/日本発酵文化協会認定の発酵マイスター、プロフェッショナルの有資格者。写真提供/安部明子氏

 

腸内環境を良くして
免疫力をアップさせる

「発酵食品は微生物が生成するビタミン等の栄養分が加わったり、腸内細菌のえさになるオリゴ糖や食物繊維を多く含んでいるので、腸内環境の改善につながります」と安部さん。さらに「バランスの良い食事に発酵食品をプラスすることを心がけてみましょう。〝味噌や醤油は和食に〟という枠を取り払ってさまざまな料理に活用したり、簡単に作れる発酵野菜や漬物を常備しておくのがおすすめ」と話す。

 

安部さんお手製の発酵野菜。野菜、塩、水を混ぜ合わせ密封容器で常温保存するだけ。材料の重量に対し2%の塩分が適量。写真提供/安部明子氏 ※発酵食品を作る際は、レシピなどを調べて分量を守る、保存ビンはきちんと煮沸する、保存に適した環境を整えるなど、腐敗に注意。

 

話題の〝腸活〟ライフを
発酵食品ではじめる

 腸内環境を整えることが免疫力を向上させる、それはナゼか。近年〝腸活〟という言葉も世間に流布しているが、じつは私たちの体内に存在する免疫細胞の5〜7割は大腸と小腸に集中しており、発酵食品を摂取し腸内細菌の働きを活発に保つことができれば、ウイルスなどの病原体に抵抗する力が増し、免疫力の向上になるとされているのだ。
 安部さんは「発酵で微生物が生成する酵素の働きで、タンパク質やデンプンが分解されて小さくなります。すると食べ物の栄養素が消化吸収されやすくなり、その分カラダの負担も軽くなります」と話し、さらに「発酵食品は、あくまでも健康になるための補助的な食品です。免疫力を上げるには適度な運動、ストレスを溜めない生活、規則正しい食生活が大切。おいしく食べて心を満足させてください」とアドバイスをくれた。

 

山形県民が愛する
いつもの味こそ資産

「そして山形は発酵や乾物と、保存食のミラクルワールド。例えば納豆。現在国内でおもに使用されている3種類の納豆菌のうち、ひとつは山形市生まれの〝高橋菌〟です。栄養価が高く、良質のタンパク質が採れて整腸効果や肥満防止と良いとこだらけの食品です」と安部さん。
 思えば、酒田市の特産品であり、納豆に米麹や刻み昆布・塩などを混ぜて発酵させた伝統食・塩納豆や、赤湯系ラーメンにトッピングされていることでもおなじみの辛味噌、鳥海高原で育った牛の生乳を使った鳥海高原ヨーグルトなど、山形には個性豊かな発酵食品があることに気づかされる。

 

独特の辛味と酸味がある北村山地域の特産品で、大石田町発祥と伝わるぺそら漬け。色を抜いたナスを塩と唐辛子で漬け、乳酸発酵させたものだ。 ※尾花沢の「ぺそら漬け(ちょうべえのバアちゃんの漬け物)」2011年11月gatta!取材

 

 作物を長期保存するため、人々が工夫し伝え残してきた発酵の知恵。「あって当たり前過ぎて派手な存在ではないけれど、私たちの暮らしに欠かせない発酵食品たちは自慢できる山形の資産。これからもつないでいきたいです」と安部さんは語る。

 

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