特集の傍流

2020.7.5

みつばちによるポリネーションのおかげで、山形のおいしい農作物が育つ。

2020年8月号(190号)Funky Honey!!
齋藤みつばち 代表 齋藤雄介さん
山形県山形市

農作物の受粉も助けているみつばち。2011年の国連環境計画で、「世界の食料の9割を占める100種類の作物種のうち7割は蜂が受粉を媒介している」との報告もある。蜂がいなくなったなら、多くの野菜や果物が消えてしまうおそれがあるのだ。

 

上質なはちみつを求め、早朝から行う採蜜作業

  みつばちが野山や畑を飛び回って行う花粉交配を「ポリネーション」というが、サクランボをはじめとした果物や名産品のポリネーションを行っているのも山形ならでは。今回は、山形県庁の周辺を中心に数カ所の養蜂場を構える『齋藤みつばち』を訪ねた。
 『齋藤みつばち』では、馬見ヶ崎川周辺に咲くアカシアをはじめ、トチやクリの花から採蜜を行い、県内の産地直売所などで販売している。5年前に父から受け継いだ2代目の齋藤雄介さんは、採蜜で忙しい時期は、陽が昇る前に起き、朝5時には養蜂場に入り作業を行う。
「透明度が高く食べやすいアカシアのはちみつは人気です。開花時期を見極め巣箱の中を調整し、アカシアの蜜だけが集まるようにするなど工夫しています」と齋藤さんは話す。

 

齋藤みつばち代表の齋藤雄介さん。気さくな人柄で、真面目に養蜂と向き合う姿勢が印象的だった。

 

齋藤みつばちのはちみつの一部。各種200g1,000〜1,080円税込(販売店により変動)。ラベルのデザインは奥さんが手掛けている。

 

女王蜂も働き蜂もメスオンリー。春になり作られた「王台」という部屋で生まれた幼虫だけが女王蜂に育つ。

 

巣箱は一箱につき3万匹以上はいるという。女王蜂の産卵数は最も多い時期で1日約2,000個。合計すると自身の体重を超える重さに。寿命は2〜4年程度でその間、毎日卵を産み続ける。オスは働かず、存在意義は女王蜂と交尾することのみだ。

 

春からの働きに備え、西日本で冬を過ごす

 夏が過ぎ採蜜がひと段落した後は、みつばちを繁殖させ数を増やすことに力を入れる。その後、11月になると巣箱ごと静岡に運び、みつばちらは比較的暖かい場所で冬を過ごす。「山形で越冬もできますが、春の立ち上がりが悪くなり、採蜜がうまくいかなくなる懸念があります。秋から冬にかけては私も蜂の世話のために静岡に何度も通っています」と齋藤さん。そして冬を越え、4月に山形へ戻ってきたみつばちは2週間程度、サクランボ農家に花粉交配のため貸し出されるという。

 

採蜜する際は、布や縄を燃やした煙を浴びせて「火事が起きた」と勘違いさせ、みつばちを巣から逃がす。

 

巣箱内部の隙間に作られた巣。採蜜には邪魔になるため丁寧に取り除く。これはアカシアの蜜で、特別に試食させてもらうと、クセのないさっぱりとした甘みが口いっぱいに広がった。

 

山形の名産が育つために、みつばちの力を借りる

 サクランボは単品種だけでは受粉しないため、異なる品種同士が受粉する必要がある。受粉棒などを使い人の手で行われる場合もあるが、みつばちを多くの木々の周辺で飛び回らせ受粉を手助けする方法をとることが多い。山形の名産にみつばちの力は欠かせないのだ。
「養蜂家にとって蜂は生活の一部。さまざまな恩恵を受けていますので、生き物を扱っている意識は常に持ち、大切にしています」と齋藤さん。みつばちを通し自然の恵みを享受する。花粉を交配するだけでなく、人と自然を媒介する役目も担っているのかもしれない。

 

 

齋藤みつばち)天童市東芳賀3-16-10 TEL/023-616-6654

 

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